日本がワールドカップに挑む……そのたびに、頭をよぎる光景があります。2006年ワールドカップ ドイツ大会での日本代表の姿です。よくご存知の方は「もういいよ、その話は」とおっしゃられるかもしれませんが、だからこそ振り返っておきたい出来事だと思うのです。
ジーコ監督率いる日本代表は、ドイツの地で無惨に敗れ去りました。日本は強豪国のひとつではありませんから、いつであれワールドカップに挑めば負けるときが訪れますし、それを糧に、4年後、その次へとつなげて戦い続けてきました。初挑戦となった1998年フランス大会はもちろん、自国開催となった2002年日韓大会でも決勝トーナメント一回戦でトルコに辛酸をなめさせられていますし、2010年南アフリカ大会でも同様。敗北は、次なる挑戦へのスタート。何も恥じることはありません。
しかし、ドイツでの惨敗はそれまでの敗北とはずいぶん意味が異なるものでした。日本サッカーの歴史を語るうえで欠かせない“ドーハの悲劇”とも違う惨めなもので、結果論ではありますが、過信した未成熟なチームの末路とも言うべき敗北だったと言えます。そんな日本代表を、良くも悪くも象徴していた存在が、中田英寿という選手でした。
日本代表がまだワールドカップに出場できずに足掻いていた時代に登場した中田は、1997年、フランス大会アジア予選前の親善マッチである韓国戦でフル代表デビューを果たすと、名波浩や山口素弘とともに代表の中盤を形成、瞬く間に中心的存在となり、結果的に日本初のワールドカップ出場権獲得の原動力となります。以降の彼の活躍ぶりは書く必要はないでしょう。1998年フランス大会、2002年日韓大会と続けて日本の中軸として大車輪の活躍を見せ、彼なしでは強い日本代表が成り立たないほどでした。
ドイツ大会での最後の試合となったブラジル戦後、中田英寿は突然の現役引退を表明。29歳という若さでの引退に、日本のみならず世界中が驚いたことでしょう。個人的には、自身のウェブサイト上での発表のみで引退会見を開かなかった彼のスタンスには疑問を抱いてはいますが、中田なりに考え抜いたことでもあったでしょうから、そこは敬意を示したいと思います。
ドイツ大会に挑むにあたり、代表チームは二分していたと言います。“中田派”か“反中田派”か。ジーコ監督から全幅の信頼を寄せられていた中田は、どれだけコンディションが悪くてもチームに合流すればスタメンの地位が約束されているほど重宝されており、チームメイト……主に国内組(Jリーガー)から疎まれていたと言います。彼の直接的な物言いも、そうした空気感をより悪くするものだったでしょう。
結果論ですが、その意識の相違をあえて言い表すとすれば、「世界を相手に勝利するための努力を強いた中田英寿」と「チームとしての調和を乱すウイルスに対して敵愾心をむき出しにしたチームメイト」。2010年南アフリカ大会におけるカメルーンやフランスのように、待遇の悪さや監督に対する不満から内部崩壊を起こすチームは珍しくありません。が、それで貴重なワールドカップでの挑戦を無駄にするというのは、これまで戦ってきた対戦相手や応援してくれている人に対して失礼なこと。
ワールドカップにおいて、何より優先すべきは“勝利すること”。そういう意味では、中田英寿も他のチームメイトも、目的は同じだったと思います。ただ、それぞれが見ている景色が異なっていたため、歩み寄ることができなかった。結果、チームは一枚岩とはなれず、肝心要の連携がバラバラのところを敵に突かれ、グループリーグ最下位でドイツを後にすることとなりました。
ドイツでの敗因をあげるとすれば、マネージメント能力が致命的に欠落していたジーコと、盲目的に彼を起用し続けた日本サッカー協会だと言えます。チーム内における不協和音は、本大会に挑むずいぶん前から世間を賑わせていました。試合における采配や戦術の立て方に対する疑問、そしてチームそのものをコントロールするマネージメント能力が欠落しているところが指摘され、「ジーコで大丈夫か」という声は確かに存在していました。もっと早くに不満が爆発していれば、事前に手が打てたかもしれませんが、ギリギリの状態で保たれていた緊張感は、初戦のオーストラリア戦で露呈し脆くも崩れ去るという最悪の結果を生んでしまったのです。
僕自身は、ザッケローニ率いる今の日本代表に対しては批判的です。ここまで来たら祈るのみではありますが、今までの歩みやザッケローニのマネージメント、チームが醸し出す雰囲気、これまでの戦いぶりなどを見ていると、なぜか2006年ドイツ大会時の代表チームを思い出してしまいます。もちろんザッケローニは世界に名だたるプロフェッショナルとして、3年半にわたって日本代表チームを形成してきたわけで、彼は与えられた任務を忠実に遂行したまで。彼に非はありません。
別に今の日本代表のなかで不協和音が生まれているなんてことはないでしょう。ただ、先のザンビア戦などを観てもチーム状態が上向いていないことは明白。本田圭祐に昔のような当たり強さは戻ってきていませんし、アタッキングサードに侵入してからのパスや動きもちぐはぐしている感じ。アディショナルタイムにおける大久保嘉人の劇的ゴールには大いに驚かされましたが、その直前に同点にされたとき、「これでチーム内の危機感が高まれば、変化が起こるかも」という小さな期待を抱きました。大久保のゴールは誰もが待望していたものですが、あれによって持っておくべき緊張感が霧散した印象すらあります。大久保を救世主扱いする報道を見るたびに、ため息しか出てきません。
これまでの日本代表の歩みが正しかったのかどうか……結果は、まもなく出てきます。ただ、今一度思い出して欲しいのです。2006年ドイツ大会に挑んだ中田英寿をはじめとする日本代表の姿を。今の選手やサポーターはみんなあのときのことを覚えているでしょう、なかにはそのときの代表チームにいたり、ドイツまで足を運んだ人もいると思います。
あの苦い経験を糧に、改めて自分たちの目標を再確認し、できうるすべてのことに取り組んで欲しい。これが、最後のワールドカップだと思って。
2014年6月8日日曜日
大会後の4年間を決めるワールドカップ優勝国はどこだ
ブラジル、イタリア、ドイツ、アルゼンチン、イングランド、ウルグアイ、フランス、スペイン。これらはワールドカップ優勝経験を持つ国です。ここ何大会かで初優勝国が2つも登場しましたが(1998年フランス、2010年スペイン)、現在204の国と地域が参加する世界屈指のスポーツイベントであるワールドカップにおいて、優勝経験を持つのはわずかに8ヶ国だけなのです。ちなみにイングランドが優勝したのは1966年と半世紀前、ウルグアイの優勝も1930年と1950年とずいぶん前。つまり、半世紀近くもワールドカップで優勝する国というのは、ブラジル、イタリア、ドイツ、アルゼンチンのいずれかだったというわけですね。
またワールドカップ優勝国は、必ず開催国がある大陸のなかから現れると言います。2002年日韓大会(優勝はブラジル)、2010年南アフリカ大会(優勝はスペイン)と、いわゆる“第三世界での開催”はイレギュラーとして、1986年メキシコ大会ではアルゼンチンが、1990年イタリア大会では西ドイツ(現ドイツ)が、という感じです。
結果論ではありますが、ワールドカップが終わってみると、優勝トロフィーを掲げている国というのは大きく予想から外れたりはしていないもの。大抵「ああ、やっぱりね」、「うん、まぁ彼らなら優勝できるよね」という感じで幕を引くことが多いです。余談ですが、2010年南アフリカ大会のとき、ベスト4が出そろったときに勤めていた会社で「どこが優勝するか!?」という賭けをし、ほとんどがスペインまたはオランダに賭けるなか、僕ただひとりウルグアイに票を投じました。「せっかくなんだから、“ええー! まさかここが!?”って国が優勝した方が面白いやん」という理由からです。ジャイアントキリングこそフットボールの醍醐味ですからね。
そんな大物食いを楽しみにワールドカップを観戦するものの、上記のとおり、終わってみれば本命または対抗が優勝トロフィーを手にしています。前回大会のスペインは初優勝でしたが、チームのベースとなっていたのは当時最強のクラブチームだったFCバルセロナ。サプライズというほどの結果ではなかったと思います。
「優勝するのは本命どころ」、「開催国の大陸から優勝国が出る」というワールドカップのヒストリーにならって、個人的に優勝国を予想してみるとすると……。
【本命】ブラジル
【対抗】アルゼンチン
【大穴】ドイツ
