2014年7月17日木曜日

アディダスの暴挙? メッシのMVP選出に疑問の声噴出

ドイツの優勝で幕を下ろしたW杯2014ブラジル大会。決勝戦はライブで観ていましたが、攻めのドイツに守りのアルゼンチンという構図がはっきりと分かりつつも、両者の特徴が発揮された好ゲームだったと思います。1990年代ぐらいまでは、「絶対に優勝したい=負けられない」という両者の思惑から退屈なゲームになりがちなW杯決勝戦でしたが、近年は攻撃的スタンスが強くなったからか、観る者にとっては楽しくも緊張感のある良い試合が多いようです。

そんなW杯ブラジル大会ですが、最後の最後でひとつ腑に落ちないことがありました。大会MVPにアルゼンチンのリオネル・メッシが選ばれたことです。

サッカーに興味がない方でも、その名を耳にしたことはあるでしょう。世界最強(のひとつに数えられる)クラブチームのF.C.バルセロナ(スペイン)のエースストライカーにして、バロンドール(ヨーロッパ年間最優秀選手)に3年連続で輝いた天才。残念ながらW杯には一歩手が届きませんでしたが、それでも彼がマラドーナやペレに並ぶレベルの選手であることに疑いの余地はないでしょう。

過去の実績なら歴代スーパースターに比肩するメッシですが、今大会でのパフォーマンスはと言われると、正直可もなく不可もなく、といったところ。グループリーグではロスタイムの同点ゴールなどを含め4ゴールを奪取しましたが、決勝トーナメント進出とともに彼へのマークは厳しさを増し、ゴールはもちろん効果的な働きはあまり見受けられませんでした。

結果として決勝戦の舞台まで勝ち上がってきたアルゼンチンですが、メッシがその原動力になっていたかと言われると、「?」と言ったところ。1994年アメリカ大会でのロベルト・バッジョ(イタリア)、1998年フランス大会でのジネディーヌ・ジダン(フランス)、2010年南アフリカ大会でのディエゴ・フォルラン(ウルグアイ)のような活躍には遠く及ばないレベル。光るものがなかったわけではないですが、それならコロンビアのハメス・ロドリゲスやブラジルのネイマールらの輝きの方が上だったと思います。

結局は、ビジネスなのでしょう。

このMVP選考は決勝戦の前までに投票が締め切られるのですが、候補にあがった10名のうち、8名がアディダスとサプライヤー契約をしている選手だそうです。もちろんメッシもアディダスと契約しています。そしてアディダスは、このW杯の公式サプライヤーでもあるのです。日本代表チームの件もそうですが、アディダスの露骨なビジネスライクな動きといったら、正直目に余るほど。今回のMVP選考も、アディダスの肝いりと見ていいでしょう。

近年、フットボールビジネスは熾烈を極めています。「どこのクラブがどのメーカーのユニフォームを着るのか」、「あの有名選手はどこのスパイクを履くのか」といった話題は日常茶飯事。クラブ間はもちろん、国際Aマッチの親善試合レベルなら、マッチメイクにも影響するほどです。なぜならば、例えばナイキのユニフォーム同士の国の試合にすれば、その試合の写真や映像がそのまま広告・宣伝につながるわけですから。

香川真司の実力を疑うつもりはありませんが、彼に代表の背番号10を背負わせたのもアディダスだと言われています。中村俊輔が代表から縁遠くなったことから本田圭佑が狙っていたとも言われていたのですが、本田が怪我で代表招集を見送ったときに、アディダスが香川に10番を押し付けたのだとか。

いわゆる都市伝説的な域を出ない話ではありますが、日本代表がアディダスジャパンと歩み出した時期が1998年フランス大会以降で、中村俊輔、香川真司と歴代10番がアディダス契約選手というところが偶然のものとは思えません。ちなみに2002年日韓大会にて、フィリップ・トルシエ監督が最終23名のメンバーから中村俊輔を外す決断を下した際、日本サッカー協会はもとよりアディダスジャパンも大騒ぎになったと言います。

フットボールは、世界はもちろん日本においても大きな影響力を持つコンテンツとなり、代表チームや代表選手の一挙手一投足がビジネスを左右することから、あらゆる企業がその恩恵にあやかろうとさまざまな手を講じています。本来の目的(代表チームの強化)からはかけ離れた動きであっても、こういうご時世ですから致し方ないことなのかな、とも思いつつ、しかしながらエンドユーザー(消費者、利用者)がその是非を見極めればいいだけだとも思う今日このごろ。

メッシのMVP選出については、あらゆるところから疑問の声が噴出しています。FIFA(国際サッカー連盟)のブラッター会長まで疑いの声を出すあたり、「アディダスの独断で決めちゃったんじゃないの?」という邪推までしてしまいそうになりますね。ただ、ここまで疑問視される選考に意義など存在しないわけですから、むしろメッシが可哀想に思えるほど。

金さえ生み出せれば、何をやったっていい。

モラルハザード以外の何ものでもありません。「綺麗ごとでメシが食えるか」という声が聞こえてきそうですが、綺麗ごとすら貫けないビジネスに価値など生まれません。そうしたスタンスの人ないし企業は、一時的に儲かったとしてもその栄華が長続きすることはないでしょう。W杯での反省もせず、次の監督人事の話題を持ち出して問題をうやむやにしようとしている組織なんかは、特にそうでしょうね。

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