2014年8月29日金曜日

団塊クレーマーに見る今日のバイク事情

新型バイクを購入した熟年ライダーの考察ブログが今、大きな議論を呼んでいるようです。

>> MT-07白号への苦情申し立て

関西在住で、ご夫婦でバイクライフを楽しまれている熟年ライダーで、このほどヤマハの最新モデル MT-07を奥様が購入。いよいよ新たなバイクライフの幕開けか……という矢先、エンジンの異常な加熱性に疑問を持ち、「これはもはやリコールのレベル」と、ご自身のブログで私見を述べられたのです。

これに反応したのがバイクに乗るネットユーザー。このブログ主さんのブログにはコメント記入欄がないのですが、これまでの記事ではほとんど押されていないFacebookの「いいね!」数がこの記事に限って2,363も押されていること(2014年8月28日現在)、また本記事のタイトルでGoogle検索をかけるとTwitter等であらゆる方面へ拡散されていることから見ても、ご本人が思っていた以上のレスポンスであることは想像に難くありません。

・ 奥様が購入されたMT-07(初期ロットモデル)をご自身が試乗
・ しばらく乗っていると、両脚が異常に熱くなってきた
・ 服装は運動靴&夏用スラックス
・ 長期運転などすれば低温やけどを起こしてしまう欠陥商品だ
・ 返品も辞さない心構えだったが、奥様からメーカーへクレームをつけて終了
・ 腹の虫がおさまらないので、自身のブログで「MT-07」検索でかかるネガティブキャンペーンを展開

概要はこんなところでしょうか。

“エンジンの熱が異常”というのは個人差と言えなくもありません。ヘビーユーザーからすれば「大型バイクに乗ってりゃ、そんなの当たり前やんけ!」というところでしょうし、モアパワーを求めた大排気量モデルともなれば、そうした弊害は十分起こりえる事態です。冬場であっても、クルマのエンジンもボンネット越しに分かるほどカンカンに熱くなりますよね。それよりは小さいとはいえ、バイクの場合はライダーの股下にあるわけです。「エンジンが熱い!」と言われれば、「そりゃそうでしょうよ(笑)」としか返せません。

一方で、もしかしたらご本人がおっしゃられているとおりMT-07のエンジン熱が異常という可能性を捨てるわけにもいきません。水冷機能搭載のフューエルインジェクションモデルと、放熱性・冷却性を考慮した仕様ながら、熱くなりがちなツイン(直列2気筒)エンジンですから、オーナーにしか分からない異常と真摯に受け止めるべきであるのかも。

議論のひとつが、「服装」でした。

運動靴&夏用スラックスという記述に対し、多くの方が「そりゃ、そんな格好でバイクに乗ってりゃ熱いに決まっている」という反応です。安全性という点も含め、そこまで体を外部にさらけ出していれば熱の伝わり方だってかなり直接的なものになります。むき出しであることは、メリット&デメリットの両方をすべてダイレクトに感じ取ることなのです。

バイクに乗る際のファッションに定義も規制もありません。端的に言えば自己責任。当然ながらクルマ以上に危険性の高い乗り物でもあるので、ライダー自身がそうした現実に対してどう向き合っているか、がファッションにも表れてくるのだと思います。

かくいう僕は、ハーレーダビッドソン XL1200R(2008)というモデルに乗っており、用途によって使い分けてはいるものの、普段はジェットヘルメットにデニム&スニーカー、なるべくアウターは一枚羽織るようにしているものの、あまりに暑ければTシャツ一枚ということも。

ハーレーダビッドソンのエンジン(Vツイン)は、このMT-07なんて比べものにならないほど熱くなります。水冷機能を備えれば同モデルぐらいには抑えられるのかもしれませんが、それではハーレーダビッドソンのVツインエンジンが奏でる独特の鼓動感は損なわれてしまいます。近年水冷モデルを輩出するハーレーですが、大多数が放熱性に劣る空冷エンジンモデルである理由は、この空冷Vツインエンジンの鼓動感に対する支持が圧倒的に多いからなのです。

ハーレーに乗るならば、カッコよく乗らなければ意味がない。たとえそのスタイルに安全性の欠片も感じられず、乗っている本人が辛い想いをすることになろうとも。“カッコよさ”の定義は人それぞれですが、デメリットを受け入れる度量がないと、バイク趣味の世界を本当に楽しむことはできない、と思っています。