うーん、無難すぎ(笑)。かなり真面目に予想すると、こんな感じになっちゃうんじゃないでしょうか。国のレベルによってワールドカップへの挑み方はかなり違います。日本ぐらいのレベルだと、まずはグループリーグの3試合への対策でいっぱいいっぱいですが、優勝経験者しか持ち得ない“勝者のメンタリティ”を有する国は、決勝戦までの一ヶ月におよぶ長丁場での戦い方を想定したチームづくりをしてきます。当然「世代交代がうまくいっているか」、「選手層は分厚いか」、「土壇場で踏ん張れるメンタルが備わっているか」という要素は必要ですが、“優勝した経験を持つ者”と“そうでない者”のあいだにある隔たりは、想像している以上のもの。本田や長友が「ワールドカップで優勝する」と言ってくれるのは頼もしい限りなのですが、カンタンなことではないのもまた事実。
本命はやはりブラジル。王国であり開催国でもあるゆえ、これまで入念なチームづくりが図られてき、成熟のときを迎えたという印象です。各ポジションを見てもワールドクラスの選手が顔を並べており、盤石とも言える状態にあるよう。懸念されるのはワールドカップ反対の暴動。自国開催にもかかわらずネガティブな声が聞こえるというのは小さくないマイナスイメージですが、1998フランス大会のときのように、勝ち上がっていけば国内の雰囲気も変わってくるんじゃないか、とも。
対抗は悩みましたが、やはりアルゼンチンか。メッシ、アグエロ、イグアインを要し、マスチェラーノやディ・マリアらが中盤を引き締める陣容はまばゆいばかり。特に前線の3人は、2002日韓大会で優勝したブラジルの3R(トリプルアール/ロナウド、リバウド、ロナウジーニョの3FW)をほうふつさせます。今大会にかけるメッシの意気込みも相当なものと聞きますし、南米開催で彼らが奮起しないわけがない。
大穴といったら失礼ですが、南米開催ながらこれまでの定説に風穴を空けてくれることを期待してドイツ押し。ここ数年のブンデスリーガの飛躍は目覚ましいものでしたが、ラーム、シュバインシュタイガー、クロース、ポドルスキー、ゲッツェ、ロイス、エジル、ノイアーといった国産選手の成長がそれを支えていたと言っていいでしょう。鉄板ではありますが、今のドイツサッカーはかなりスペクタクルなものに仕上がっていますからね。
そして、優勝国以上にワクワクしてしまうのがダークホースとして躍動する国の存在です。「ワールドカップをかき回して欲しい!」という個人的欲望から言えば、期待をしているのはベルギー、コロンビア、クロアチアあたりでしょうか。特に若くて勢いがあるベルギーには、ベスト4ぐらいまで突っ走ってきてもらいたいところ。1994年アメリカ大会のスウェーデン、1998年フランス大会のクロアチア、2002年日韓大会のトルコ、2006年ドイツ大会のポルトガル、2010年南アフリカ大会のウルグアイと、フレッシュなダークホースは大体ベスト4まで勝ち残っているもの。個人的には「そのまま優勝しちゃえ!」とか思ったりしますが(笑)。
得点王争いも興味深いポイントですね。近年は“9番的ストライカー”と呼ばれる人種が減少傾向で、ドイツやスペインなどのように“ゼロトップシステム”という古典的なフォワードを起用しないチームが増えてきています。そんななか、誰が得点王に輝くのか。ちなみに優勝国から得点王が生まれたのはここ数十年で一度きりで(2002年日韓大会のロナウド/ブラジル優勝)、優勝候補国にも有能なストライカーはいますが、ロナウド(ポルトガル)やカバーニ、スアレス(ともにウルグアイ)、ファルカオ(コロンビア)、ジエゴ・コスタ(スペイン)、バロテッリ(イタリア)など注目度の高い選手がずらり揃っています。1994年アメリカ大会のサレンコ(ロシア)みたいな意外性のあるストライカーの出没があると、大会も一気に盛り上がりそうですね。
大会を制する国の戦い方が、その後4年間のトレンドをつくるとも言われています。優勝国予想をしつつ、本大会観戦時は各国の試合展開を楽しみたいと思います。
またワールドカップ優勝国は、必ず開催国がある大陸のなかから現れると言います。2002年日韓大会(優勝はブラジル)、2010年南アフリカ大会(優勝はスペイン)と、いわゆる“第三世界での開催”はイレギュラーとして、1986年メキシコ大会ではアルゼンチンが、1990年イタリア大会では西ドイツ(現ドイツ)が、という感じです。
結果論ではありますが、ワールドカップが終わってみると、優勝トロフィーを掲げている国というのは大きく予想から外れたりはしていないもの。大抵「ああ、やっぱりね」、「うん、まぁ彼らなら優勝できるよね」という感じで幕を引くことが多いです。余談ですが、2010年南アフリカ大会のとき、ベスト4が出そろったときに勤めていた会社で「どこが優勝するか!?」という賭けをし、ほとんどがスペインまたはオランダに賭けるなか、僕ただひとりウルグアイに票を投じました。「せっかくなんだから、“ええー! まさかここが!?”って国が優勝した方が面白いやん」という理由からです。ジャイアントキリングこそフットボールの醍醐味ですからね。
そんな大物食いを楽しみにワールドカップを観戦するものの、上記のとおり、終わってみれば本命または対抗が優勝トロフィーを手にしています。前回大会のスペインは初優勝でしたが、チームのベースとなっていたのは当時最強のクラブチームだったFCバルセロナ。サプライズというほどの結果ではなかったと思います。
「優勝するのは本命どころ」、「開催国の大陸から優勝国が出る」というワールドカップのヒストリーにならって、個人的に優勝国を予想してみるとすると……。
【本命】ブラジル
【対抗】アルゼンチン
【大穴】ドイツ
うーん、無難すぎ(笑)。かなり真面目に予想すると、こんな感じになっちゃうんじゃないでしょうか。国のレベルによってワールドカップへの挑み方はかなり違います。日本ぐらいのレベルだと、まずはグループリーグの3試合への対策でいっぱいいっぱいですが、優勝経験者しか持ち得ない“勝者のメンタリティ”を有する国は、決勝戦までの一ヶ月におよぶ長丁場での戦い方を想定したチームづくりをしてきます。当然「世代交代がうまくいっているか」、「選手層は分厚いか」、「土壇場で踏ん張れるメンタルが備わっているか」という要素は必要ですが、“優勝した経験を持つ者”と“そうでない者”のあいだにある隔たりは、想像している以上のもの。本田や長友が「ワールドカップで優勝する」と言ってくれるのは頼もしい限りなのですが、カンタンなことではないのもまた事実。
本命はやはりブラジル。王国であり開催国でもあるゆえ、これまで入念なチームづくりが図られてき、成熟のときを迎えたという印象です。各ポジションを見てもワールドクラスの選手が顔を並べており、盤石とも言える状態にあるよう。懸念されるのはワールドカップ反対の暴動。自国開催にもかかわらずネガティブな声が聞こえるというのは小さくないマイナスイメージですが、1998フランス大会のときのように、勝ち上がっていけば国内の雰囲気も変わってくるんじゃないか、とも。
対抗は悩みましたが、やはりアルゼンチンか。メッシ、アグエロ、イグアインを要し、マスチェラーノやディ・マリアらが中盤を引き締める陣容はまばゆいばかり。特に前線の3人は、2002日韓大会で優勝したブラジルの3R(トリプルアール/ロナウド、リバウド、ロナウジーニョの3FW)をほうふつさせます。今大会にかけるメッシの意気込みも相当なものと聞きますし、南米開催で彼らが奮起しないわけがない。
大穴といったら失礼ですが、南米開催ながらこれまでの定説に風穴を空けてくれることを期待してドイツ押し。ここ数年のブンデスリーガの飛躍は目覚ましいものでしたが、ラーム、シュバインシュタイガー、クロース、ポドルスキー、ゲッツェ、ロイス、エジル、ノイアーといった国産選手の成長がそれを支えていたと言っていいでしょう。鉄板ではありますが、今のドイツサッカーはかなりスペクタクルなものに仕上がっていますからね。
そして、優勝国以上にワクワクしてしまうのがダークホースとして躍動する国の存在です。「ワールドカップをかき回して欲しい!」という個人的欲望から言えば、期待をしているのはベルギー、コロンビア、クロアチアあたりでしょうか。特に若くて勢いがあるベルギーには、ベスト4ぐらいまで突っ走ってきてもらいたいところ。1994年アメリカ大会のスウェーデン、1998年フランス大会のクロアチア、2002年日韓大会のトルコ、2006年ドイツ大会のポルトガル、2010年南アフリカ大会のウルグアイと、フレッシュなダークホースは大体ベスト4まで勝ち残っているもの。個人的には「そのまま優勝しちゃえ!」とか思ったりしますが(笑)。
