2015年1月22日木曜日

「そろそろやめませんか」過大評価の日本代表に違和感

オーストラリアで開催中のアジアカップ2015にて、日本代表が3戦全勝の1位でグループリーグを突破しました。それも、3試合連続の完封勝利というプラスアルファ付きで。下馬評でも優勝候補の筆頭でしたから、他のライバル国は「さすが日本」と兜の緒を締め直しているところでしょう。

日本のスポーツニュースを見ても、「日本強し!」の一色。ですが、僕はそんなに騒ぐほどのこととは思っていません。確かにやや余裕を残した感のあるグループリーグ突破ではありますが、そもそも私たちが目指しているのは2018年W杯ロシア大会で、なおかつ優勝国に与えられるコンフェデレーションズカップ出場権が狙い。このぐらいのこと、やってくれなくては困ります。

ハタから見ればかなり手厳しい評価、ともすればネガティブキャンペーンみたいに見られるかもしれませんが、ここまで言う理由は、現在のチームの状態を見てのことです。GL3試合でのスターティングメンバーはすべて一緒。さらに言えば、2014年W杯ブラジル大会時のスタメンと見比べても、違っているのはFW乾選手とDF酒井選手ぐらい。監督が新たになり、帯同メンバーも入れ替えられていますが、主力メンバーはザッケローニ時代からほぼ同じ。チームとしての連携が高いのは当然のことだからです。

2006年W杯ドイツ大会で同じように惨敗した日本は、その後イビチャ・オシム氏を指揮官としました。するとオシムは、一部こそ残せど日本代表メンバーを大きくチェンジ。自身の教え子を中心に、「日本代表を“日本化”させる」というフレーズのもと、まったく新しいメンバーでこのアジアカップに挑みました。結果は4位でしたが、あそこまでメンバーを替え、イチからチームを作り直そうとしていたことを考えると、オシム氏のハートの強さにただただ感心させられるばかりでした。

前任者のチームを土台とするアギーレ監督を批判するわけではありません。そういうチームづくりも選択肢のひとつですし、どういう方針を打ち立てるかは指揮官の権限。課せられたミッションは「4年後のロシア大会で好成績をおさめる」ということですから、その模様を見させてもらうほかないわけです。

ヨーロッパのクラブで活躍するメンバーで固められた固定スタメン。3戦連続の完封勝利はお見事ですが、グループリーグ突破はノルマであり、難易度がアップする決勝トーナメントに向けたウォーミングアップと新しい可能性探しも当然してもらわねば困ります。対戦した三ヶ国に対する敬意は持ちつつも、目指している頂はまだまだ先にあることを忘れてはなりません。正直、グループリーグ突破ぐらいでメディアがいちいち騒いでいることが問題。

良い結果ばかり取り上げるのではなく、さらなる飛躍に向けた厳しい目を持つのがメディアの仕事。例えば、香川真司選手のスランプ。どうしてスタメンで起用されているのか理解できないほど周囲と噛み合っていません。チームメートのほとんどが彼を擁護していますが、先のヨルダン戦を観ても、完全に試合から消えていました。最後のゴールがなければ、彼がどんなプレーをしたのかさえ思い出せないほど。走り込めば他のポジションの選手とかぶり(なんで本田がそこにいるんだ?ってときもしばしばありましたが)、球ばなれの悪さからアタッキングサードでの連携プレーを滞らせ、そこでテンポがずれるから敵に詰め寄られる。彼のボールロストの多さと言ったらありませんでした。対戦相手が韓国やオーストラリアだったら、致命傷となるミスばかり。幸いにもグループリーグ最終戦でゴールを挙げられたので、これでひとつ吹っ切れれば、彼のなかの悪いリズムが変わるかもしれませんが、現時点ではスタメン以下、いやピッチにいることが不思議な存在です。

ディフェンスの連携もイマイチ。無失点ではありますが、中盤の底でのボールロストに連携がチグハグなところなど、相変わらずのチョンボがチラホラ。いつもの“相手にペースを合わせる悪癖”は健在で、アジアカップだから大怪我(失点)にはつながっていないものの、仮に中盤の底でのパスミスで敵にボールを奪われた際、それがネイマールやクリスティアーノ・ロナウドだったら、即失点でしょう。ボランチふたりとディフェンスの四枚は、ブラジル大会に選ばれた主力級なわけですから、「指揮官が変わったから」は言い訳になりません。トーナメント方式の大会において、強固な守備は必須項目です。ここに不安がある時点で、その実力に疑問を抱かざるを得ないのは当然のこと。

アギーレ監督の采配力にも賞賛の声があがっているようですが、僕はまったく不満です。確かに、いつも采配が後手にまわる日本代表の歴代指揮官と比べると、アギーレ監督のそれは狙いがはっきりし、タイミングも逃さないなど、まさしく“名将”の肩書きにふさわしいもの。しかし、余力があるはずのグループリーグでレギュラーメンバーを3戦使い続けたというのはどうかと思います。突破こそ決めていないものの、2戦めで王手をかけたのだから、もっとサブ組にチャンスを与えるべきだったと思うのです。この先の決勝トーナメントからは日程的にも厳しく、勝ち進むほどに余裕がなくなるので主力に頼らざるを得ません。そのうちの誰かひとりでも怪我をしたら、経験値の低いバックアッパーを使わざるを得ないのです。いまだ“ピッチの空気”を吸っていないメンバーが多数いることを思うと、不安が残る3試合でもありました。

順調に勝ち進めば、次のUAE戦の向こうにホスト国オーストラリアが待ち構えていることでしょう。優勝候補同士の一騎打ち、戦いは熾烈を極めるに違いありません。しかし、ホームの声援を背に牙をむいてくるオーストラリアと、さらに彼らを打ち負かした先の決勝戦の相手をもなぎ倒さなければ、優勝カップとコンフェデレーションズカップ出場権は手にできないのです。文字どおりの総力戦となるなかで、バックアッパーの経験値の乏しさがそこでどう出るか。アギーレ監督と日本代表チームの真価が問われるのは、ここからでしょう。

まるで優勝間違いなし!みたいな雰囲気の報道が多いですが、思っている以上に道のりは険しいのです。楽観的な報道に乗せられると本質を見失うという、ブラジル大会時の反省が活かせていない日本のスポーツメディアにはただただガッカリさせられます。選手は浮かれてはいないでしょうが、メディアを含めた周囲の環境に対して、ファンやサポーターが厳しい声をあげていかない限り、日本サッカーが強くなるのは難しいでしょう。

少なくとも今の日本サッカー、はたから見たら“井の中の蛙”以外の何ものでもありません。ブラジルで、世界との差をまざまざと見せつけられたにもかかわらず、結局アジアに戻ったら「俺たち最強!」。そろそろやめませんか、こういうの。

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