2014年8月1日金曜日

外れくじを引いたアギーレ新監督、そして変わらない日本サッカー協会

■ドイツが示した日本のあるべき姿
ブラジルW杯が終わって、まもなく一ヶ月が経とうとしています。寝不足に苛まれつつもほとばしる情熱に包まれた一ヶ月間、フットボールフリークの方々は悦楽のときを過ごされたかと思います。もちろん、日頃フットボールに親しみのない方でも楽しめる、文字通りエンターテインメントにあふれた素晴らしい大会でした。

「W杯の優勝国のスタイルが、それからの4年のトレンドになる」

こんな言葉があります。2010年南アフリカW杯を制したスペイン代表の軸は、ベースとなったF.C.バルセロナの圧倒的なボールポゼッション能力。以降、世界のフットボールシーンにおける話題には常に「ボールポゼッション」という言葉が含まれるほどに。

そして今大会、優勝トロフィーを手にしたのはドイツでした。決勝戦で対峙した2チームのコントラストは実に分かりやすく、“スペシャルな選手はいないけど組織力および機能美に秀でたドイツ”と“メッシという希有なスーパースターの力を最大限に引き出すアルゼンチン”による試合は、ファンタスティックでW杯決勝にふさわしいレベルだったと思います。

結果的にドイツが世界を制しましたが、アルゼンチンのような一撃で何かをひっくり返してしまいそうなワクワク感を持つサッカーも魅力的でした。

ただ、日本代表という観点で向き不向きを考えるとしたら、間違いなくドイツ・スタイルでしょう。メッシやクリスティアーノ・ロナウド、ハメス・ロドリゲス、アリエン・ロッベンを作るのは困難ですが、ドイツ代表のようなチームを作ることは不可能ではありません。

もちろんドイツ人と比べるとフィジカル面で大きな差が出てしまいますが、一方で日本人は俊敏性といった他にないスピードを持ち合わせています。インテリジェンスに富み、献身的に戦える選手で組み立てられたチームなら、11人がまるでひとりの人間であるかのような連動性を持つことは可能ですし、それが日本代表チームの目指すべきスタイルだと思います。民族の違いはあれど、ドイツ代表が指し示したチームのあり方は日本にとって他人事ではないはず。


■代表チームは協会の私物ではありません
その日本代表ですが、先頃新しい代表監督にメキシコ人のハビエル・アギーレ氏が就任したとの発表がありました。噂レベルのニュースは以前から出回っていましたが、ようやく日本サッカー協会との契約が締結されたことで、お披露目となったよう。そして同時に、ブラジルW杯における日本代表の敗因の分析結果も。

相変わらずの体質ですね、日本サッカー協会。

華やかな話題に混ぜることで、目を背けてはならないはずの部分をぼかそうとする。そのレポート内容も実に馬鹿馬鹿しいレベルで、2006年ドイツ大会時の川淵キャプテン(当時)による「オシム発言」よろしく、嫌なことをうやむやにしたいという体質が今なお健在であることを知りました。

仕方ないのでしょう。ここでまっとうな感覚をもって敗因分析をすれば、当然「じゃあそれを解消するためには?」という話になります。そうなると、派手さとは縁遠い地道な強化方針を採らざるを得なくなり、彼らにとって最大のキャッシュポイントである日本代表チームからは華やかさが失われ、これまでのような巨額の収益が見込めなくなります。

そうなると、スポンサーだって手を引いていくことでしょう。ミュージアムなんてものを備えた自社ビルを持つ日本サッカー協会も、その図体を維持できなくなり、縮小させざるを得なくなるはず。こうなってくるとバッドスパイラルに陥っていくのみで、統制がとれなくなればますます組織はその規模を小さくしていく……。川淵さんほどあくどいやり方ができない原さんにわずかな良心の呵責が見受けられますが、だからといって彼の身勝手なやり方に日本代表の未来を預けるのは間違っていると思います。


■外れくじを引いたアギーレは……
大事なのは、今の日本代表が軸としているところは何なのか、です。ブラジルでの惨敗は、フィジカルコンディション云々よりも、チーム全体のメンタル面が幼すぎたこと。選手個々の能力が高くても、それらを支えるメンタルが脆ければカンタンに瓦解するという好例のような状態でした(なぜ2006年ドイツ大会の二の舞を踏んだのかは理解不能ですが)。

“玉砕しても攻撃的スタイルは貫く”のか、“負けないサッカーを軸にしてより多くの経験を積む”のか。そのときどきの監督や選ばれた選手の意見でコロコロ変わっては、一貫性のあるチームづくりなど夢のまた夢。理想とすべきは、年代別チームであっても同じスタイルを指導するF.C.バルセロナのような育成および強化方針だと思いますが、プレースタイルはまた別。日本人には、日本人にあったサッカーというものが存在します。

アギーレがそういうサッカーを引き出せるのかと言われれば、現時点では“大いに不安”と言わざるを得ません。なぜならば、彼は今まで日本とは縁もゆかりもないですし、きっとJリーガーの顔ぶれだって知らないはず。さらに、代表メンバーに日本人スタッフが入っていないことも疑問。このまま2018年ロシア大会に飛び込めば、今回のブラジルでの惨劇を繰り返すだけでしょう。

まず協会が着手すべきは、上層部の総辞職だと思います。原さんにしても、そして新たに協会をサポートするという名目で招き入れられた宮本恒靖さんにしても、新陳代謝を促せない年寄りが巣食う状態ではこれまでどおり板挟みになるだけで、大きな決断を下すことも手を入れることもできず、不満を募らせて協会を去るのがオチです。

少なくとも、今のサッカー協会に「変わらねば」という強い危機感は見えませんし、ゆえに代表チームが飛躍する姿もまったく想像できません。コンディションの整っていない海外組を呼び寄せた興行試合を見せられても、チケット代の無駄です。アイドルのコンサートを見に行っているわけじゃないのですから。

代表戦のみならず、Jリーグもますますつまらなくなるでしょう。地道に文化としての礎を築こうとしている人たちに報いようという気概すらない組織の運営するチームおよびリーグに、お金を支払う価値などありません。おそらくアギーレはビジネスと割り切って契約したのでしょう。プロとして当然のことではありますが、就任してまもなく、外れくじを引いたことを後悔することになると思います。

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