得点王争いも興味深いポイントですね。近年は“9番的ストライカー”と呼ばれる人種が減少傾向で、ドイツやスペインなどのように“ゼロトップシステム”という古典的なフォワードを起用しないチームが増えてきています。そんななか、誰が得点王に輝くのか。ちなみに優勝国から得点王が生まれたのはここ数十年で一度きりで(2002年日韓大会のロナウド/ブラジル優勝)、優勝候補国にも有能なストライカーはいますが、ロナウド(ポルトガル)やカバーニ、スアレス(ともにウルグアイ)、ファルカオ(コロンビア)、ジエゴ・コスタ(スペイン)、バロテッリ(イタリア)など注目度の高い選手がずらり揃っています。1994年アメリカ大会のサレンコ(ロシア)みたいな意外性のあるストライカーの出没があると、大会も一気に盛り上がりそうですね。
大会を制する国の戦い方が、その後4年間のトレンドをつくるとも言われています。優勝国予想をしつつ、本大会観戦時は各国の試合展開を楽しみたいと思います。
2014年6月6日金曜日
最先端から加速するイタリアンバイク
2014年6月5日(木)、東京・新木場のスタジオコーストにて催されたドゥカティジャパン主催のイベント「Monster 1200 National Launch」にて、最新モデル「モンスター1200」および「モンスター1200S」が発表されました。また株式会社カプコンの人気ゲームソフト「モンスターハンター」とコラボレーションしたモンスター1200 モンスターハンターバージョンも発表されるなど、かつてないほど大きな話題を呼ぶイベントとなりました。
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Monster1200 × Monster Hunter |
Monster1200 × Monster Hunter |
モーターサイクル業界からの視点という意味で言えば、こうしたドゥカティの試みは革新的。最近では熊本県のゆるキャラ「くまモン」とコラボレーションしたバイクが登場するなど、免許を持っておらずバイクというものに関心が持てていない一般の人に向けて、こうしたアプローチをするというのは大きな意味を持っています。やはり“バイクに乗る”というのは、実際に取り組むとなるとハードルは低くなく、それゆえ一般の方々との温度差もかなりあるからです。
例えば400cc以下のバイクに乗るとした場合、「免許を取る」「バイクを買う」「必要な用品(ヘルメットなど)を買う」「置き場所を考える」といったことが必要になってきます。最初の三つに取り組むのでもかなりのお金と労力を要するのは想像に難くないかと思います。これがドゥカティなど大型バイクともなると、さらに大きな力が求められるわけです。
「バイクは危険な乗り物」と言われますが、おっしゃるとおり。クルマと比べれば安全性という点で大きな差があります。しかし、モーターサイクルに乗ることでしか味わえない快感や感動がそこには存在します。それを知るためには実際に乗るのが一番ですが、“乗る”というところにたどり着くにはキッカケが必要。もちろん乗るようになってから学ぶべきことは多々ありますが、キッカケを経てモーターサイクルに興味を持ってもらい、その楽しさを知ってもらいたいと常々思っています。そういう意味で、今回のドゥカティのプロモーションは、企業として大きく評価されていい試みだと思うのです。
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ゲストとして、永井 大さんと釈 由美子さんが登場 |
DUCATI Monster 1200S |
「もっと多くの人に、モーターサイクルに触れてもらえる機会を持っていただきたい」という情熱がひしひしと伝わってきた今回のドゥカティ プレスカンファレンス。今後、さらに大きな試みを用意しているということで、非常に大きな期待を抱いてしまうところです。これからもドゥカティの革新的な動きには注目していきたいですね。
2014年6月2日月曜日
バイク買取業者の影は盗難の警告
先日、バイク盗難の防止用製品を手がけるメーカーの知り合いから連絡をもらいました。「多摩など東京西部方面で、バイク盗難事件が起こっている」とのこと。相談件数の多さから、多摩地区まで話を聞きに行ったそうです。
「夜になると極端に人通りが少なくなるから、窃盗グループからすれば格好の作業場。これは狙われるよなぁ、という環境だった」
何年も前からメーカーとしてバイク盗難防止のための製品づくりや活動に従事してこられた方で、今も茨城県警などと共同で四輪・二輪の防犯活動を展開されています。そんな経験豊富な御仁が、パっと見て分かるほど“盗られやすい”環境と言われると、縁遠い場所とはいえ背筋に寒いものが走るよう。
特に気になったのが、「バイク買取業者の姿」だと言います。
「ご不要になったオートバイなどございましたら……」というくだりで住宅街をまわる軽トラックの存在を思い出される方も多いかと思います。あれはいわゆる一般的な買取業者ですが、その昔、「ああやってバイクの有無を確認しているんだ」なんてバイク盗難に関する都市伝説のような噂が広まったこともありました。なもんで、一時期は拡声器でその文句が聞こえると、「このエリアが狙われている!?」なんて警戒心を働かせたものです。ええ、未だ都市伝説の域を出ておりませんが。
バイクオーナーの方に特にご注意いただきたいのは、“バイク買取の告知ビラ”です。ある日、家に帰ると自分のバイクのハンドル部分に「あなたのオートバイ、高く買い取ります!」という10センチ四方ぐらいのビラが輪ゴムで括り付けられてあって、不愉快な思いをした……という経験、お持ちのオーナーさんは多いかと思います。
あれこそ“バイク盗難チェック”の証です。
基本的にあんなビラを括り付けられて、気分を害さないわけがありません。当然ながらオーナーはそのビラを引っぺがすわけですが、窃盗グループは"括り付けてから取り除かれるまでの期間”または“取り除かれないままのバイク”をチェックしているのです。
取り除かれないままなら、オーナーがそのバイクに対して関心度が低いことを示しているわけで、多少の物音や普段と違うことが発生しても、動いてくることはありません。逆に取り除かれる期間が短いということは、オーナーが頻繁に様子を見に来ることの証拠なので、狙いをつけたとしても優先順位は下がるでしょう。
冒頭の御仁が多摩地区でリサーチをしたところ、このテのビラがいくつも見受けられたと言います。すなわち、現在バイク窃盗グループの動きは東京都内、主に西方面で動き出していると見て良いでしょう。また、狙われているのは最近多発しているハーレーダビッドソン等に限らず、国産旧車などもターゲットになっている模様。東京西部という言い方をしていますが、東京都全域そして神奈川県含め、おそらく窃盗グループの活動範囲だと思われるので、このエリアにお住まいの方はご注意ください。
いずれにしても、このビラが自身の愛車に付いていた際は、警戒値を最大限にまで上げていただきたいです。仮に何も起こらなかったとしても、“自分のバイクが無事な日々を送ること”が重要なのであって、警戒心はどれだけ高めたとしても損をすることはありません。
「夜になると極端に人通りが少なくなるから、窃盗グループからすれば格好の作業場。これは狙われるよなぁ、という環境だった」
何年も前からメーカーとしてバイク盗難防止のための製品づくりや活動に従事してこられた方で、今も茨城県警などと共同で四輪・二輪の防犯活動を展開されています。そんな経験豊富な御仁が、パっと見て分かるほど“盗られやすい”環境と言われると、縁遠い場所とはいえ背筋に寒いものが走るよう。
特に気になったのが、「バイク買取業者の姿」だと言います。
「ご不要になったオートバイなどございましたら……」というくだりで住宅街をまわる軽トラックの存在を思い出される方も多いかと思います。あれはいわゆる一般的な買取業者ですが、その昔、「ああやってバイクの有無を確認しているんだ」なんてバイク盗難に関する都市伝説のような噂が広まったこともありました。なもんで、一時期は拡声器でその文句が聞こえると、「このエリアが狙われている!?」なんて警戒心を働かせたものです。ええ、未だ都市伝説の域を出ておりませんが。
バイクオーナーの方に特にご注意いただきたいのは、“バイク買取の告知ビラ”です。ある日、家に帰ると自分のバイクのハンドル部分に「あなたのオートバイ、高く買い取ります!」という10センチ四方ぐらいのビラが輪ゴムで括り付けられてあって、不愉快な思いをした……という経験、お持ちのオーナーさんは多いかと思います。
