2015年10月11日日曜日

ハーレー日本人デザイナー ダイス・ナガオ氏インタビュー #02

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■アイアンを“乗って楽しいバイク”にしたかった
――2016年モデルとして発表された新型のアイアンとフォーティーエイト。そのアイアンのデザインに携わったダイスさんに、開発のことをお聞きします。ダイスさんがアイアン、ベンさんがフォーティーエイト。それぞれが抜擢された理由は?
カンパニーでこうしたプロジェクトが立ち上がる場合、ケースバイケースなんですが、ひとつはコンペティション(競技会)方式で、お題に対してスケッチを提出し、ナンバーワンがプロジェクトリーダーとして進める方法と、もうひとつは素材(今回ならアイアン)に対してそのモデルへのアプローチを得意とする人を集めたチームを形成し、プロジェクトを進めていく方法があります。今回は後者ですね。

――その流れで、ダイスさんがアイアンに関するプロジェクトチームに携わることになった?

そうですね、割りとゆるい感じでのチーム構成から、押し進められていった印象です。


――以前のアイアンに対する印象は?
いつも思っていたのは「ラフに使ってカッコいいバイクだな」ということでした。例えばロードグライドだと、クロームパーツやきらびやかなカスタムが似合う、常に綺麗な美しいモデルだと思うのですが、アイアンは「使い込めば使い込むほどカッコ良くなるバイクだ」と思っていました。ショールームにあるときよりも、走り続けている姿がカッコいい。古いジーンズやブーツのように、自分の身の一部になって、味わい深さを増していく。だから、使い込むほどに味が出るデザインにしたいと思っていました。

アイアンは、その佇まいがもっともスポーツスターらしいモデルで、見ても走っても楽しいバイクだと思っています。だから今回のプロジェクトでは、良いところはそのままに、足りないところを補う方向で、向上させたいと思ったんです。

アイアンを“走りを楽しめるバイク”にしたかった。荒々しい外観と、ミニマムでスラムダウンさせたバイクなので、乗り心地は決してよくなかった。だから、このスタイルはそのままに、アップグレードされた足まわりを備えているアイアンこそが理想だと思いました。外観だけでなく、見えないところもインプルーブしたいとチームで共有し、アピールしました。

――それは、以前のノーマル状態に乗ったときの疑問が大きかった?
そうですね、ちゃっちぃな、って思いました(笑)。
ベーシックなカッコ良さはあるけど、乗り味もそのままだな、という印象でした。
疲れるし、ミニマムだし。

――疲れるというのは、どういったところで?
街中でも舗装のいいところばかりじゃないですよね、線路の上を超えたりすると、リアショックが底づくんです。スラムダウンしているから当たり前なんですが、そこを改善できたらベストだな、と思いました。
ミルウォーキーだけでなく、いろんなところで乗ってテストを繰り返し、粗を出しました。

(このインタビューの)二週間前にはプロモーションを兼ねて、スペイン・バルセロナで5日間完成車を乗り回したんですね。街中から郊外へ出て、峠、ハイウェイ、街中の渋滞エリアなど。舗装されたところもあれば石畳、地面が割れているところなどいろんなシチュエーションがあり、そこで実戦テストを行なったんです。我ながら、非常に良い仕上がりと感じるほどでした。

シャコタンのクルマってカッコいいけど、苦痛を伴うカッコよさですよね。あれがスイスイ気持ちよく乗れたら言うことないじゃないですか。そのイメージで、うまく仕上げられたと我ながら感動しました。


――確かに、私自身も新型アイアンに乗らせていただき、フォーティーエイトともども、前後サスペンションのグレードアップに大変驚かされました。
そう言っていただけて何よりです。

――確かに昨年モデルと比較したとき、新型アイアンが軽量化されていることに気づきました。
実はホイールのデザインチェンジは、当初のプランには入っていませんでした。ただ、足まわりのグレードアップという観点から見れば、ホイールも軽量化すべきだろうと。それで、13本スポークホイールから9スポークへと変更しました。

私のデザインでのアプローチとして、まずバイクはカッコ良くなくてはいけないというコンセプトがあります。そこにエンジニアによるアプローチはあってしかるべきですが、デメリットはあってはいけないと思っています。
新しい見た目で、カッコよく。そしてホイールは、軽くしたかった。
13本を変えるなら、FXなどに見られた9スポークだろうと。
ハーレー本来の姿への回帰、そこに新たなビジュアルを取り入れたかった。

エンジニアによる新ホイールへのアプローチをはかってもらい、剛性が高く軽いホイールを設計してもらったんです。
スポークのリムに近いところにエッジが光るマシンカットをしてもらいました。


――ナイトランのとき、都会のネオンに照らされると美しく輝くのでしょうね。
低速で走っていると、絶対美しく見えると思うんです。
このバイクは、汚れてもいいからとことん乗り倒してほしいんです。
ホイールのケミカルって大変じゃないですか。
だからこのアイアンだと、マシンカットの部分だけ磨いてくれれば、カッコよく見えると思うんです。
汚れていてもカッコいいバイク、それが新型アイアンの開発コンセプトでした。

――なるほど。
ただ艶消しブラックで塗装しただけのデザインって、愛がないじゃないですか。
ああいうクオリティにはしたくなかった。
ラフで、荒々しくて、力強いものにしたかった。
ブラックも、グロスブラックとマットブラックを併用することで、それぞれの黒を引き立てるようにしています。

――確かに、カラーバランスが絶妙な仕上がりで、カスタムオーダーを受けたビルダーが一瞬躊躇するような、そんな挑戦的なバイクにも思えました。
個人でも手軽にカスタムを楽しんでもらいたいですね。難しいところは僕らがすでに手を加えているので。
いじる楽しみを残しておきたいという想いもあって、この仕上がりとなりました。


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