2015年4月22日水曜日

プロ野球選手がネックレスをして何が悪い?

先日、北海道日本ハムファイターズの中田翔選手が、太くて長い金属製のネックレスをぶら下げてプレーしていたことが批判されています。某作家さんから苦言を呈されるなど、ニュースはややネガティブなイメージをもって伝えているようでした。

はて、プロ野球選手がネックレスをしちゃいけないルールがありましたでしょうか。

その昔、1998年サッカー・ワールドカップ フランス大会の出場権を獲得した日本代表のキーマン中田英寿選手が、一時期大きなペンダントのついたネックレスを付けてプレーをしていたことがありました。「相手選手に掴まれたら危ない」、「プレーの邪魔になるじゃないか」などなど批判的な声もありましたが、空前のW杯フィーバーであったことから、そのネガティブな声が肥大化することはありませんでした。

メジャーリーグに目をやっても、ネックレスをしている選手は幾人かいます。ヨーロッパのサッカー選手にはあまり見られないと思いますが、彼らがネックレスや貴金属を身につけていたとしても、それがプレーを阻害しているかは自分で分かることです。野球でもサッカーでも、精度の高いプレーをこなすのがプロの役目ですから、そのなかでノイズになるような備品をわざわざ身につけたりするはずがない。

タトゥーなども同様、ネックレスもそもそも日本の伝統文化のなかに存在しない外来種ゆえ、どうしても必要以上に目についてしまうのだとは思いますが、プロの選手にいちいち言うほどのこととも思えないのです。

結局、日本にスポーツが根付いていないことの表れなのかな、と。

以前、日本サッカー協会で催された「サッカー本 事始め」というトークショーにご出演されていたスポーツライター賀川 浩さんが、スポーツの起源についてお話しくださいました。それによると、そもそもスポーツとはヨーロッパで生まれた文化で、カトリック信仰に端を発すると言われます。日曜日はカトリック教徒にとって安息日で、体をリフレッシュさせる大切な日。とはいえ、街のいたるお店が休んでしまうので、「そんな安息日を楽しく過ごすためには……」というところから、スポーツの原点が生まれたとか。真意のほどは定かではありませんが、そこにルールが設けられ、サッカーやラグビー、クリケット、そしてベースボールなどさまざまな競技が生まれてきたのでしょう。プロスポーツとなると職業や仕事という側面が発生しますが、そもそも論という点で見れば、人々を心身ともにリフレッシュさせるために生まれたものだと考えられます。

ところが明治時代、ヨーロッパの人々によって日本に伝来された各種スポーツは、基本概念とはかけ離れたところで取り入れられることに。当時、富国強兵という合い言葉のもと、日本は列強国と渡り合うための軍国化を押し進めていました。強い軍隊を作り上げるには、心身ともに鍛えられた若者が不可欠。

そして、富国強兵を押し進めるためのツールとして、各種スポーツが取り入れられました。それが、今日で言われる“体育”の基礎。体育は、健全な国民を作り上げるための教育の一環であり、ひいては強い軍隊のためでもあったのです。体罰や補欠制度は、スポーツ本来の概念を阻害する最たる例。一生懸命体を動かして楽しむために取り組んでいるのに、コーチの言うとおりにできないと殴られる、うまくないからと何年もベンチを温めさせられるなど、諸外国じゃ理解できない制度が当たり前のように横行しているのが、日本のスポーツ界です。

中田翔選手が長くて太いネックレスをしていて……それが、何か重要な問題なのでしょうか。もちろん、彼がプロの選手として、応援してくれている人を満足させるプレーができていなければ、「おいおい、どうしたんだ」という声も出るでしょうし、彼が怠惰なプレーを見せれば観客席から叱責の声が飛ぶでしょう。

でも、ただネックレスをしているから「おかしい」というのはナンセンス。別に捕球の際にネックレスが首にからまって邪魔をしたわけでもありませんから、そこを気にする人の方が神経質な気がします。第一、中田選手と日本ハムの契約書に「ネックレスをしちゃいけない」なんて一文はないはず。

一方で、中田選手もまだまだ青いな、という印象があるのも事実。ご自身が気に入って身につけているのでしょうが、精度の高いプレーに取り組むにあたり、ネックレスがノイズになるのは間違いありません。「いや、全然邪魔じゃないよ」と言うのであれば、彼自身がより高いプレーを志していないことの裏返しでもあると思います。どんな格好をしたっていいんですが、プロの選手である以上、現状を上回るプレーができるよう腐心していただきたいなぁ、と思う次第です。志なくして、人を感動させられるプレーはできないと思いますから。

まぁせっかくなので……中田翔選手、大きな数珠をつけてみてはいかがでしょう? 世間に注目されるプロフェッショナルとしての人生を歩んでいらっしゃるので、こうした些末なことで非難してくる人には、ユーモアで返してみてほしいですね。