あれこそ“バイク盗難チェック”の証です。
基本的にあんなビラを括り付けられて、気分を害さないわけがありません。当然ながらオーナーはそのビラを引っぺがすわけですが、窃盗グループは"括り付けてから取り除かれるまでの期間”または“取り除かれないままのバイク”をチェックしているのです。
取り除かれないままなら、オーナーがそのバイクに対して関心度が低いことを示しているわけで、多少の物音や普段と違うことが発生しても、動いてくることはありません。逆に取り除かれる期間が短いということは、オーナーが頻繁に様子を見に来ることの証拠なので、狙いをつけたとしても優先順位は下がるでしょう。
冒頭の御仁が多摩地区でリサーチをしたところ、このテのビラがいくつも見受けられたと言います。すなわち、現在バイク窃盗グループの動きは東京都内、主に西方面で動き出していると見て良いでしょう。また、狙われているのは最近多発しているハーレーダビッドソン等に限らず、国産旧車などもターゲットになっている模様。東京西部という言い方をしていますが、東京都全域そして神奈川県含め、おそらく窃盗グループの活動範囲だと思われるので、このエリアにお住まいの方はご注意ください。
いずれにしても、このビラが自身の愛車に付いていた際は、警戒値を最大限にまで上げていただきたいです。仮に何も起こらなかったとしても、“自分のバイクが無事な日々を送ること”が重要なのであって、警戒心はどれだけ高めたとしても損をすることはありません。
B'z稲葉浩志のソロ曲『Stay Free』ロケ地解析
日本を代表する人気ロックバンド B'z。僕は『love me, I love you』(17作めシングル/1995年7月7日リリース)からの大ファンで、かれこれ20年近い付き合いになります。結成が1988年と、その活動も26年めを迎え、ギタリスト松本隆弘さんは53歳、ヴォーカリスト稲葉浩志さんは49歳に。そんな歳を感じさせない精力的な活動にはただただ感心させられるばかり。
そんなB'zですが、昨年からそれぞれソロ活動に専念。このふたりに関しては「ソロ活動=解散説浮上」の構図が成り立たないほど仲が良いのですが、興味深かったのがヴォーカリスト稲葉浩志さんのコト。ソロシングル『Stay Free』は作品としても素晴らしいのですが、特に「ええぇ!」と驚かされたのがPV(プロモーションビデオ)でした。
PVが流れるなか、稲葉さんがバイクでひたすら走り続けるのです。ライダーとして、B'zファンとして、そしてモーターサイクル業界のメディアとして、これは驚愕の作品と言えるもの。それぞれポイントを挙げながらご紹介させていただきます。
【Motorocycle】
もう、信じられないのひとこと。ベースは1972年式 MVアグスタ 750S。“バイクのワールドカップ”ロードレース世界選手権(現在のMotoGP)で数々のタイトルに輝いた名門メーカーで、この750Sはレーサーマシンの750cc並列4気筒搭載モデル。一台数百万円を超える“至高のバイク”で、この世に何台とありません。
そしてもうひとつの“信じられない”が、このバイクをカスタムした人。アメリカに居を構えるカスタムショップ chabott engineering(チャボエンジニアリング)の日本人ビルダー木村信也さん。文字どおり日本を代表するアーティストとも言える方で、僕らモーターサイクル業界で「彼を知らない人間はモグリ」と言っていいほどの著名な人物。それこそ、ブラッド・ピットやディビッド・ベッカムのバイクを手がけるビルダーとして知られているのです。そんな木村さんが手がけたMVアグスタ 750Sのカフェレーサー“blue-one”。世界の名だたるビルダーも注目する彼の一台、まさか稲葉さんが所有しているとは。しかも、それに乗ってPVって! ぶっちゃけ、これ一台1,000万円以上するはず……。
よくよく調べると、B'zのファンクラブ会報誌「B'z Party」のなかで、稲葉さんが“もっとも尊敬する人物”として木村さんの名を挙げていたそうです。アメリカに赴いた際は、彼の工房にも顔を出しているとか。確かに10数年前、まだ日本にいた木村さんにヴィンテージハーレーのカスタム依頼を出しているんです。心の深いところに入り込む言葉を奏でる稲葉さん、きっと木村さんのなかの“何か”が強烈に刺さったんでしょうね。
余談ですが、その10数年前に稲葉さんからオーダーを受けた当時の木村さん、日本のポップミュージックにまったく感心がなかったため、直後のカスタムショーで仲間のビルダーに「なぁ、“びーず”って知ってるか?」と聞いていたとか。聞かれた面々も「さぁ?」という感じで、今僕がバイクの面倒を見てもらっている大阪のトランプサイクルの長岡守さんだけが「おい! それB'zやろ!」とツッコんだと聞きます(笑)。
超レアバイクをベースに、世界最高峰のカスタムビルダーが手がけたフルカスタム カフェレーサー。これだけで、このPVに登場しているバイクがどれだけスゴいものか、お分かりいただけたかと思います。
【Location】
主に東京都内のハイウェイと一般道で、とりわけモーターサイクル業界でも多用する撮影スポットが見受けられました。細かいところはさておき、大きく分けると、「レインボーブリッジ」「ゲートブリッジ」「首都高速道路」「大井埠頭」というところ。
▼首都高速道路
首都高は、撮影班(カメラマンを載せたサポートカー)と環状線をぐるぐるを走り回り、前から、そして後ろからの走行映像を撮ってから、流れで中央道へ向かう新宿線へと入っていったんじゃないでしょうか。普段日中だと首都高は渋滞しますから、まわりのクルマが少ないところを見ると、すっごい早朝にロケをやったのか、人が少ない大型連休に行ったのか、ってところでしょうか(ムービーのエフェクトでクラシカルにしているので、日中というところしか分かりません)。
▼レインボーブリッジ
そしてレインボーブリッジとゲートブリッジ。こちらはド定番とも言える場所。特にレインボーブリッジは、首都高側を走れば景観が良いですし、一般道側ならちょうど良いカーブを描いているので、どちらも画になるんです。バイク雑誌やウェブのバイク記事の走行カットを見ると、レインボーブリッジが多用されているのに気付くかと思います。どちらも交通量が多い道ですので、タイミング次第ですね。
▼ゲートブリッジ
ゲートブリッジは、道自体はストレートながら、都心とは思えないスカっと抜けた画(え)が撮れるスポット。僕もモーターサイクル誌等の撮影で用いることが多い場所なので、見た瞬間に「あ!」と気付いちゃいました。潮風がダイレクトに吹きつけるところなので、風が強い日はバイクで走るのが若干怖かったりしますが、片方に東京湾が、もう片方に東京の街並みが見えながらのライディングが楽しめるので、ここを走るライダーも多く見かけます。
▼大井埠頭
お台場とトンネルでつながる大井埠頭でも走行撮影がされていますね。スチールだとパッと見たときの背景がイマイチなんですが、こうしてイメージに振った映像として見ると、コンテナ群のなかを走るバイク……という感じで良い意味での殺伐感があると思います。“大都会をバイクで駆け抜ける”というテーマのなかの一枚としては面白い画ですよね。
僕もモーターサイクルに関するムービーを撮影&編集することがあるのですが、撮影班を組む大変さはもちろん、何が難しいかって、編集するうえで必要になる“音楽”なんです。最近はフリーの音源(有料/無料とも)がネット上で手に入るようになってきましたが、イメージ性の強いムービーだと、その展開に合ったサウンドが入っていないと、仕上がったときに違和感が残るのです。
そういう意味で言えば、この『Stay Free』のPVは、そのサウンドありきでつくられているから、作り手側からすればイメージは沸きやすいですね。稲葉さんが登場し、稲葉さん(ソロ)のサウンドが奏でられ、稲葉さんが敬愛する人物が手がけたバイクが登場し、そんな稲葉さんのイメージをメインにまとめられている……いわば“稲葉浩志さんによるフルプロデュースムービー”というもの。バイクがカッコいい、モデルがカッコいい、サウンドもカッコいいと、限られた予算のなかでしこしこムービー撮影をする人間からしたら、すべて“反則技”以外のなにものでもありませんが(笑)。
そんな稲葉浩志さんのソロ曲『Stay Free』PV、こういう舞台背景なんかを知ったうえで見ると、また違った新鮮みがあるかも……?