件のブログ主さんは、なぜ「運動靴&夏用スラックス」という出で立ちでバイクに乗ったのでしょう。理由はご本人に伺うほかありませんが、いかなる理由であれ、デメリットが高まるスタイルである以上、

「自分はこのファッションが気に入っている。だから誰になんと言われようと、どれほどデメリットにさらされようと、私はこのスタイルを貫きたい」

ぐらいの覚悟をもってバイクに乗られる方がいいんじゃないでしょうか。

当該バイクがご自身の求めるバイクライフに合わなければ、買い替えればいいだけのこと。世の中には、MT-07以上に快適に乗り回せるバイクが多数存在します。要するに“自分に合ったバイクを探す”のか、“そのバイクが気に入ったから、自分を合わせていく”のか。ブログ主さんは「自分(たち)のバイクライフに合わなかったからクレーム」という、寛容な心をもっていなければ付き合えないモーターサイクルの世界に不向きな方なのでしょう。そのうえ「メーカーにクレームをつける」、「ネガティブキャンペーンを展開してやる」というのは、少々お門違いなように思えます。

近年、大衆に受け入れられるビジネス展開が強まっているせいか、モーターサイクルという特異な趣味の世界のメーカーでもエンドユーザーのクレームを聞きすぎるきらいが見受けられ、「今のバイクは面白くない」というヘビーユーザーの声も少なくありません。そして、そうした傾向に増長して必要以上の要求をするクレーマーの存在も年々増えているように思えます。これはモーターサイクルの世界に限った話ではなく、モンスターペアレンツなどと呼ばれる社会現象も含まれることでしょう。

いまやインターネット上では、個人がメディアを持てる環境がどんどん進化しており、何気ない発言が自分の手の届かないところまで拡散されてしまうのも珍しくありません。おそらく件のブログ主さんは想像を絶する反響(特にネガティブなもの)にかなり動揺されているのではないかと思います。

相当の憤りからつづられたブログ記事だと思いますが、改めてバイクとの向き合い方、そして今回の怒りの源に対してご自身でじっくりと検証されることをおすすめしたいです。
 

2014年8月12日火曜日

愚者の時計

■ようこそ、日本へ
8月11日、サッカー日本代表チームの新監督を務めることになったメキシコ人のハビエル・アギーレ氏が来日を果たしました。その足で日本サッカー協会に赴き、同日に契約締結、そして記者会見の運びとなりました。

ちょうどYahoo!ニュースで会見速報記事がアップされていましたが、どれも会見の一部を切り取ったものばかりだったので、日本サッカー協会ウェブサイトに行き、一時間七分という長丁場な会見動画を拝見しました。

会見を通じて見えたのは、アギーレ氏を選んだ日本サッカー協会の選考基準が相変わらず曖昧なことでしょうか。

歴戦の雄アギーレ氏のキャリアは文句の付けようがないもの。身の丈にあっていない“名将”という肩書きをつけられる方も多々いますが、アギーレ氏はまぎれもなく名将のひとりだと思います。ただ、これが日本サッカーの未来を安泰なものにするかと言われれば、そうではありません。世界に名を馳せる人物であっても、相性が悪くて実力の半分も出せないことも。

同会見でメキシコ人記者の方が「世界的に見ても、日本はまだW杯に5回出場しただけの“若い国”だ。あなたにとって大きなチャレンジなのでは?」と質問していましたが、おっしゃるとおりで、経験豊富な国々と日本を同列で語ることはできません。アギーレ氏と日本代表チームがどんな化学反応を起こすか、それはこれから見ていかなければならないことです。

そういう意味では、この記者会見はあくまでお披露目。「ベースとなるシステムは4-3-3だ」とか「若くて才能がある選手を起用したい」といった言葉はこの場限りのもので、「実際にやってみたらずいぶん違う姿になった」ということなんてよくある話。その回答ひとつひとつに一喜一憂せず、多角的に彼の仕事ぶりを見ていけばいいだけのことです。

