2015年2月3日火曜日

【アギーレ解任】クライアントに翻弄される日本サッカー協会

■日本代表チームは所詮金儲けの道具?
2月3日(火)、日本サッカー協会は日本代表チームの監督を務めるメキシコ人指揮官 ハビエル・アギーレ氏の解任を発表しました。理由は推して知るべし、彼がかつて所属していたスペイン・リーガエスパニョーラのチーム、サラゴサが、降格争いにかかわる試合に際して起こったとされる八百長疑惑問題です。スペインの裁判所への告発状が受理されたのを受け、解任を決定したと大仁邦弥会長からの発表でした。

先に結論を言っちゃいますが、金儲けのためだけに出資していたクライアントに日本サッカー協会が解任を強いられた。これが真実でしょう。

真っ当な争点として挙げるなら、“アギーレを信じるか信じないか”だったと思います。八百長疑惑が発覚した際、サッカー協会はアギーレへのヒアリングを行ないました。その席で、彼は「やっていない。潔白だ」と言いました。八百長した人間が「ハイ、やりました」なんて言うはずもありませんが、本人は真っ向から否定したのです。あとは、協会がその言葉を信じるか信じないか。

「4年越しのオファーが実った」という、アギーレ氏の監督就任会見における原専務理事の想いからすれば、彼の解任はカンタンではなかったはず。アジアカップこそベスト8で敗退しましたが、アギーレ氏は高い指揮能力を発揮し、ベストを尽くしました。指揮官として見れば、間違いなく歴代屈指。今回の解任は、苦渋の決断だったと思います。

恐らくクライアントおよび代理店からの圧力でしょう。


■自分で動けなくなった大食漢のよう

サッカー日本代表チームは、大きな集客が見込める日本屈指のコンテンツ。海外のクラブで活躍するスター選手が集まり、オールスターチームさながらに他国をなぎ倒していくさまは、日本人のアイデンティティを強く刺激し、サポーターという呼び名以上の情熱を国民に注ぎ込みます。それも、スポーツという同じ条件の競技のもとで。

そのアイデンティティを刺激することが日本サッカーのビジネスの核で、その中軸である日本サッカー協会には、大手広告代理店や大手クライアントが我先にと集まり、気がつけばコントロール不能なほど肥大化していきました。

思い出してみてください。今から約20年前、1997年まで、日本サッカーはワールドカップに出場できないでいました。ドーハの悲劇と呼ばれる壁に跳ね返されたこともありました。しかし、今では5大会連続出場をはたし、アジア屈指の強豪国として知られるほどに。土台となったのはJリーグに他なりませんが、20年前と比べて、確かに日本サッカーは格段に強くなりました。

そして、ビジネスも巨大になった。

今回のアギーレ解任は、おそらく某大手代理店からの圧力でしょう。疑惑の人物が代表チームの指揮を執っているとなると、桶に張った水に墨汁を落としたときのように、代理店、そしてクライアントへと疑惑の色は広まっていきます。ちょっとしたことで蜂の巣を突いたように騒ぎが広まる現代社会において、どこの企業も不必要な負の情報は背負いたくありません。そうしたクライアントの声が代理店へと伝わり、サッカー協会に解任を強いたものと思います。


■アギーレ擁護の姿勢を示したサッカー協会だが……

そもそも大仁会長はアジアカップ敗退後、「それでもアギーレには監督を続けてもらう」と言っていたのです。ある程度サッカーを知る人間が見れば、アギーレ氏の手腕は疑いの余地がないもの。確かに八百長疑惑というのは有り難くないスキャンダルですが、ここで彼を解任したところで、そのあとアギーレ氏以上の実力者が日本代表監督を引き受けてくれるかは未知数。いや、ブラジル大会で一勝もあげられなかったアジアの極東にある国の代表監督をやろうという著名な人物など、まず見つかるはずがありません。大仁会長の言葉は、そうした“サッカー協会の長”らしいさまざまな要素を含んだものでした。