そんなB'zですが、昨年からそれぞれソロ活動に専念。このふたりに関しては「ソロ活動=解散説浮上」の構図が成り立たないほど仲が良いのですが、興味深かったのがヴォーカリスト稲葉浩志さんのコト。ソロシングル『Stay Free』は作品としても素晴らしいのですが、特に「ええぇ!」と驚かされたのがPV(プロモーションビデオ)でした。
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稲葉浩志 ソロ『Stay Free』PVのワンシーン |
【Motorocycle】
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[MV Agusta 750S] |
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Shinya Kimura / chabott engineering |
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blue-one |
余談ですが、その10数年前に稲葉さんからオーダーを受けた当時の木村さん、日本のポップミュージックにまったく感心がなかったため、直後のカスタムショーで仲間のビルダーに「なぁ、“びーず”って知ってるか?」と聞いていたとか。聞かれた面々も「さぁ?」という感じで、今僕がバイクの面倒を見てもらっている大阪のトランプサイクルの長岡守さんだけが「おい! それB'zやろ!」とツッコんだと聞きます(笑)。
超レアバイクをベースに、世界最高峰のカスタムビルダーが手がけたフルカスタム カフェレーサー。これだけで、このPVに登場しているバイクがどれだけスゴいものか、お分かりいただけたかと思います。
【Location】
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撮影ポイント |
▼首都高速道路
首都高は、撮影班(カメラマンを載せたサポートカー)と環状線をぐるぐるを走り回り、前から、そして後ろからの走行映像を撮ってから、流れで中央道へ向かう新宿線へと入っていったんじゃないでしょうか。普段日中だと首都高は渋滞しますから、まわりのクルマが少ないところを見ると、すっごい早朝にロケをやったのか、人が少ない大型連休に行ったのか、ってところでしょうか(ムービーのエフェクトでクラシカルにしているので、日中というところしか分かりません)。
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左は谷町JCT、右は首都高 都心環状線 飯倉〜谷町間のトンネルですね |
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首都高 新宿線を八王子方面に向かっているよう |
そしてレインボーブリッジとゲートブリッジ。こちらはド定番とも言える場所。特にレインボーブリッジは、首都高側を走れば景観が良いですし、一般道側ならちょうど良いカーブを描いているので、どちらも画になるんです。バイク雑誌やウェブのバイク記事の走行カットを見ると、レインボーブリッジが多用されているのに気付くかと思います。どちらも交通量が多い道ですので、タイミング次第ですね。
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首都高 レインボーブリッジ |
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左はレインボーブリッジの一般道側でしょうか。右は首都高 芝浦PAへの入口 |
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ゲートブリッジ |
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ゲートブリッジの若洲側 |
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ゲートブリッジ 若洲側の交差点。ここでコーナーを曲がる稲葉さんが二度登場 |
お台場とトンネルでつながる大井埠頭でも走行撮影がされていますね。スチールだとパッと見たときの背景がイマイチなんですが、こうしてイメージに振った映像として見ると、コンテナ群のなかを走るバイク……という感じで良い意味での殺伐感があると思います。“大都会をバイクで駆け抜ける”というテーマのなかの一枚としては面白い画ですよね。
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大井埠頭のコンテナ群。左側の画は、おそらくGoProで撮影したものでしょう(笑) |
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大井埠頭〜台場をつなぐトンネル。右下の場所は、ちょうど台場側に出てくるところ |
僕もモーターサイクルに関するムービーを撮影&編集することがあるのですが、撮影班を組む大変さはもちろん、何が難しいかって、編集するうえで必要になる“音楽”なんです。最近はフリーの音源(有料/無料とも)がネット上で手に入るようになってきましたが、イメージ性の強いムービーだと、その展開に合ったサウンドが入っていないと、仕上がったときに違和感が残るのです。
そういう意味で言えば、この『Stay Free』のPVは、そのサウンドありきでつくられているから、作り手側からすればイメージは沸きやすいですね。稲葉さんが登場し、稲葉さん(ソロ)のサウンドが奏でられ、稲葉さんが敬愛する人物が手がけたバイクが登場し、そんな稲葉さんのイメージをメインにまとめられている……いわば“稲葉浩志さんによるフルプロデュースムービー”というもの。バイクがカッコいい、モデルがカッコいい、サウンドもカッコいいと、限られた予算のなかでしこしこムービー撮影をする人間からしたら、すべて“反則技”以外のなにものでもありませんが(笑)。
そんな稲葉浩志さんのソロ曲『Stay Free』PV、こういう舞台背景なんかを知ったうえで見ると、また違った新鮮みがあるかも……?
