2015年9月8日火曜日

日本代表が抱える致命的な弱点とは

■ブラジル大会のときから改善されぬ弱点
埼玉でのカンボジア戦、イランでのアフガニスタン戦を観て、2試合ともに共通していたのは“フィニッシュの雑さ”でした。ペナルティーエリアからゴール前までは相手DF陣がひしめく激戦ゾーンで、ここの崩し方にそのチームの特性が表れます。

この2試合における日本代表のフィニッシュは、とにかく大味。バイタルエリア手前までつないでいくものの、そこから縦に入れたりサイドを崩したりする際のつなぎ方が、ワンパターンというか、行き当たりばったりというか。だから詰めてくる敵との距離感に変化がもたらせず、大雑把なクロスやパスに終始するのです。いずれの相手も格下だったから力ずくで得点を奪えましたが、相手のレベルがあがるとそんなプレーは通用しません。これ、2014年W杯ブラジル大会やアジアカップで学んだはずなんですが……。

チームとしてどういうプレーをしたいのかが見えないのです。

これはハリルホジッチ監督の指導法云々は関係ありません。誰に教わるでもなく、日本人のDNAに訴えかける“日本人としての自然なプレースタイル”に起因します。練習時間が少ないことも無関係です、教えられなくとも、日本人が集まれば自ずと生まれる“阿吽の呼吸”とも言うべきプレーがどこにもないのです。

FCバルセロナやスペイン代表に見られる正確かつスピーディなパスワークを表した“ティキ・タカ”は、彼らにしか生み出せないスピード感とリズムを持っており、ツボにはまったときのそれはどんな強豪の守備陣をも切り裂いてしまいます。本気を出したときのオーストラリアの肉弾戦、韓国のハードプレー、ブラジルのパスワークと崩しのアイディアなどもそう。どこのチームにも“これぞ”というストロングポイントが存在し、それをより高めることが世界の強豪へと上り詰めるために必要なのです。

阿吽の呼吸が生む緩急がないので、日本の選手はボールをもらってから次のプレーを考えています。それでは遅い、遅すぎます。ボールをもらう前の動きを表すオフ・ザ・ボールのときから“崩しのイメージ”を思い描き、なおかつ共有できていないと、ここぞのシーンで敵を切り崩すことなどできません。

日本代表の致命的な弱点、それは、プレーに緩急がまったくないこと。すなわち、ストロングポイントそのものを持ち合わせていないことでもあります。


■このままじゃW杯出場権を逃す
一番の問題は、海外組への依存度の高さでしょう。

以前と比べても、海外クラブに所属する日本人選手は驚くほど増えました。いまやACミランやマンチェスター・ユナイテッドに所属する(またはしていた)選手がいるほど。確かにこの事実はこれまでの日本サッカーを見てきた者からすればとんでもないことですし、彼らへの期待ども否応なく高まってしまうというもの。

ただ、本田圭佑や香川真司、岡崎慎司という日本でトップクラスの選手も、彼らは決してクリスティアーノ・ロナウドやメッシほどのレベルにはないことを忘れてはなりません。しかしながら、今の日本代表のサッカーはまるで「スター選手にボールを預ければ、なんとかしてくれる」とでも言わんばかりのプレーぶり。ブラジルW杯やアジアカップでその事実を突きつけられたにもかかわらず、やっているサッカーやメンツは以前と変わらないまま。アジアの格下相手なら騙し騙し続けられても、韓国やオーストラリア、そして力をつけてきたカタールやクウェート、UAEなどの中東勢には通用しません。

コレクティブなプレーとはボールをつなぐことではなく、イメージを共有したうえでのチームとしての“崩しの型”で攻め崩すことが目的です。海外組の“個の能力”に依存するのは誤りだし、日本が目指すサッカーにとって害でしかありません。

では、日本サッカーのあるべき姿とは?

豊富な運動量をもって90分間献身的にプレーし、質を落とすことなく試合終盤で相手に差を見せつけること。そこに特定のストライカーは不要で、統制の取れた守備陣を基盤に、最前線にしっかりとした溜めのポイントを設け、攻撃の際は二列目、三列目が次々と飛び出してゴールを強襲する。スター選手の存在はそんな“当たり前のプレースタイル”にエッセンスを加えるためのもの。依存したプレーになれば、チームそのものがスターもろとも沈没してしまうでしょう。

アフガニスタンに圧勝して、「強い日本が帰ってきた」? 冗談じゃない。本質を理解していない論調に浮き足立つようなら、きっと日本はワールドカップ出場を逃すでしょうね。

一方で、「そんなチームづくりをする時間がどこにあるんだ?」という声にも納得です。でも、それも仕方がありません。ブラジル大会やアジアカップでこの課題が浮き彫りになったにもかかわらず、延命治療で誤摩化し続けてきた結果でもあるのですから。

改めて、日本代表はロシア大会への切符を手にできないだろうな、と思う次第です。