2015年1月20日火曜日

J2セレッソ大阪に残留する“サムライ”フォルランに注目

終わってみれば、J2から昇格したばかりのガンバ大阪の三冠(リーグ、ナビスコカップ、天皇杯)で幕を閉じたJリーグ。“J2から昇格したばかりの”といっても、元々強豪チームとしての素地もありましたし、J2降格だって新体制がチグハグすぎて(呂比須&セホーンの二頭体制)現場が混乱し、立て直しきれずにシーズンが終わってしまったってだけのこと。リーグ終盤の天王山と言われた浦和レッズとの試合を見れば、「内容が悪くても負けない」試合運びで浦和をいなすなど、その戦いぶりは王者にふさわしいものでした。

そんな昨年のJリーグ、開幕前にもっとも話題を呼んだのは、同じ大阪に居を構えるセレッソ大阪でした。柿谷曜一朗や山口蛍、扇原貴宏といったフレッシュなタレントを擁し、2013シーズンをリーグ4位という好成績で終了。そしてもっとも話題を呼んだのが、ディエゴ・フォルランの加入でした。現役ウルグアイ代表にして、2010年W杯南アフリカ大会の得点王&最優秀選手。ヨーロッパ各国の強豪クラブを渡り歩いた名実ともにワールドクラスのストライカーの加入は、ビッグネームがリーグ入りしなくなって久しいJリーグの中心的話題になりました。

が、結果はなんとJ2降格。まさに天国と地獄とも言える凋落ぶり。まぁ、セレッソの歴史を知る人は、「好成績で終えた翌シーズンはJ2に堕ちる」というジンクスがまた証明されただけ、と思われるでしょうが……。

柿谷のスイス移籍、チーム内の不協和音、山口の怪我離脱、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)を含んだシーズン序盤の過密スケジュール、そのレベルに対応できるだけのチーム作り……。チームが落ちぶれた要因はさまざま挙げられていますが、J2降格という結果を見れば、これらすべてを含めて、チームが未熟だったということでしょう。

なかでも最大の要因は、フォルランをしっかり活用できなかったことです。

確かにこのビッグネームは、全盛期を過ぎた感が否めません。また、周囲のサポートがあってこそ活きるのが彼のプレースタイルなのですが、チームとして“フォルランを活かす”という方向に全員の顔が向いていないような混乱っぷりでした。孤立するフォルランを見ていて、Jリーグ創世記に名古屋に加入したゲーリー・リネカー(イングランド/1986年W杯メキシコ大会得点王)を思い出した古いファン、少なくなかったのではないでしょうか。

ハマれば一撃必殺。しかし、そのプレーのテンポとスピードを理解し、なおかつすべての選手がフォルランに合わせていく必要が不可欠でした。しかし相棒の柿谷は中盤にヨーロッパへ旅立ち、中盤の底を引き締める山口は怪我で離脱。それでも、チームの根幹が崩れでもしない限り、これほどのタレントを擁していながら降格するなんてことはまずあり得ません。監督や他の選手は何をしていたんだ?という印象です。

結果論ですが、それぐらいチームとして崩壊していたということでしょう。皮肉にも、同じ都市を拠点とするガンバ大阪が最たる例となりました。降格したシーズンの序盤、謎の二頭体制が引き起こした混乱は最後まで修正できず、そのまま泥沼化していきました。どれほど優れたチームでも、いきなり方針転換などしてしまったら現場は混乱し、本来の持ち味の1パーセントも出せなくなってしまう。“勝っているチームは変えるな”とは、ブラジルの諺です。

フォルランを獲得して、どう活用したかったのか。結局、フロントがネームバリューだけで獲得したことが浮き彫りになった形です。フォルラン中心のチームづくりをする気だったのか、それともある程度余剰戦力として見つつも、彼しか持ち得ない“勝者のエスプリ”をチームに与えたかったのか。また、その使い方に合った環境づくりまで考えていたのか。

フォルランとて、余暇でJリーグに来たわけではないでしょう。ここ数年、アメリカのMLS(メジャー・リーグ・サッカー)が大きなビジネスマーケット化してきており、彼のような全盛期を過ぎたビッグネームが多く渡米しています。それこそフォルランともなれば、セレッソ以上の好条件を用意できるアメリカのクラブチームからのオファーが期待できたはず。またあれほどのネームバリューを持つ選手が、現役の晩年を迎えるにあたってその知名度を汚すようなマネをするわけがありません。ビジネスである以上金額は納得がいくものを求めるでしょうが、今回のセレッソ入りは他チームの好オファー以上に魅力的な何かを感じ取ったからだと僕は思っています。

しかし結果的に、セレッソ大阪はフォルランという選手をリスペクトしていなかった。それは、安直に獲得したフロントのみならず、監督やコーチ、選手すべてです。言語の壁はあれど、向上心のある選手なら通訳の有無に関係なく、時間を惜しんでも彼に話しかけ、日常では得られない知識を得ようと思うはず。少なくともフォルランは現状にまったく満足していない様子ですし、それはセレッソというクラブと彼が密な関係性を築き上げられていない何よりの証拠。野球選手よりも現役生命が短いプロサッカー選手でありながら、貴重な糧を無駄にするこのていたらく。そりゃ降格するってもんです。

フォルランは、J2に降格したセレッソへの残留を決めたと言います。諸事情によるものでもあるでしょうが、その心中、察するに余りあるところです。降格の責任を感じていることもあるでしょう、そして何より、自分が選んだ道にしっかりけじめをつけたいという気持ちも持っていることでしょう。

J2降格という憂き目に遭い、チームの浮沈をかけたシーズンに挑むセレッソ大阪。一年でJ1に戻れなければ、東京ヴェルディのようにズルズルとJ2の常連化することは間違いありません。そんななか、ディエゴ・フォルランほどの選手がチームに残留するというのです。彼ほどの選手はJ2のみならず、J1のチームでさえ欲しくても手に入れられない唯一無二のワイルドカード。セレッソがこの世界的キーマンをどう取り扱うかが、自ずと今シーズンの結果に結びつくものと思います。

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