2014年5月30日金曜日
代表チームのユニフォームは民族衣装です
もはや恒例行事となっているワールドカップ本番に挑むおニューユニフォームお披露目会。日本のみならず、各国ともこぞって新デザインのものをドロップしてきますね。最近はアディダスやナイキの二大勢力とサプライヤー契約を結んでいる国が多く、どちらもテンプレート化したものをベースに、今までどおりのデザインを取り入れたホームユニフォーム、そして今までとはちょっと違った切り口にしたアウェイユニフォームを取り入れるのがトレンドになっています。
日本代表もアディダスと契約していることから、ご多分に漏れずこのトレンドに乗っかっていますね。基本的にホームが青一色のシャツに対し、アウェイは真っ白なものでした。北京五輪のときは、中央に燃えさかる八咫烏(日本サッカー協会のシンボル)が描かれた真っ赤なアウェイユニフォームが話題を呼びました。八咫烏は余計だけど、真っ赤なユニフォーム、僕は結構アリでした。そもそも、僕がサッカー日本代表というものを意識して見るようになったのが1990年頃で、そのときのホームユニフォームは真っ赤だったんです。まぁ、お隣りの中国や韓国のユニフォームが赤いので、いろいろ面倒ではありますが。
さて、今回の2014年ワールドカップ ブラジル大会に挑む日本代表のユニフォーム、とりわけアウェイユニフォームについて賛否両論のようです。
……まぁ、これはないわな。
僕自身もそうですが、最近のトレンドで言えばユニフォームのデザインはシンプル イズ ベスト。スパイクはというと真逆でだんだんド派手になっていっていますが、今はテンプレート化したものにメインカラーありきで、差し色で1〜2色使うぐらい。それも、本当の添える程度。そういう意味で、日本も世界の潮流に合わせて作っているということですね。
ただ、この色はちょっと……(笑)。
イギリスの某紙では、
「日本代表チームは、ブラジルのスタジアム建設がまだ完全には終了していないという噂を真剣に受け取りすぎてしまったがために、工事現場で使用されるような蛍光色をユニフォームに取り入れたらしい」
と皮肉たっぷりの評価とともに、5点満点中、1点という採点。まぁ、そう言われても仕方ないですね。
シンプルで美しいのは、開催国ブラジルやフランス、イングランドなど。
気品というか、センスというか、その国らしさが出ています。
そう、代表チームのユニフォームって、民族衣装だと思うんです。最近だとプーマが契約をしているアフリカ諸国のユニフォームは、ポイントとしてそのお国柄をイメージした模様を入れたりしているんですよね。イタリアなんかはアズーリ(青)ってイメージが完全に定着しているから、あの真っ青なユニフォームで登場しただけで「おぉ、アズーリだ……」という畏敬の念が浮かんできます(昔はメーカーロゴすら入れない徹底ぶりだったのですが)。ブラジルやドイツ、スペイン、アルゼンチン、イングランドなどなど、それぞれが“らしい”デザインでまとめ、長年愛用してきたことから“その国としてのイメージ”が定着しているのでしょう。
最近僕が「あぁ、いいなぁ」と思ったのはベルギー。
スイスのメーカー Burrdaが手がけたもので、ホーム/アウェイ/サードの3着で、国旗の3色を表すという面白い試み。元々真っ赤なユニフォームがホームのベルギーだったので、この組み合わせは面白い発想から生まれた好例だと思います。
翻って日本ですが、5大会連続でワールドカップに出場しているということで、すでに青いイメージも……と思われがちですが、そこは日本人らしく謙虚に、「もっと良い戦いぶりを見せて、“日本と言えば青いユニフォーム”と覚えてもらおう」とすればいいんじゃないでしょうか。ちなみにユニフォームが青いのは、四方を真っ青な海に囲まれた島国であることを表現しており、エンブレムの八咫烏は日本神話に出てくる神の使いで、日本を世界の頂点に導いてくれる水先案内人としての役割を表現しているそう。
で、この蛍光イエローですが、何の脈絡もない。日本に蛍光イエローで表現すべき名物または名産がありましたでしょうか。工事現場の作業着というのはいささか嫌みが過ぎますが、一方で採用した側(日本)にも根拠と言える理由がない。
本当に理由はないのか? と思ってアディダスジャパンのサイトを見に行ったら……書いていました。曰く、
「開催国ブラジルのカラーであるイエローを全面にあしらうことで、“開催国ブラジルの人々にも、サッカー日本代表を応援して欲しい”という想いを表現しています」
と……。呆れてものが言えません。開催国の顔色伺いで自国のユニフォームカラーを決めるとは、どこまで媚び諂ってんだ、と。要するに、理由づけは後からのもので奇をてらいたかったのでしょう。もう安直すぎて、言葉がありません。こんな決め方をしているから、代表チームもロクに強化されないんじゃないのかな。日本サッカー協会には、日本らしい謙虚さを持ち合わせた人間がいないのでしょう。実に残念です。
まぁ、これでブラジルの地で惨敗でもしようものなら、この蛍光イエローは二度と採用されないでしょうからそれもまたヨシ、かもしれません。
ちなみに、個人的には代表チームのサプライヤーはミズノかアシックスに務めていただきたいと常々思っております。それぞれメイド イン ジャパンの名に恥じないメーカーですし、ブランド製の高いサッカー日本代表チーム(男子、女子とも)のバックアップとなれば、我が国産業の促進と経済発展にもつながります。何が悲しくて、自国の代表チームを使ってドイツを儲けさせなきゃいけないのか正直理解できない。
今回のブラジル大会を機に、日本代表のサプライヤーが変わるという噂がまことしやかにあがっており、ナイキとミズノが有力候補だそうです。アメリカを儲けさせてもTPPで喰いものにされるのを手助けするだけですので、なんとかミズノに頑張ってもらいたい。今まで一度も日本代表のユニフォームを買ったことがない僕も、ミズノなら買っちゃうかも。
日本代表もアディダスと契約していることから、ご多分に漏れずこのトレンドに乗っかっていますね。基本的にホームが青一色のシャツに対し、アウェイは真っ白なものでした。北京五輪のときは、中央に燃えさかる八咫烏(日本サッカー協会のシンボル)が描かれた真っ赤なアウェイユニフォームが話題を呼びました。八咫烏は余計だけど、真っ赤なユニフォーム、僕は結構アリでした。そもそも、僕がサッカー日本代表というものを意識して見るようになったのが1990年頃で、そのときのホームユニフォームは真っ赤だったんです。まぁ、お隣りの中国や韓国のユニフォームが赤いので、いろいろ面倒ではありますが。
さて、今回の2014年ワールドカップ ブラジル大会に挑む日本代表のユニフォーム、とりわけアウェイユニフォームについて賛否両論のようです。
……まぁ、これはないわな。
僕自身もそうですが、最近のトレンドで言えばユニフォームのデザインはシンプル イズ ベスト。スパイクはというと真逆でだんだんド派手になっていっていますが、今はテンプレート化したものにメインカラーありきで、差し色で1〜2色使うぐらい。それも、本当の添える程度。そういう意味で、日本も世界の潮流に合わせて作っているということですね。
ただ、この色はちょっと……(笑)。
イギリスの某紙では、
「日本代表チームは、ブラジルのスタジアム建設がまだ完全には終了していないという噂を真剣に受け取りすぎてしまったがために、工事現場で使用されるような蛍光色をユニフォームに取り入れたらしい」
と皮肉たっぷりの評価とともに、5点満点中、1点という採点。まぁ、そう言われても仕方ないですね。
シンプルで美しいのは、開催国ブラジルやフランス、イングランドなど。
気品というか、センスというか、その国らしさが出ています。
そう、代表チームのユニフォームって、民族衣装だと思うんです。最近だとプーマが契約をしているアフリカ諸国のユニフォームは、ポイントとしてそのお国柄をイメージした模様を入れたりしているんですよね。イタリアなんかはアズーリ(青)ってイメージが完全に定着しているから、あの真っ青なユニフォームで登場しただけで「おぉ、アズーリだ……」という畏敬の念が浮かんできます(昔はメーカーロゴすら入れない徹底ぶりだったのですが)。ブラジルやドイツ、スペイン、アルゼンチン、イングランドなどなど、それぞれが“らしい”デザインでまとめ、長年愛用してきたことから“その国としてのイメージ”が定着しているのでしょう。
