2015年6月16日火曜日

勝負に対する気迫を感じない日本代表サポーター

2018年ワールドカップ ロシア大会 アジア二次予選 グループC 
日本 0 - 0 シンガポール 
2015年6月16日(火) 埼玉スタジアム2002(日本)


「オー、ニッポーン、ニッポーン、ニッポーン、ニッポーン」

途絶えることのない応援歌。今回ほどその光景が滑稽に見えたことはありませんでした。

2015年6月現在、FIFAランキングという点から見れば、52位の日本に対し、シンガポールは154位。「アテにならない」と言われるFIFAランキングですが、とはいえここまで差が開いていれば、どういう試合展開になるかは予測できようもの。実際、ボール支配率は63パーセント、シュート本数も3本のシンガポールに対し、日本は28本と雨あられのように撃ちまくりまくりました。格下チームと対戦したF.C.バルセロナかと思うようなデータです。

ところが、最後の一本、一点が入らなかった。

確かに相手のGKが当たりに当たっていたという副産物はありました。後半に放たれた本田圭祐の完璧なヘッドも、コースが甘かったとはいえ片手一本でかき出す神セーブで無効に。闇雲なハイクロスが通用しない空中戦に強いGKでした(某解説者は「もっとサイドからクロスを!」と叫んでいらっしゃいましたが……)。

とはいえ、それが言い訳になるはずがありません。1位しか確実に通過できない二次予選で、格下をホームに迎えての初戦。「シンガポールを過小評価してはならない」とはハリルホジッチ監督の言葉ですが、この状況下で負けは論外、引き分けも負けと同じ。勝利以外はあり得なかった試合です。

敗戦の原因は、不運だけではありません。圧倒的にボールを支配しながら、バイタルエリアから先の“崩しのアイディア”が致命的に乏しい。岡崎、本田、香川、宇佐美という先発の四人はもちろん、途中投入された選手も「どういうボールが欲しい」という要求がまるでない。だから、チームとしての攻撃の型が共有できない。プレッシャーもさしてないのに慌ててボールを手放すから、相手からしたら読みやすい。シンガポールがべったり引いていたのもありますが、「引いた相手をどう崩すか」などという課題は10年以上も前から言われているアジア対策ですし、海外のトップリーグでプレーしている選手が先発を飾っていながら無力というのは無様という他ありません。

絶対に勝たなければならない相手からゴールが奪えない。時間が経てば経つほどプレッシャーがのしかかっていたのでしょう、終盤はボールがまともに足元に落ち着かない選手が続発する始末。まだ二次予選ですよ? これでは先が思いやられます。

そして、サポーターのレベルの低さも浮き彫りに。

後半22分、完全に捉えたと思われた本田のヘッドが相手GKのビッグセーブでかき出された瞬間、「あ、今日は本気でやばいな」という雰囲気に陥りました。おそらくスタジアムも同じような雰囲気に包まれたことでしょう。

そこでサポーターが取った行動とは……変わらぬ大合唱でした。単調なテンポの合唱が聞こえ続け、「ああ、この人たちは本気で勝ちたいとは思っていないんだな」と思いました。

声援をおくることを否定するわけではありませんが、アジア最終予選で中東の強豪と戦っているならいざしらず、二次予選の初戦で格下相手、そしてホームという状況下だということを考えましょう。これで怒らない方がどうかしています。

「お前ら、何ちんたらやってんだ。とっととねじ伏せろ」

これぐらいの意思表示は当たり前。試合が終わってからブーイングがあったそうですが、いやいやタイミングそこじゃないでしょう、と。なぜ試合中に怒りを示さないのでしょう。「まわりが精一杯応援しているから、自分も一緒に声援を送らなきゃ」と? それ、サポーターじゃなくてコンサートに来たファンですよね。この日、あのスタジアムで声援をおくるだけだった人すべて、目の前で繰り広げられている試合が勝負事だという認識が薄い方々だったのでしょう。この点に関しては、「サポーターに恵まれていないなぁ」と日本代表の面々に同情します。

10数年前、イタリア・ローマのスタディオ・オリンピコでA.S.ローマvsレッジーナの試合を観戦したことがあるのですが、後半半ば、レッジーナに先制点を奪われると、6万人とも言われるローマのサポーターが足踏みを始めたのです。すると、スタジアムは地鳴りに包まれました。

「お前ら、このまま終わったらどうなるか分かってるな」

まるでそう言わんばかりの怒りの地鳴り。結果的にローマは敗れ、帰路につくサポーターの表情はまるでお通夜帰りのようでした。ただ、怒りを表すことは本気で勝利を渇望するがゆえ、ということを教えられました。

選手を育てるのは、サポーター。サッカーに対する審美眼を養い、良いプレーには賞賛を、怠惰なプレーには罵声をおくる。そうすることで、選手は真剣勝負の意味を知り、より良い選手へと成長していくのです。

「まるでアイドルのコンサートのよう」とはセルジオ越後さんの言葉ですが、今日のていたらくはその言葉どおり。サポーターがこのレベルでは選手間に緊張感は走らないし、今より日本代表が強くなることはないでしょう。ハリルホジッチといえど、魔法使いではないですから。

アジアカップ ベスト8から監督が変わり、テストマッチで3連勝を飾ったことでチームが強くなったかのように思われていましたが、改めて日本代表の現在地が見えた試合だったのではないでしょうか。

まぁ、アジアでこの結果しか出せない日本代表を「歴代最強」などと謳っている馬鹿げた状況を思えば、一度ぐらいワールドカップ出場を逃してもいいんじゃないか、と思っています。イングランドやフランスだって出場を逃したことがあります、そして彼らは、その黒歴史を糧に再び勝ち上がってきました。そう、良薬口に苦し、です。

良薬が必要なのは、サポーターか代表選手か、はたまた……。

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