それが、この手のひら返し。決してサッカー協会を責めているわけではありません。要するに、「日本サッカーをより良くしたい」という想いとはまったく異なるベクトルの力が働いたことによるアギーレ氏解任劇だというわけです。

自社ビルをかまえるほど巨大になった日本サッカー協会。現在出資してくれているクライアントがどれほどの数あるのか存じませんが、大手企業が一社手を引くだけで、そのダメージたるや相当のものでしょう。ともすれば、協会の現状維持をも困難にする可能性もあったはず。

当然、そんな事情を記者会見で言えるはずもありません。確かに“八百長疑惑に端を発する告発状の受理”というのは、体裁のいい理由付けとなりました。突っつけば、告発状を受理されようがされまいが、グレーなままであることに変わりありません。しかし、それを理由付けとせねば成り立たない“大人の事情”が裏側にあったことぐらい、想像に難くありません。

つまり、現在日本サッカーに出資しているクライアントの大部分は、「日本サッカーをより良くするために」なんてことはこれっぽっちも考えておらず、風向きが悪くなるやいなや「おいおい、とばっちりはゴメンだよ」とばかりにいちゃもんをつけてくる方々だと理解できるわけです。

どことは言いません。どことは言いませんが、ユニフォーム、そろそろミズノかアシックスにしたらいいんじゃないですかね。日本代表が世界で戦う際の戦闘着なわけですから、国産メーカーであるのは当然のことだと思いますよ。

そして、今後はなるべくサントリーやアサヒのビールを飲むことにします。コンビニエンスストアも、ローソンやセブンイレブンに行くようにしようっと。


■アギーレ解任という罪を背負って
さて、問題は“アギーレ後”です。

解任は決定事項なので、2018年ロシア大会までの3年間、指揮をまかせられる人物を捜さねば。前述したとおり、おそらくアギーレ氏以上の手腕を持つ指揮官を連れてくるのは困難だと思います。一部報道で「ザッケローニ復帰論」みたいなものがありましたが、ブラジルで惨敗した人間をまた使うなんて、神経がどうかしているとしか思えない。

決して長くない残りの期間、そしてザッケローニ時代の遺産ではもう勝てないことが立証された現状を鑑みると、

・Jリーグでの指揮経験があり、日本人選手の情報に精通している

ことが選考基準になるかと思います。加えて、他国の代表チーム指揮経験があればベストですが、「じゃあ日本人選手を知るために、これから視察しましょう」という方では困るわけです。もうそんな時間は残されていないのですから。

一方で、現職の指揮官を引き抜くことはできません。かつて川淵キャプテン(当時)が「オシムって言っちゃったね」というルール違反同然の引き抜きを行い、ジェフユナイテッド市原千葉に多大な迷惑をかけたことがありましたが、あんなことは言語道断。そう、長谷川健太氏(現ガンバ大阪 監督)やトニーニョ・セレーゾ氏(現鹿島アントラーズ 監督)、ネルシーニョ(現ヴィッセル神戸 監督)などの名が浮かびますが、Jのクラブはまもなく始まる新シーズンに向けて強化の真っ最中。そのなかで指揮官を引き抜くなんて、どのクラブも許しません。つまり、現在フリーであることも条件になるのです。

ストイコビッチ、オズワルド・オリヴェイラ……あと、ついこないだまでJ2ジュビロ磐田の指揮を執っていたシャムスカも候補として面白いかと思います。特にシャムスカは、実力で言えば強豪クラブに劣る大分トリニータというチームを率いていた際、選手の特性を把握した適材適所なチームワークを生み、ナビスコカップ優勝を成し遂げるなど、シャムスカ・マジック旋風を巻き起こした実績の持ち主。ここまで来たら「代表チームを指揮した経験がない」などと言うのではなく、面白いサッカーをやってくれそうな期待感に賭けてみる方がはるかに実りがあるように思えます。

実際にどの人物が指揮を執ることになるのかは分かりませんが、日本サッカー協会の上層部の方々は今一度、自分たちの足下を見つめ直し、アギーレ氏を解任せねばならなくなった理由と罪を背負って、より良い後任探しに奔走していただきたいです。