最近僕が「あぁ、いいなぁ」と思ったのはベルギー。
スイスのメーカー Burrdaが手がけたもので、ホーム/アウェイ/サードの3着で、国旗の3色を表すという面白い試み。元々真っ赤なユニフォームがホームのベルギーだったので、この組み合わせは面白い発想から生まれた好例だと思います。
翻って日本ですが、5大会連続でワールドカップに出場しているということで、すでに青いイメージも……と思われがちですが、そこは日本人らしく謙虚に、「もっと良い戦いぶりを見せて、“日本と言えば青いユニフォーム”と覚えてもらおう」とすればいいんじゃないでしょうか。ちなみにユニフォームが青いのは、四方を真っ青な海に囲まれた島国であることを表現しており、エンブレムの八咫烏は日本神話に出てくる神の使いで、日本を世界の頂点に導いてくれる水先案内人としての役割を表現しているそう。
で、この蛍光イエローですが、何の脈絡もない。日本に蛍光イエローで表現すべき名物または名産がありましたでしょうか。工事現場の作業着というのはいささか嫌みが過ぎますが、一方で採用した側(日本)にも根拠と言える理由がない。
本当に理由はないのか? と思ってアディダスジャパンのサイトを見に行ったら……書いていました。曰く、
「開催国ブラジルのカラーであるイエローを全面にあしらうことで、“開催国ブラジルの人々にも、サッカー日本代表を応援して欲しい”という想いを表現しています」
と……。呆れてものが言えません。開催国の顔色伺いで自国のユニフォームカラーを決めるとは、どこまで媚び諂ってんだ、と。要するに、理由づけは後からのもので奇をてらいたかったのでしょう。もう安直すぎて、言葉がありません。こんな決め方をしているから、代表チームもロクに強化されないんじゃないのかな。日本サッカー協会には、日本らしい謙虚さを持ち合わせた人間がいないのでしょう。実に残念です。
まぁ、これでブラジルの地で惨敗でもしようものなら、この蛍光イエローは二度と採用されないでしょうからそれもまたヨシ、かもしれません。
ちなみに、個人的には代表チームのサプライヤーはミズノかアシックスに務めていただきたいと常々思っております。それぞれメイド イン ジャパンの名に恥じないメーカーですし、ブランド製の高いサッカー日本代表チーム(男子、女子とも)のバックアップとなれば、我が国産業の促進と経済発展にもつながります。何が悲しくて、自国の代表チームを使ってドイツを儲けさせなきゃいけないのか正直理解できない。
今回のブラジル大会を機に、日本代表のサプライヤーが変わるという噂がまことしやかにあがっており、ナイキとミズノが有力候補だそうです。アメリカを儲けさせてもTPPで喰いものにされるのを手助けするだけですので、なんとかミズノに頑張ってもらいたい。今まで一度も日本代表のユニフォームを買ったことがない僕も、ミズノなら買っちゃうかも。
ブラジル後は、日本人監督の起用を
本大会に向けて23名のメンバーが飛び立った今、グダグダ言っても仕方ありません。あとは彼らがベストの戦いを見せてくれ、そして祈るのみ。ただ、ワールドカップを前に、これだけは言っておきたいと思いました。日本代表監督 アルベルト・ザッケローニについての所感です。
「4年間も率いてきて、こんなチームしかつくれないのか」
それが、僕のザッケローニ評……でした。ベースは2010年南アフリカ大会のときと変わっておらず、本田圭祐や香川真司など個人レベルでのベースアップ(海外でのキャリア等々)だけが唯一の上乗せ。柿谷や大久保を招集したのも、行き詰まった感があった得点力アップのために取ったやむなしな選択肢で、僕はザッケローニが彼らを正当に評価したとは思っていません。だったら、同じように国内で結果を出していた佐藤寿人(広島)などのJリーガーをきちんとチェックしろよ、と思うからです。
「じゃあ、あんたは誰がベストな監督だと思うんだ?」と言われれば、迷わずイビチャ・オシムを挙げます。「日本を日本化する」と宣言し、招集した選手に求めたのは高いインテリジェンス。「日本人はコレクティブでテクニックに秀でている。それが90分持続できれば、十分世界と渡り合える」という信念のもと、当時さほど名が知られていなかったJリーガーを多数起用。海外クラブに所属する“海外組”はあくまでオプションまたはプラスアルファで、土台はコンスタントに招集できるJリーガーとされました。
理論的には、もっとも正しい代表チームの強化方針だと思います。結果として、華やかな選手名が並ばない代表戦からは閑古鳥の鳴き声が聞こえ、発売と同時に売り切れると言われた代表戦チケットは当日券が出るほどに。オシムが求めるレベルの高さ(インテリジェンス)から選手が理解するまで時間がかかり、しばらくは成果もともなわないなど、シビアな時期が続きました。が、目の肥えたメディアやファンは「これ、成熟すれば最強の代表チームができるんじゃないか?」と期待に胸を膨らませ、静かに彼らの動向を見守っていました。
残念ながらオシムが脳梗塞で倒れ、奇跡的に一命は取り留めたものの、代表監督という激務は務められないと辞任。日本代表チームにおけるオシムの“日本化”は完成することがありませんでした。
ハンス・オフト、そしてイビチャ・オシムと、日本に敬意を示し、日本が世界と伍するにあたって強化せねばならないポイントを見極め、そのために心血を注いだ外国人代表監督は存在しました。その点で言えば、ザッケローニの施策は“強化”と呼ぶにはほど遠いものでしたが、一方でそうした過去の偉人と見比べ、過小評価していたところが僕にもありました。
改めて、今思います。ザッケローニはリアリストであり、プロフェッショナルだ、と。
オシムとザッケローニ、あえてこのふたりを比較するとした場合、どこが争点になるか……「その国の代表監督として、最終目的地をどこに据えているか」ではないでしょうか。オシムは、自身が退任したあともその礎となるような基盤を残すべきと考えてのチーム強化策を選んだのです。翻ってザッケローニは、4年間という契約のなかで最強のチームを作り上げ、ワールドカップにふさわしいチームを送り込むことだったと思います。
オシムは、遠い遠い日本サッカーの将来を見ていた。
ザッケローニは、2014年ブラジル大会を目標としていた。
そう見れば、改めて彼らふたりを比較すること自体がナンセンスだと思えてきたのです。当たり前のことですが、ザッケローニは別に日本に骨を埋める気はないでしょうし、“リアリスト”イタリア人らしく契約期間内での最高の仕事をこなそうとしているに過ぎません。本田や香川ら海外組を主軸としたのも、「現時点でもっともレベルが高い選手を軸とする」という極めてシンプルな論理。彼の代名詞である3-4-3システムを取り入れなかったのも、「日本人にフィットしない」と彼が判断した。それだけのことです。
オシムは、契約以上のことをしてくれたのです。彼のサッカーへの愛情は我々が推し量れない領域のもので、そこに親日家としての感情が含まれ、持てる知識と経験をすべて日本サッカーのためにつぎ込もうとしてくれました。決してザッケローニがサッカーを愛していない、日本に敬意を表していないとは言いません。単純に、ザッケローニは4年間の契約内で最高の仕事を遂行しようとした。その契約書に、“日本らしいサッカーを展開すること”“将来につながるチームづくりをすること”という項目は含まれていません。ザッケローニがそこまでしなかったからと言って、誰が責められるでしょう。
そういう意味で、オシムはアンタッチャブルな存在であり、彼ほど世界のサッカーに精通し、日本のために尽力してくれるような人材はもう出てこないと思います。オシムのサッカーが完成していれば、今の日本サッカーの姿は大きく変わっていたでしょうが、無い物ねだりをしても仕方ありません。
2010年南アフリカ大会後、代表監督の座に就任したザッケローニは4年間における職務を全うし、ブラジルでの結果にかかわらず、大会後には退任するとの発表がありました。結果がどうなるか、それは蓋を開けてみなければ分かりませんが、どのような終わり方にせよ、最後はザッケローニに謝意を示し、イタリアに凱旋して欲しいと思います。
そして、あえて今、ブラジル大会後の日本代表、そして日本サッカーというものを見据え、ひとつ提言をさせてください。