一方で、違う収穫がありました。日本サッカー協会がアギーレ氏を選んだ大きな理由です、


■恋い焦がれていたのは分かるけど……
「実は4年前の南アフリカW杯後にも、原さん(日本サッカー協会 専務理事兼強化委員長)からオファーをいただいていました。しかし、そのときは家庭の事情(長男がスペインの大学に入学したばかりだった)でお受けすることができなかった。それから4年、日本サッカー協会は私の仕事ぶりを常に評価してくれ、再びオファーをくださった。スペインのクラブや他の代表チームからのオファーもありましたが、2018年W杯ロシア大会に向けた日本サッカー協会の強化プロジェクトに魅力を感じ、お受けすることにしたのです」

要約すると、こんなところです。つまり、日本サッカー協会(というか原さん)にとって、アギーレ氏は4年越しの恋人というわけですね。

がっかりしました。

4年前、日本は2010年W杯南アフリカ大会でベスト16に進出するという快挙を成し遂げました。ところが大会後、監督の岡田武史さんは契約満了とともに退任。当然後任人事をなんとかしなければならないわけですが、リストアップする人物にことごとく断られ(確かビエルサ氏などの名前もあったと思います。アギーレ氏もそのうちのひとりだったのでしょう)、大会後の代表戦2試合に関しては、原強化委員長が代理監督を務めるというお粗末な流れに。

「なんで代表監督がまだ決まっていないんだ」、そんな世間の批判が高まるなか、突如現れたのがアルベルト・ザッケローニ氏でした。とある筋から聞いた話ですが、アプローチしてきたのはザッケローニ側だったそうです。すでにヨーロッパでもシーズンがスタートし、名だたる指揮官はさまざまなクラブが連れていっていたこの時期、もはや余り物から選ばざるを得ない状況にあった日本サッカー協会に、ザッケローニの代理人が声をかけてきたとか。一も二もなく飛びついた日本サッカー協会、かくして「サッカー日本代表監督 アルベルト・ザッケローニ」が誕生した裏側です。

つまり、本命にことごとく振られて打ち拉がれていたところに「あたしでよければ」と言い寄られ、そのまま付き合っちゃった的な感じ。で、4年経って再び「やはりあなたが忘れられない」とアギーレ氏に言い寄ったというところでしょうか。

そりゃがっかりもしますよ。


■選考基準が4年前から止まっている

アギーレという人物そのものに対する疑念はまったくありません。目標は常に4年毎のW杯で好成績を残すことで、過去最高のベスト16の壁を破ることはもちろん、ひとつでも上の領域を目指すための強化を図ること。日本サッカー協会も同じように考えているでしょう。

その道程で、必ず世界屈指の強豪国との対戦は避けられません。アギーレ氏は「世界のトップは、だいたい5ヶ国ぐらい。世界的なタイトルを獲った経験がある国がそれだ」とおっしゃっていましたが、日本の立場から見ればそんな数では済まないほどあります。

攻撃サッカー、大いに結構。ただ、相手をリスペクトすることを忘れてはいけません。ドイツ相手に「俺たちはお前たちを打ち負かす!」とのたまったところで、井の中の蛙と言われ、ボコボコにされるのがオチ。W杯では、そうした一部の強豪国を除いて“まず守備ありき”で戦うのが常道。そういう意味で、「まずは全員で守る」ことを第一義に挙げ、なおかつこれまでのキャリアで(批判を受けつつも)その戦い方を実践してきたアギーレ氏は確かに適任だと思います。

4年前であれば。

南アフリカ後なら、アギーレ氏は日本代表チームにピタっとハマったことでしょう。玉砕覚悟で攻撃サッカーを標榜する選手を諭し、地に足をつけたプレーを見せてくれたんじゃないだろうか、と。もちろん憶測にしか過ぎませんし、“たら・れば”で言えば、ザッケローニ氏だって似たようなことを言っていたとも。

4年前と今とでは、状況が違います。ザッケローニ体制で挑んだブラジル大会では惨敗を喫し、代表チームのみならず、日本サッカーそのものの立て直しを図ろうとしている今、「4年前から見初めていたんで大丈夫」というのは、<ブラジルでの敗因>と<4年後を見据えた強化策>という議題に対する回答にはなっていません。

