2014年6月30日月曜日

志を失った日本サッカー協会は早々に店じまいを

■日本代表の新監督に「待った」
ニュースなどで目にした方もおられるでしょう、サッカー日本代表監督の後任として、メキシコ人のハビエル・アギーレ氏が候補に内定、大筋で合意に達しており、新体制発足も間近だとか。

4年前に比べたらずいぶん早い動き出しだなぁと感心しますが、4年前の動き出しの遅さ……2010年南アフリカ大会後にもたついたせいで有力候補が次々と新天地に飛んでいってしまい、消去法のような形でザッケローニに内定を出した、という過去を反省してのことでしょう。

今、巷では「新監督を決める前に、まずは今大会の総括が先だろう」と「総括でモタモタしていたら有力候補を逃してしまう。このぐらい早い方がいい」という意見に二分されているようです。

結論を出す前に、イメージしてみました。アギーレ新体制による日本代表が動き出したら、どうなるでしょうか。

まずは彼の経歴からおさらいします。1958年12月1日生まれの55歳で、メキシコはメキシコシティ出身。メキシコ代表のディフェンダーとして地元開催となった1986年W杯メキシコ大会に出場した経験を持っており、メキシコ代表監督として2002年日韓大会、2010年南アフリカ大会を経験しています。クラブチームにおいても、今年5月に退任したエスパニョールをはじめ、レアル・サラゴサ、アトレティコ・マドリード、オサスナといったリーガ・エスパニョーラ(スペインリーグ)でも指揮を執った経験の持ち主……とまぁ、すばらしい経歴の持ち主です。よくこんな大物を連れてこれたなぁ、日本サッカー協会のパイプ(おそらく強化委員長の原さんでしょう)は相当なもの。

日本との関わり合いは、2002年日韓大会ぐらいでしょうか。ほか、特にありませんね。

ではそのアギーレ氏が代表監督に就任したら……?


■また同じ過ちを繰り返すのか
まず日本代表の当面のスケジュールですが、大きなものとして来年2015年、オーストラリアで開催されるアジアカップがあります。ここでの優勝国はその2年後に開催されるプレW杯・コンフェデレーションズカップへの出場権が約束されるので、非常に重要な意味を持つ大会と言えます。

準備期間は一年。日本サッカーとの交流がないアギーレ氏としては、まず現在の代表チームのポテンシャルを肌で感じたいと思うところでしょう。となると、スタートはブラジル大会のメンバーが軸になります。初戦であれば、よほどの事情を抜きにして海外組だって帰国するはず。キリンカップ(もしくはキリンチャレンジカップ)は同じ顔ぶれで始まるに違いありません。

そこから10回もいかない試合数でアギーレ氏が「日本代表チームにとって、ベストな戦い方(フォーメーション、戦術諸々)」というものを模索し、Jリーグを視察してまわり、新しい才能を発掘して代表チームに融合させて……。

間に合うわけがありません。

アギーレ氏の頭にJリーグというものがどの程度入り込んでいるかは定かではありませんが、おそらく現時点ではゼロでしょう。当然名の知れた海外クラブ所属選手を軸にしていくでしょうし、もっともスキルや経験値の高い選手を起用することは当たり前のことと思われているはず。

ザッケローニが就任したときと、何ら変わりありません。

現時点でもっとも重要なこと、それは「4年後だけでなく、さらにその将来に結びつけていく日本サッカーのための強化方針」です。これは総括以上に重要なことですし、こうしたベーシックな土台なくして真の強化はありえません。その論理で言えば、アギーレ氏という人物そのものは素晴らしい方ですが、「なぜアギーレなのか」「アギーレに何を任せたいのか」「4年間で彼に課す役割は何なのか」というところがスッポリ抜け落ちている。

日本サッカーに必要な強化方針とは——。

その回答次第では、アジアカップを落としたってかまわないという判断もアリです。「もしかしたらロシア大会でも満足のいく結果が出ないかもしれないが、遠い未来を見据えた強化を継続していきたい」のであれば、どんな結果だって国民は受け入れてくれます。

安定したチームマネジメントを臨むならJリーグ監督経験のある方を選ぶべきだし、我が国に深い情熱をもって取り組んでもらいたいなら密接な関係の外国人監督か日本人監督の名が出てくるはず。アギーレ氏はそのいずれでもありません。彼に情熱がないわけではありませんが、高額年俸以上の義理が日本に対してない彼に、そうしたエクスキューズを求めるのはナンセンスです。

結局のところ、ビジネスなのでしょう。



■もはや誰にもとめられないのか
日本サッカー協会は、いや日本代表ブランドでのビジネスは巨大になりすぎています。他の国では考えられないほど肥大化し、その利権にあやかる人や企業が数多く存在します。それを「改めて日本サッカーの未来のために」という正義感で台無しにされちゃあたまらないわけです。割を食うだけならいざ知らず、もしかしたら存在そのものが傾いてしまう企業だってあるかもしれません。

まやかしでもいい、幻想でもいい、ビッグネームを監督として招聘し、世界のトップリーグで戦うスター選手を散りばめた豪華絢爛な日本代表チームを維持し続けなければ、日本サッカー協会をはじめとする関連企業はその存在を保てなくなる。要するに、彼らは自分たちのためだけに日本代表というブランドを利用しているだけのこと。そこに、サポーターはもちろん、国民に対する誠意なんてこれっぽっちもありません。

アギーレ氏の就任が決まったら(決まるでしょうが)、おそらくザッケローニのときと何ら変わらない4年間が始まるでしょう。そしてロシア大会で惨敗すればスケープゴート探しがはじまり、その批判の隙間をかいくぐって後任監督にビッグネームが座り……。

もはや日本サッカー協会に、高い志をもった人は皆無なのでしょう。今回のブラジルにおける惨敗は、大きな教訓としてさらなる飛躍の糧となるかもしれないというのに。ただただ残念です。

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