日本人指揮官の起用を求めます。
海外のクラブで活躍する選手が増え、日本人プレーヤーのレベルは数年前と比べて飛躍的に向上しています。一方で、世界のサッカーの主戦場はヨーロッパであり、日本とは飛行機で10時間以上かかるほど離れた地であることを改めて認識せねばなりません。つまり、“日本代表を強化する”という点で言えば、海外クラブ所属の選手を軸としたチームづくりでは、そのクオリティが安定することはないのです。
日本は、世界の強豪国のひとつではありません。サッカー発展途上国であり、チャレンジャーなのです。ボクシングの世界タイトルマッチに挑む挑戦者が、チャンピオンと同じような強化をしないのと同じで、「ワールドカップで優勝したい」と本気で思うなら、かの強豪国以上のトレーニングに挑まねばなりません。
日本に対して愛情を持ち、日本のために尽くせる指揮官……日本人監督しかいないのです。そして、日本の事情を鑑み、Jリーガーを中心とした代表チームの強化に腐心していただきたい。そのためには、Jリーグそのものも今まで以上に盛り上げ、強化策の一貫として見ていかねばならないでしょう。それは日本サッカー協会はもとより、サポーター、メディア、そして国民全員が取り組むべき事案です。そう、“ワールドカップでどこまで勝ち進むことができるか”ということも重要ですが、“ワールドカップに誇りある代表チームを送り込めるか”という点こそ重視せねば。それは国全体の取り組みとして必要なことだと思います。
まずは、日本人指揮官の起用という第一歩から。
「4年間も率いてきて、こんなチームしかつくれないのか」
それが、僕のザッケローニ評……でした。ベースは2010年南アフリカ大会のときと変わっておらず、本田圭祐や香川真司など個人レベルでのベースアップ(海外でのキャリア等々)だけが唯一の上乗せ。柿谷や大久保を招集したのも、行き詰まった感があった得点力アップのために取ったやむなしな選択肢で、僕はザッケローニが彼らを正当に評価したとは思っていません。だったら、同じように国内で結果を出していた佐藤寿人(広島)などのJリーガーをきちんとチェックしろよ、と思うからです。
「じゃあ、あんたは誰がベストな監督だと思うんだ?」と言われれば、迷わずイビチャ・オシムを挙げます。「日本を日本化する」と宣言し、招集した選手に求めたのは高いインテリジェンス。「日本人はコレクティブでテクニックに秀でている。それが90分持続できれば、十分世界と渡り合える」という信念のもと、当時さほど名が知られていなかったJリーガーを多数起用。海外クラブに所属する“海外組”はあくまでオプションまたはプラスアルファで、土台はコンスタントに招集できるJリーガーとされました。
理論的には、もっとも正しい代表チームの強化方針だと思います。結果として、華やかな選手名が並ばない代表戦からは閑古鳥の鳴き声が聞こえ、発売と同時に売り切れると言われた代表戦チケットは当日券が出るほどに。オシムが求めるレベルの高さ(インテリジェンス)から選手が理解するまで時間がかかり、しばらくは成果もともなわないなど、シビアな時期が続きました。が、目の肥えたメディアやファンは「これ、成熟すれば最強の代表チームができるんじゃないか?」と期待に胸を膨らませ、静かに彼らの動向を見守っていました。
残念ながらオシムが脳梗塞で倒れ、奇跡的に一命は取り留めたものの、代表監督という激務は務められないと辞任。日本代表チームにおけるオシムの“日本化”は完成することがありませんでした。
ハンス・オフト、そしてイビチャ・オシムと、日本に敬意を示し、日本が世界と伍するにあたって強化せねばならないポイントを見極め、そのために心血を注いだ外国人代表監督は存在しました。その点で言えば、ザッケローニの施策は“強化”と呼ぶにはほど遠いものでしたが、一方でそうした過去の偉人と見比べ、過小評価していたところが僕にもありました。
改めて、今思います。ザッケローニはリアリストであり、プロフェッショナルだ、と。
オシムとザッケローニ、あえてこのふたりを比較するとした場合、どこが争点になるか……「その国の代表監督として、最終目的地をどこに据えているか」ではないでしょうか。オシムは、自身が退任したあともその礎となるような基盤を残すべきと考えてのチーム強化策を選んだのです。翻ってザッケローニは、4年間という契約のなかで最強のチームを作り上げ、ワールドカップにふさわしいチームを送り込むことだったと思います。
オシムは、遠い遠い日本サッカーの将来を見ていた。
ザッケローニは、2014年ブラジル大会を目標としていた。
そう見れば、改めて彼らふたりを比較すること自体がナンセンスだと思えてきたのです。当たり前のことですが、ザッケローニは別に日本に骨を埋める気はないでしょうし、“リアリスト”イタリア人らしく契約期間内での最高の仕事をこなそうとしているに過ぎません。本田や香川ら海外組を主軸としたのも、「現時点でもっともレベルが高い選手を軸とする」という極めてシンプルな論理。彼の代名詞である3-4-3システムを取り入れなかったのも、「日本人にフィットしない」と彼が判断した。それだけのことです。
オシムは、契約以上のことをしてくれたのです。彼のサッカーへの愛情は我々が推し量れない領域のもので、そこに親日家としての感情が含まれ、持てる知識と経験をすべて日本サッカーのためにつぎ込もうとしてくれました。決してザッケローニがサッカーを愛していない、日本に敬意を表していないとは言いません。単純に、ザッケローニは4年間の契約内で最高の仕事を遂行しようとした。その契約書に、“日本らしいサッカーを展開すること”“将来につながるチームづくりをすること”という項目は含まれていません。ザッケローニがそこまでしなかったからと言って、誰が責められるでしょう。
そういう意味で、オシムはアンタッチャブルな存在であり、彼ほど世界のサッカーに精通し、日本のために尽力してくれるような人材はもう出てこないと思います。オシムのサッカーが完成していれば、今の日本サッカーの姿は大きく変わっていたでしょうが、無い物ねだりをしても仕方ありません。
2010年南アフリカ大会後、代表監督の座に就任したザッケローニは4年間における職務を全うし、ブラジルでの結果にかかわらず、大会後には退任するとの発表がありました。結果がどうなるか、それは蓋を開けてみなければ分かりませんが、どのような終わり方にせよ、最後はザッケローニに謝意を示し、イタリアに凱旋して欲しいと思います。
そして、あえて今、ブラジル大会後の日本代表、そして日本サッカーというものを見据え、ひとつ提言をさせてください。
日本人指揮官の起用を求めます。
海外のクラブで活躍する選手が増え、日本人プレーヤーのレベルは数年前と比べて飛躍的に向上しています。一方で、世界のサッカーの主戦場はヨーロッパであり、日本とは飛行機で10時間以上かかるほど離れた地であることを改めて認識せねばなりません。つまり、“日本代表を強化する”という点で言えば、海外クラブ所属の選手を軸としたチームづくりでは、そのクオリティが安定することはないのです。
日本は、世界の強豪国のひとつではありません。サッカー発展途上国であり、チャレンジャーなのです。ボクシングの世界タイトルマッチに挑む挑戦者が、チャンピオンと同じような強化をしないのと同じで、「ワールドカップで優勝したい」と本気で思うなら、かの強豪国以上のトレーニングに挑まねばなりません。
日本に対して愛情を持ち、日本のために尽くせる指揮官……日本人監督しかいないのです。そして、日本の事情を鑑み、Jリーガーを中心とした代表チームの強化に腐心していただきたい。そのためには、Jリーグそのものも今まで以上に盛り上げ、強化策の一貫として見ていかねばならないでしょう。それは日本サッカー協会はもとより、サポーター、メディア、そして国民全員が取り組むべき事案です。そう、“ワールドカップでどこまで勝ち進むことができるか”ということも重要ですが、“ワールドカップに誇りある代表チームを送り込めるか”という点こそ重視せねば。それは国全体の取り組みとして必要なことだと思います。
まずは、日本人指揮官の起用という第一歩から。
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