2014年6月15日日曜日

初戦敗退は事実上の終戦?

データを見ても予選突破は困難
2014年W杯ブラジル大会、日本は初戦のコートジボワールに逆転を許し、1-2で敗れました。もちろん、まだグループリーグは2試合が残っているので「これで終わり」ではありませんが、football web magazine Qolyに興味深いデータが出ていたので、それと合わせて今後を検証したいと思います。

>> 【データ】W杯初戦に敗れたチーム、勝ち抜けたを決めたのはわずかに8.7%

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■初戦で勝ったケース
突破:38例(84.4%)
敗退:7例(15.6%)
合計:45例

■初戦で負けたケース
突破:4例(8.7%)
敗退:42例(91.3%)
合計:46例

■初戦で引き分けたケース
突破:22例(59.4%)
敗退:15例(40.6%)
合計:37例

※出場国が32ヵ国になった1998年からの全128例が対象
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データをもとに考えると、初戦を落とした日本がグループリーグを突破する確率は8.7%。ちなみに2010年南アフリカ大会で初戦を落としながらグループリーグを突破したのは、優勝したスペインだけでした。

極めて困難な状況だと言わざるを得ません。もちろんデータはあくまで目安であり、日本が例外となる可能性も大いにあります。特に昨今の世界におけるサッカー事情は以前と大きく異なってきており、「W杯優勝国は開催される大陸から出る」というジンクスも眉唾もので、1998年仏大会のフランス、2010年南ア大会のスペインと初優勝国が近年で2ヶ国も出るなど、あらゆる意味でボーダレスな世界になってきています。

さりとて、W杯なのです。

大会がはじまって3日が経ちましたが、逆転試合の多さもさることながら、ここまでの試合を通じて特に感じさせられるのは「チームの完成度の差」です。開催国ブラジルは綿密な計画のもとチームづくりを進めてきたからこその完成度を見せつけました。ほか、「これは」と思わされたのがチリとコスタリカ。

チリは、サンチェス(バルセロナ)やビダル(ユヴェントス)といったワールドクラスの選手がいますが、その戦い方を見ていると彼らに依存しないチーム全体での統一感が感じられるものでした。コスタリカにはルイスというスター選手がいますが、全体的に見れば小粒な印象が否めません。しかしここもチームとしてまとまっており、あの強豪ウルグアイとの初戦で先制を許すも、連動性のある攻撃で3点を奪い逆転に成功するなど、ブレない戦いぶりに好感が持てました。当たり前の話ですが、サッカーはピッチにいる11人が連動して初めてプラスアルファの力を発揮できる競技。強豪国を向こうにまわしてジャイアントキリングかましてやろうと思うなら、個人の能力で対抗するのではなく、チームとしての完成度で立ち向かうべき。チリとコスタリカの戦い方は、そのことをはっきりと証明してくれていました。

日本本来の強みが瓦解
コートジボワールと対戦した日本について、ダメ出しをすればいくらでも出てくるのですが、なかでも特に悪かったのは「走れていなかった」こと。降雨によるスリッピーなピッチコンディションや湿度の高さなど環境面がなかなか困難だったことはテレビを通じても窺い知ることはできましたが、それは対戦相手のコートジボワールも同じこと。言い訳にはなりません。

4年間かけて準備してきたチームが“走れない”とは、理解に苦しむところです。「サッカーで走るのは当たり前のこと」とはイビチャ・オシム氏の言葉ですが、本ゲームでの日本選手の走行距離がデータで出れば、コートジボワールの選手よりも少ないのはもちろん、過去の親善マッチでのデータと比較しても、下から数えた方が早いものとなるでしょう。

何のために走るのかと言われれば、味方のためです。バルセロナではボールホルダーに対して2つ以上のパスコースを保持するためのポジション取りを選手に要求すると言います。いわゆる“パス&ゴー”(「パスを出したら、足をとめずに次のスペースに向かって走れ」という論理)で、サッカーでは小学生クラスから教えられる基本中の基本。しかし、コートジボワール戦ではボールホルダーが前を向いても、連動して走り出す選手が極めて少なかった。

加えて、目に余るほどのパスミスの多さも。本来パス精度の高さは日本の強みなのですが、走り込んでも敵にインターセプトされる、または明らかなミスパスで敵にボールを“渡す”など、自らチャンスの目を摘んでしまっている場面が多々ありました。これでは走った選手もただ疲れてしまうだけですし、ボールを奪われる=カウンターを食らうということなので、すぐさま帰陣することを求められます。これが続けば、自ずと足だってとまってしまいます。

「パスコースをつくるためにランする」、「そのランと連動してパスをつなぐ」、これによって「選択肢を増やして攻撃に幅を持たせる」ことへとつなげていけます。いくら練習時間が限られた代表チームだからといって、W杯本戦、しかも初戦でこの有り様はあり得ない。アフリカンとの試合だって、この4年間でどれだけやってきたことか。「急造チームでした」と言ってくれた方が、よほど救われます。

課題を鑑みるに立て直しは不可能
日本サッカー本来の特徴がここまで瓦解したわけですから、次のギリシャ戦までの4〜5日間で根本的に立て直せるかと言われれば、答えはノーです。「審判の判定が相手寄りだった」や「絶好のシュートがポストに嫌われた」、「相手キーパーが当たりに当たっていた」などアンラッキーな要素で敗れたなら「自分たちを信じよう。このスタイルを貫こう」と心を強くし、変わらぬ姿勢で次戦に挑むべきですが、チームとしての根幹が揺らいだ今の日本代表チームは、メンバーをごっそり入れ替えるぐらいの荒療治をせねばならないでしょう。

それでも、8.7%の可能性を破る力があるとは思えません。

本田圭祐の先制ゴールには喜びの叫びをあげましたし、複雑な心境ながら「もしかして勝ちきれるのか」とも思いましたが、結果はご覧のとおり。残り2試合も観戦しますが、結果は推して知るべし。世間では「まだ2試合残っている!」と息巻いている方も多いと聞きますし、僕みたいなことを言う人間は悲観論者として非難を受けることでしょう。しかし、我が国の代表チームがこの体たらくで敗れ去ったのを見て「まだ2試合残っている!」と叫ぶのは、4年間かけて90分間走れないチームだという事実を突きつけられたにもかかわらず「ギリシャとコロンビアには勝てる!」と言っているようなもの。それ、対戦相手はもちろん、W杯への敬意も欠いていませんか?

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。

大会後にはさまざまなメディアが敗因を羅列することと思います。それはそれできちんと反省し、次の勝利へつなげるための努力をすればいいのです。これでW杯への挑戦権が奪われるわけではないのですから。

敗戦は糧です。4年後の勝利につなげるため、自分たちにできることをやりましょう。残り2試合? 淡々と観戦しますよ。どんな試合になるとしても、これからも日本サッカーになにがしか寄与したいと願う人間として、観戦する義務があるから。
 

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