2014年7月3日木曜日

拠りどころとなる原点を持つこと

■オーソドックスなモデルが消えたハーレー
All Aboutのバイクガイドとして、来週掲載のハーレーダビッドソン スポーツスターに関する記事を書いていたときのこと。自分自身もスポーツスターを所有していることもあり、いろいろと思い入れを含めつつまとめていたのですが、改めて触れなければいけないところに差し掛かりました。

現在のハーレーダビッドソンのスポーツスターに登録されているモデルはすべて派生モデルと言われるもので、その原点となるオーソドックスなモデルが消えてしまっているのです。

ハーレーダビッドソンにはファクトリーカスタムモデルという、「こんなスタイル、どうでしょう?」とメーカー提案型カスタムバイクという位置づけのモデルがあります。人気が高いXL1200Xフォーティーエイト、チョッパーライクなXL1200Vセブンティーツー、そのほかXL1200Cカスタム、XL1200CAリミテッドとXL1200Bリミテッドなどなど、ファクトリーカスタムモデルのバーゲンセール状態。XL883Nアイアンがスタンダードモデルと思われているようですが、あれもいわゆるダークカスタムモデル。

元々このスポーツスターファミリーには、XL883というすべての原点となるモデルがいました。2009年を最後にモデルカタログから姿を消しましたが、どんな姿にするのもオーナー次第という限りない可能性を秘めたオーソドックスなモデルの存在は、今振り返ってみて、非常に貴重な存在だったと思います。特に今のようなファクトリーカスタムモデル全盛期から振り返れば。

バイクのカスタムというのは、オーナーのライフスタイルに合ったオンリーワンのバイクを作るということ。ファクトリーカスタムモデルの場合はその逆で、オーナーがバイクに合わせる形になります。なぜならば、すでに個性という名のドレスで着飾っているから。結果的に、ファクトリーカスタムモデルの売り上げの方がXL883を上回っており、採算という面からカタログ落ちすることとなったのでしょう。市場がそう判断した、確かにそのとおり。

オーソドックスなモデルがないと、ファクトリーカスタムモデルからハーレー(バイク)の世界に入った人は、迷ったときにどこに立ち戻っていいのか分からなくなってしまいます。そういう意味で言えば、XL883をカタログ落ちさせたことは非常にもったいないわけです。

これは、今の日本サッカーに関しても同じことが言えると思います。


■最後に頼れるスタイルを持つ重要性

「自分たちのサッカーを」W杯ブラジル大会で散った日本代表の面々は、口々にそう言っていました。この台詞は何年か前から耳にするようになっていましたが、このブラジル大会に至るまで、「どれが日本のサッカー?」とずっと思っていました。

これまでに日本の強さが発揮されたスタイルは、ハーフウェイライン近辺でボールを奪ってからの素早いショートカウンターだったと思います。攻守ともに選手同士が近い距離を保ち、ボールを奪うやいなや少ない手数でも最短距離で相手ゴールまでボールを運び、強襲する。

ところが、選手間で意識の統一がなされていないのか、同じようなチャンスを手に入れても流れを滞らせてしまう場面が多々見受けられたのも事実。ほぼ固定メンバーで4年間やってきたチームがなぜ?と今さらながらに思うわけですが、結果的にその不安がブラジルでの本番で的中することとなってしまいました。

拠りどころとなれる原点がなかったのでしょう。

イタリアは追いつめられると貝のように閉じこもるカテナチオを発動させますし、ブラジルやスペイン、ポルトガルなどは高いスキルを活かしたパスワークでボールキープしリズムを作ります。アルゼンチンは狡猾なプレーで試合の流れを自分たちのもとへと引き寄せる術を心得ていますし、最近は鳴りを潜めていますが、イングランドにはキック&ラッシュという伝統戦法がDNAに染み付いています。

日本サッカーの原点は?


■この代償を支払うときは、必ず来る
日本人の特性をあげると、組織に準じたコレクティブなプレー、素早く正確なパスワーク、アジリティ(敏捷性)、誠実なところといった感じでしょうか。逆にサッカーに対して不向きなのは、身体能力が高くはなく、ダーティさに欠け、プレーそのものが単調なところでしょうか。監督、選手ともに90分間を通じて試合をマネジメントできる人材が少ないように思えます。ザッケローニ? マネジメントのできない外国人は例外ですね。

もちろん、選手によって特性はあります。ボールキープに長けた者、正確無比なパスを繰り出せる者、鋭い読みでディフェンスを統率できる者……。ただ、それらはあくまで選手個人の特性であって、重要なのは“どういうチームにすべきなのか”です。その指針によっては、どれほど能力が高かろうともチームに合わなければ不要となります。

日本代表というチームは、日本国籍を有する者なら誰でも招集できる国内最強のチームであるべき。それだけの特権を持っているわけですから、当然「日本のサッカーとは、こうだ」という明確なスタイル(指針)のもとに、選手構成がなされなければなりません。そう、日本中の模範となるべきチームなのですから。

指揮官の迷采配とマネジメント能力の低さという足枷を省いて見ても、「自分たちのサッカーを」と口にするほどの明確なスタイルがなかったことが、世界の檜舞台で露にされてしまいました。これは、これ以上ないほど貴重な教訓ですし、次の世代に向けて最大限に活かさねばなりません。

しかし、ここ最近の報道を見ている限り、今回の教訓を活かそうという姿勢が日本サッカー協会からまったく感じることができません。自分たちのビジネスのために日本代表というブランドを利用しているとしか思えないのです。

他にない、唯一無二のスタイルを構築すること。これは一朝一夕ではできませんし、だからこそ時間をかけた地道な強化が必要なのです。ここを疎かにしているうちは、どれだけ世界の強豪国に挑もうとも跳ね返されるだけ。しっかりとした石垣のない天守閣など脆いものです。

世界に名だたるサッカー強豪国でもないのに、ことビジネスという点に関して言えば世界屈指という歪な国、日本。うわべの華やかさだけの金儲けしか考えていない日本サッカー協会は、いずれこのツケを支払わされるときが来るでしょう。

土壇場で踏ん張るために必要な土台はいかなるものか。世界が日本に突きつけた大きな課題を無視しては、W杯で上位に食い込むことはまだまだ難しいでしょう。

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