2015年7月2日木曜日

桐谷美玲を惹きつけるJリーグの魅力とは

■彼女のジェフ千葉愛は本物?
先頃、タレントの桐谷美玲さんがジェフユナイテッド市原・千葉のホームゲームを観戦していたさまが話題になりました。それも、プライベートで。確かに彼女ほど注目度の高い有名人がスタジアムに足を運んだとなれば、話題を集めるのも当然でしょう。

最近はJリーグのスタジアムに姿を現すタレントさんのトピックスが実に多いです。なかには「タレントとしての宣伝活動の一端では?」などと言われているそうですが、知名度が低いと話題にすら上りませんし、逆に知名度の高いタレントさんがやや斜陽気味なJリーグを利用してもメリットはほとんど皆無。素直にファンとして観戦しに来ているだけでしょう。

実際、日本サッカーは斜陽だと思います。W杯ブラジル大会での惨敗にアジアカップでの不本意な成績、先頃のシンガポール戦での不甲斐ない戦いぶりと、お世辞にも好成績を残しているとは言い難い日本代表。彼らが目覚ましい活躍をすれば、その礎であるJリーグには自ずと活気が溢れてくるのですが、代表のバロメーターに比例して新規ファンの獲得については苦戦中といったところ。

なぜ今、Jリーグなのか。答えはカンタン、20年以上培ってきた『地域密着型クラブの育成』に他ならないのです。

聞けば、桐谷美玲さんは一家でジェフ千葉のサポーターだそうで、かなりの年季だそう。Jリーグが発足23年めですから、生まれて間もない頃から市原臨海競技場に足を運んでいたのでしょう。Jリーグ元年(1993年)のジェフ千葉には、西ドイツ代表(当時)として活躍した稀代のドリブラー、ピエール・リトバルスキーが入団し、名声に違わぬ活躍ぶりでJリーグ人気の主役に躍り出たほど。ジーコ率いる鹿島アントラーズやカズ、ラモス要するヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ1969)などとしのぎを削る存在でした。

しかし、現在のジェフ千葉の舞台は、Jリーグのひとつ下に位置するカテゴリー、J2。2010年に降格してからずっとJ2暮らしで、あと一歩で昇格というところに迫りながらも勝ちきれず、6年めのJ2でのシーズンの真っ最中。往年の華やかな時代が遠くに感じられるほど、見る影もなくなっているのが現状です。

桐谷一家がビッグネームの存在や流行だけでサポーターになったのなら、きっと数年でサッカー熱は冷め、違う趣味や楽しみを探していたことでしょう。彼らを惹きつけたのは発足当時からのJリーグの理念である『地域密着型クラブ』、いわゆる“おらがまちのチーム”であったことです。


■四半世紀におよぶ活動が結実しつつある
プロ野球に属する球団は、すべて企業母体。分かりやすいところで言えば福岡ソフトバンクホークスで、今や福岡に拠点を置く強豪ですが、元々は大阪南部を本拠地とする南海ホークスという球団でした。運営母体は南海電鉄で、1988年にダイエーに売却されて福岡に移転、その後ソフトバンクに売却され、現在に至ります。

運営母体(親会社)が変わることで本拠地が移転する……企業母体のチームの宿命ですが、応援し続けてきたファンの心情を考えると、なんともやりきれないものです。なぜならばホームスタジアムという場所が存在し、そこに集まるファンは地元の人たち。スポーツクラブは、その地域に対してアイデンティティを強く持たせてくれる存在です。しかし企業の都合でころころ移転されては、地域愛もへったくれもありません。

『地域密着型クラブ』は、海外のスポーツクラブの存在意義を具現化したもので、スポーツクラブとして極めて健全な姿。発足当初のJリーグでは、その理念のため「クラブ名に企業名を入れてはならぬ」というおふれが出て、いくつかの球団から猛反発があったと聞きます(「だったらウチは一切の企業名を片っ端から外してやろうじゃないか」と、名古屋グランパスの母体であるトヨタ自動車が言ったことで収束したとも聞きます)。

これにより、Jリーグのクラブは地域に根ざした運営がベースとなり、企業母体の球団が引き起こす悲劇とは無縁の運営を続けてきました。日本では初の試みゆえ、横浜フリューゲルスの消滅という悲劇も経験したりしましたが、最初に蒔いた種が芽吹いてきつつあるわけです。

近年はJ2の下にJ3というカテゴリーも誕生し、この『地域密着型クラブ』が地方の町おこしとして活用されるようになりました。もちろん一筋縄ではいかず、各自治体が思い描いているほど華やかなものにはなりづらいところもありますが、スポーツクラブが生まれる場所から若い芽が現れ、街を背負ってさらなる世界を目指してくれる姿はどんな街であっても頼もしいもの。

桐谷美玲さんも、そんな想いとともにジェフの活躍を願っているのでしょう。J2であっても足を運ぶその姿勢は筋金入り。今回のトピックスは、彼女のナチュラルなキャラクターがそのまま反映されたものだと思います。

今回は桐谷さんがキッカケで知られることとなった“地域=スポーツクラブ=人”の幸せな関係。ときとともに育まれる郷土愛は何ものにも代え難く、極端なまでに一極集中型になっている日本という国に新たな可能性を示しているのだと思う今日このごろです。

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