2015年1月19日月曜日

日本人として誇らしい本田圭佑のアジア審判批判

ただいまオーストラリアで開催中のサッカー・アジアカップ。大きな波紋を呼んだ本田圭佑選手の「アジアカップの審判」に関する発言と、それに対してAFC(アジアサッカー連盟)から罰金5000ドルが科せられたニュースは、大きなトピックスとして取り上げられました。

まず大前提として、「審判批判」と「元締めからの罰則or罰金」は、ヨーロッパや南米のサッカーシーンでは日常茶飯事。ジョゼ・モウリーニョ(チェルシー監督)のように、己が発言力の大きさを理解しながら審判や敵将を批判し、パフォーマンスとするキャラクターは世界的に珍しくありません。もちろん行き過ぎればFIFA(国際サッカー連盟)やUEFA(欧州サッカー連盟)から罰金を科せられることがありますが、そういうことも含めて多額のギャラを手にしていると自身で理解してやっています。ちょっと日本には馴染みのないカルチャーなので、「本田、審判批判で罰金!」みたいな見出しのインパクトが強く受け止められたように思われますが、サッカーの世界じゃよくある話です。

ただ、今回の本田選手の発言が大きな波紋を呼んだことは事実です。

なんといっても彼が所属するACミランは、世界屈指のビッグクラブ(ちょっと最近はその威光が薄れている感が否めませんが)。そこで背番号10を背負っているレギュラープレーヤーが、大事なリーグ戦から抜けてアジアNo.1を決める大会に出向いている。もちろん、それでヨーロッパのメディアの目がアジアカップに向けられるわけではありませんが、インターネットが日常となっている今、“本田圭佑の審判批判”というだけで、ヨーロッパでもネタとして取り扱われます。

アジアカップの審判のレベルが低い……長らくサッカーを観てきた人にとっては「何を今さら」というところでしょう。今大会のみならず、ワールドカップのアジア予選でもその模様ははっきり分かります。実はJリーグでも、「審判のレベルが試合に追いついていない」と言われることがあるほどで、まともなプロリーグを持たないアジア諸国に高い審判レベルを求めるのは極めて難しいこと。しかしながら、アジアの強豪国にはヨーロッパのトップリーグやビッグクラブでプレーする選手がおり、当然そのレベルの差に愕然とさせられるのです。

先の2014年ワールドカップ・ブラジル大会の開幕戦を覚えていますでしょうか。開催国ブラジルとクロアチアの試合で、日本人審判の西村雄一さんが主審としてピッチに立ち、ブラジルへ与えられたPK(結果的にこれが決勝点となる)が物議をかもしました。そう、この一幕も、「アジアの審判のレベルは低い」というレッテルの一部となっているのです。

審判の育成は、選手の育成以上に難しいもの。かつてJリーグ創世記には、ヨーロッパや南米から高レベルの審判を招聘しており、彼らとの交流や指導から日本の審判レベルは着実にアップしました。大物外国人選手や優れた審判がいることで、自ずと試合のレベルはアップし、合わせて日本人選手のレベルも格段にあがっていったのです。その逆もまた然り、選手や審判のレベルが下がれば、ゲームは停滞し、お客さんの足は遠のいてしまいます。いくら育てたいと言われても、淀んだ流れのなかで選手や審判がレベルアップするのは至極困難なこと。また、審判が試合のレベルについていけないと、危険なプレーが続発してしまう恐れがあります。あらゆる面において、試合の質をコントロールするのが審判の役割なのです。

ヨーロッパのトップリーグに身を置く本田選手は、審判のレベルが試合を左右することをよく知っています。そもそも彼らはプロのサッカー選手で、試合の内容や結果によってその後の生活が大きく変わってしまうという世界に身を置いているのです。ACミランのレギュラープレーヤーが、大事なリーグ戦を後回しにして参加している……。この事実からも、彼のアジアカップにかける意気込みは痛いほど分かりますし、彼の目標は間違いなくアジアカップ優勝でしょう。これによって、“プレワールドカップ”コンフェデレーションズカップへの出場権が得られ、日本代表はより大きな成長のための機会を得られるのです。

そこで、「アジアだから、審判のレベルが低いのは仕方ない」と済ますことはできません。おそらく本田選手は、自身の発言力がどれほどのものか理解しつつ、「それでも言わねば」と意を決して発言したに違いありません。ひいてはブラジル大会の悔しさからはじまるロシア大会への意気込みなのでしょう。

先のブラジル大会で、日本の代表として挑んだチームは、一勝もすることなくブラジルを後にしました。監督や選手を批判するのはカンタンですが、それらすべてを含めて“日本の代表”として我々が送り込んだ人たちであり、もし外国人が「日本ってブラジルで一勝もできなかったんだよね」と言ったとすると、それは代表チームにではなく、私たち日本人ひとりひとりに向けられた言葉だと理解せねばなりません。

本田選手の発言は飽くなき勝利への執念から出たものであり、僕は彼の発言を誇らしく思います。間違いなく本田選手は、“日本を背負っている”ということをしっかりと自覚した人だと改めて感じ入った次第です。改めて、アジアカップを観戦する楽しみが増えました。

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