結局、4年前から代表監督の選考基準が進歩していないということです。アギーレ氏にケチをつける気はさらさらないのですが、選んだ側がこんなウブな大人たちでは、4年後のロシアでも大きな成果は期待できないんじゃないでしょうか。

そのロシアに、こんな諺があります。

「愚者の時計は、いつまでも止まったままだ」


■アギーレとサッカー協会はいつか衝突する
先頃、日本サッカー協会よりブラジル大会レポートが発表されましたが、最大の要因は、指揮能力の低さをひけらかしたザッケローニ氏であり、その彼を選んだ日本サッカー協会だと思っています。一方で、サッカー協会の人材難も聞き及ぶところなので、大仁会長や原専務理事が辞任すれば何か解決するのか、と言われれば答えはノーです。

論点は、「アギーレで大丈夫なのか」、「ザッケローニからの継承じゃないじゃないか」ではありません。4年前から今回の新監督人事に至るまでの流れがどれだけ歪であるか、それを日本サッカー協会の面々が真摯に受け止めているかどうか、だと思います。

記者会見中、大仁会長と原専務理事は終止うつむき加減で、メディアからの質問にもナイーブな反応を示すなど、世間の批判がいやというほど耳に届いていることを伺わせてくれました。こういう立場の人たちですし、今回の惨敗を見れば批判は致し方ありません。

ただ、その批判の真意を汲み取り、誠意ある対応をしているかどうかが大事なのだと思います。そういう点で見ても、結局“アギーレ氏を押し通した”という今回の人事からも、日本サッカー協会という組織は「お役所」と揶揄されても仕方のない体質なのだな、と感じ入りました。

個人的には、アギーレ氏には期待したいところですし、ザッケローニ氏よりは盤石なチームづくりをしてくれるんじゃないかとも思っています。もし彼が、「日本代表チームをより強くしたい」というあくなき情熱を持って取り組んでくれるならこれほど嬉しいことはありませんが、そうした情熱がある方だとすると、ぬるま湯体質の日本サッカー協会とはいつかどこかで衝突しそうな気がしないでもありません。かつてのネルシーニョ氏やオシム氏のように。
 

2014年8月1日金曜日

外れくじを引いたアギーレ新監督、そして変わらない日本サッカー協会

■ドイツが示した日本のあるべき姿
ブラジルW杯が終わって、まもなく一ヶ月が経とうとしています。寝不足に苛まれつつもほとばしる情熱に包まれた一ヶ月間、フットボールフリークの方々は悦楽のときを過ごされたかと思います。もちろん、日頃フットボールに親しみのない方でも楽しめる、文字通りエンターテインメントにあふれた素晴らしい大会でした。

「W杯の優勝国のスタイルが、それからの4年のトレンドになる」

こんな言葉があります。2010年南アフリカW杯を制したスペイン代表の軸は、ベースとなったF.C.バルセロナの圧倒的なボールポゼッション能力。以降、世界のフットボールシーンにおける話題には常に「ボールポゼッション」という言葉が含まれるほどに。

そして今大会、優勝トロフィーを手にしたのはドイツでした。決勝戦で対峙した2チームのコントラストは実に分かりやすく、“スペシャルな選手はいないけど組織力および機能美に秀でたドイツ”と“メッシという希有なスーパースターの力を最大限に引き出すアルゼンチン”による試合は、ファンタスティックでW杯決勝にふさわしいレベルだったと思います。

結果的にドイツが世界を制しましたが、アルゼンチンのような一撃で何かをひっくり返してしまいそうなワクワク感を持つサッカーも魅力的でした。

ただ、日本代表という観点で向き不向きを考えるとしたら、間違いなくドイツ・スタイルでしょう。メッシやクリスティアーノ・ロナウド、ハメス・ロドリゲス、アリエン・ロッベンを作るのは困難ですが、ドイツ代表のようなチームを作ることは不可能ではありません。

もちろんドイツ人と比べるとフィジカル面で大きな差が出てしまいますが、一方で日本人は俊敏性といった他にないスピードを持ち合わせています。インテリジェンスに富み、献身的に戦える選手で組み立てられたチームなら、11人がまるでひとりの人間であるかのような連動性を持つことは可能ですし、それが日本代表チームの目指すべきスタイルだと思います。民族の違いはあれど、ドイツ代表が指し示したチームのあり方は日本にとって他人事ではないはず。


