2015年1月26日月曜日

下克上のチャンス!今こそ国内中心の代表チームを

■実にお粗末なベスト8敗退
ベスト8での敗退となったオーストラリアでのアジアカップ2015。レベルこそワールドカップにはおよばないものの、日本が挑める数少ない真剣勝負の大会であり、その独特の形式や雰囲気から、歴代チームはいずれも苦戦を強いられてきました。ここ数回の大会で好成績をおさめてきたことから容易と見られがちなアジアカップですが、振り返ってみても薄氷を踏むような栄冠ばかり。アジアカップを制するのは実に困難なことであり、今大会で勝ち残っている他国に対する敬意を忘れてはなりません。

とはいえ、やはり今回の敗退は実によろしくありませんでした。ひとことで言えば自爆。あきらかにプレー精度に影響した中二日という強行日程に疑問を抱きはしますが、ボールポゼッション68.1%にシュート本数35本(うち枠内8本/UEAは計3本)というゲームスタッツを見るだけでも、「圧倒的に試合を支配しながら崩しきれない」「シュートが枠に飛んでいない」ということが浮き彫りになっています。小さくない要因があったとはいえ、これはお粗末。「勝って当たり前」という言葉は対戦相手への敬意を欠いていると思いつつも、こういう試合でも勝ちきれる力がなければ、チャンピオンにはなれません。

アギーレ監督の指揮能力に疑問の声があがっているようです。采配そのものに疑問はありませんが、あきらかにコンディションを落としている香川真司選手(独ドルトムント)をスタメンで起用したことについては、言及されても仕方ありません。試合の流れから消え、ここぞのアタック時にも効果的に絡めず、ついにはフィニッシュも精度を欠くというていたらく。日本屈指のプレーヤーであることは認めますが、本来の力を発揮できない状況にあるのなら、選考外としてもいいのです。アギーレ監督が彼の復活を熱望していたのか、それとも日本サッカー協会やその他から圧力があったのか……。そう勘ぐられる前に(すでに勘ぐられていますが)、アギーレ監督は香川選手の起用の是非について、ご自身の意見を述べられるべきかと思います。

さて、いよいよ目を向けるべきは“ロシア大会まで”です。結果最優先でザッケローニ時代に回帰した日本代表チームですが、就任当初からのアプローチを見るに、アジアカップに挑んだメンバーはアギーレ監督にとって「納得はできないが、結果のためなら致し方なし」というところでしょう。最終的に切望していた結果(アジアカップ優勝)は手にできませんでしたが、ここでようやく本来のチーム強化に立ち戻ることができます。

アジアカップでの収穫はありました。それは、「ザッケローニ時代のチームを主軸にはできない」ということと、「新戦力の発見」です。


■Jリーガーにモチベーションを
結果から見ても分かりますが、完成度の高さからザッケローニ時代に回帰した日本代表チームは、力でアジアを押し切ることができませんでした。ところどころ阿吽の呼吸とも言えるコンビネーションを見せることがあり、培ってきた良い部分は残すべきですが、チャンピオンにふさわしい戦いぶりができなかったというのは大きなマイナス。

極端な話、トップとまでは言わないにしても、アジアで3本の指にも入れなかった時点で、旧型に固執する必要がなくなったのです。とりわけスタメンの年齢を見ると、ロシア大会時には平均年齢が30代を超えます。次の世代に経験を伝えられるベテランとコミュニケーションを取りつつ、フレッシュなチームを再構築する絶好のタイミングでもあるのです。

そして新戦力。とりわけ柴崎岳選手(鹿島アントラーズ)は最大の発見だったと言えるでしょう。代表チームのコンダクター、遠藤保仁選手(ガンバ大阪)の後継者とも言われ、以前から注目度の高い若手ではありましたが、代表チームでは遠藤選手の存在感の大きさから、インパクトを与えるプレーをあまり見られずにいました(キリンチャレンジカップでゴールを決めましたが)。「まだフル代表という看板は重いのか」、そんな印象を抱くほどに。

ところがアジアカップのUAE戦に途中出場した彼は、以前とは違うたくましい顔つきに。同点ゴールは見事という他なく、遠藤選手が退いた代表チームのレジスタとして中盤に君臨。ボールが彼を経由すると、独特のリズムが加わりゴール前に接近する頻度があがるように。次世代の司令塔が誕生した瞬間だったと言えます。アギーレ監督も、柴崎選手の才能に大きな期待を寄せていたからこそ、この試合で遠藤選手に代えるという策に打って出たのでしょう。試合には敗れましたが、アギーレ監督の審美眼が本物だと照明されました。

また今大会では試みてはいませんが、森重真人選手(FC東京)をアンカー(中盤の底)で起用する手法も検討されています。現在このポジションには長谷部誠選手(独アイントラハト・フランクフルト)がいますが、スライドしても問題ない盤石のアンカーが生まれれば、ベテランの長谷部選手をバックアッパーとして分厚い層を作り上げることもできるわけです。

つまり、Jリーガーを核としたチームづくりが不可欠になります。

 
■名ではなく実でのチーム再編製を
コンディション面もさることながら、チームでの起用頻度や試合勘、メンタル面など、どこかに不調を抱えたままの選手がスタメンを飾ると、その悪い影響がチームに伝播し、バッドスパイラルを引き起こす要因にもなります。奇しくもブラジルW杯、そしてこのアジアカップでそのことが証明されました。それでも海外組を多用する理由は、「国内組に比べてあきらかに実力が上だから」というところでしたが、サッカーは11人+ベンチワークがバランスよく組み合わさって、はじめて連動性や一体感が生まれるもの。もはや海外組はアドバンテージたりえません。プラスアルファ(上積み)の戦力として起用するのがベストでしょう。

その象徴が、香川選手です。明らかに所属クラブでも本来の実力を発揮できていないのに、さらなる力の発揮が求められる代表チームに招集すること自体がナンセンス。そりゃ選手側とすれば、呼ばれれば「自分の力が求められているんだ」と招集に応じるに決まっています。要するに、「コンディションが良くないから呼ばない」という選択肢を持つべきだと言いたいのです。とりわけ移動負担が大きい海外組はなおさら。

柴崎選手や森重選手といった、フレッシュでモチベーションの高いJリーガーを中心にチームづくりをすれば、今までとは違う安定感ある日本代表チームができるはず。少なくともアギーレ監督の手腕が確かなことは立証されたわけですから。

そして、Jリーガーが中心となれば、他のJリーガーのモチベーションの向上にもつながり、自ずとJリーグそのもののレベルもアップします。ここでしっかりとした土台が作れれば、コンディションのいい海外組が加わった際、さらに大きな効果をもたらすことは明白。そうして“目指すべきスタイル”がはっきりした代表チームが活躍することで、子どもたちにも「いつかは代表チームに」という目標を抱いてもらえるようになるのです。

名前で選ばれた選手で構成されたツギハギチームがもう通用しないということが身に染みて分かったアジアカップ。もう、広告主の言いなりになって真の強化をおろそかにするのはヤメにしませんか、日本サッカー協会のお偉方。今回の結果を戒めとして真摯に受け止める気持ちがあるのなら。

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