■代表チームは協会の私物ではありません
その日本代表ですが、先頃新しい代表監督にメキシコ人のハビエル・アギーレ氏が就任したとの発表がありました。噂レベルのニュースは以前から出回っていましたが、ようやく日本サッカー協会との契約が締結されたことで、お披露目となったよう。そして同時に、ブラジルW杯における日本代表の敗因の分析結果も。

相変わらずの体質ですね、日本サッカー協会。

華やかな話題に混ぜることで、目を背けてはならないはずの部分をぼかそうとする。そのレポート内容も実に馬鹿馬鹿しいレベルで、2006年ドイツ大会時の川淵キャプテン(当時)による「オシム発言」よろしく、嫌なことをうやむやにしたいという体質が今なお健在であることを知りました。

仕方ないのでしょう。ここでまっとうな感覚をもって敗因分析をすれば、当然「じゃあそれを解消するためには?」という話になります。そうなると、派手さとは縁遠い地道な強化方針を採らざるを得なくなり、彼らにとって最大のキャッシュポイントである日本代表チームからは華やかさが失われ、これまでのような巨額の収益が見込めなくなります。

そうなると、スポンサーだって手を引いていくことでしょう。ミュージアムなんてものを備えた自社ビルを持つ日本サッカー協会も、その図体を維持できなくなり、縮小させざるを得なくなるはず。こうなってくるとバッドスパイラルに陥っていくのみで、統制がとれなくなればますます組織はその規模を小さくしていく……。川淵さんほどあくどいやり方ができない原さんにわずかな良心の呵責が見受けられますが、だからといって彼の身勝手なやり方に日本代表の未来を預けるのは間違っていると思います。


■外れくじを引いたアギーレは……
大事なのは、今の日本代表が軸としているところは何なのか、です。ブラジルでの惨敗は、フィジカルコンディション云々よりも、チーム全体のメンタル面が幼すぎたこと。選手個々の能力が高くても、それらを支えるメンタルが脆ければカンタンに瓦解するという好例のような状態でした(なぜ2006年ドイツ大会の二の舞を踏んだのかは理解不能ですが)。

“玉砕しても攻撃的スタイルは貫く”のか、“負けないサッカーを軸にしてより多くの経験を積む”のか。そのときどきの監督や選ばれた選手の意見でコロコロ変わっては、一貫性のあるチームづくりなど夢のまた夢。理想とすべきは、年代別チームであっても同じスタイルを指導するF.C.バルセロナのような育成および強化方針だと思いますが、プレースタイルはまた別。日本人には、日本人にあったサッカーというものが存在します。

アギーレがそういうサッカーを引き出せるのかと言われれば、現時点では“大いに不安”と言わざるを得ません。なぜならば、彼は今まで日本とは縁もゆかりもないですし、きっとJリーガーの顔ぶれだって知らないはず。さらに、代表メンバーに日本人スタッフが入っていないことも疑問。このまま2018年ロシア大会に飛び込めば、今回のブラジルでの惨劇を繰り返すだけでしょう。

まず協会が着手すべきは、上層部の総辞職だと思います。原さんにしても、そして新たに協会をサポートするという名目で招き入れられた宮本恒靖さんにしても、新陳代謝を促せない年寄りが巣食う状態ではこれまでどおり板挟みになるだけで、大きな決断を下すことも手を入れることもできず、不満を募らせて協会を去るのがオチです。

少なくとも、今のサッカー協会に「変わらねば」という強い危機感は見えませんし、ゆえに代表チームが飛躍する姿もまったく想像できません。コンディションの整っていない海外組を呼び寄せた興行試合を見せられても、チケット代の無駄です。アイドルのコンサートを見に行っているわけじゃないのですから。

代表戦のみならず、Jリーグもますますつまらなくなるでしょう。地道に文化としての礎を築こうとしている人たちに報いようという気概すらない組織の運営するチームおよびリーグに、お金を支払う価値などありません。おそらくアギーレはビジネスと割り切って契約したのでしょう。プロとして当然のことではありますが、就任してまもなく、外れくじを引いたことを後悔することになると思います。