2014年6月25日水曜日

アリーヴェデルチ! ザッケローニ

■指揮官の功罪を検証する
1分け2敗という燦々たる結果でブラジルを後にすることとなったサッカー日本代表。はたして彼らが帰国する際、国民がどんな反応をもって迎え入れるのか興味深いところですが、すでにこのチームの功罪について、ネット上などでさまざまな議論が交わされています。なかでも議論の的となっているのは、こんなみっともない姿を見せてしまったのは選手がだらしなかったからか、はたまた指揮官の能力不足か、という点。

平たく言えば“どっちもどっち”。少なくともプロを名乗るのであればどんな状況であれテンパるなんてことがあってはならないし、それに指揮官までお付き合いしちゃいけない。どちらか一方が悪いかどうかなんていう、スケープゴート探しをすること自体ナンセンスですし、日本サッカーの将来のためにはなりません。

ただひとつ言わせてもらえば、指揮官の責任は大きかったと思います。今回のW杯における日本代表の一連の動きを追いながら、項目ごとに見ていきましょう。

1) 大久保嘉人の抜擢
最終23名に滑り込んだ大久保ですが、2年半ものあいだ代表から遠ざかっていた選手でした。選ばれたときはJリーグでもノリにノっていた選手なので、それだけ見れば妥当な選考かと思いますが、とにかく疑問符が多すぎる。
・ザッケローニ体制になってからほぼ固定メンバーでチーム編成がなされてきた
・直前の国内最終選考会に大久保は呼ばれていなかった

「そんな大抜擢、過去にもあっただろう」……確かにありました。2002年日韓大会での中山&秋田、2006年ドイツ大会での巻などがそう。ただ、結果論ではありますが、この大久保抜擢は今振り返ってみると、ザッケローニの迷いの一端だったと思われます。
W杯まで半年を切ったあたりでしょうか、チームの中核を担う本田圭祐と香川真司のコンディションが一向に上向きませんでした。それは本大会でのパフォーマンスを見れば一目瞭然。そこに不安を覚えた指揮官は、彼らの不調をカバーできるだけの勢いをもたらすジョーカーを欲していたはず。しかし固定メンバーでやってきた今、ブレイクスルーできるだけの勢いを持つ手駒がなかった。藁をも掴む想いで、細貝を外し、大久保を招き入れたのだと思います。おそらく既存メンバーは、小さくない違和感を覚えたことでしょう。

2) 初戦における先発メンバーの変更

ずばり、遠藤と今野を外したことです。代わりにスタメンを張った山口と森重が頼りないというわけではありませんが、在籍期間のほとんどを固定メンバーでやってきたザッケローニが、土壇場(というか正念場)で司令塔と守備の要を換えるという策に出たのは驚き以外のなにものでもありません。
おそらく指揮官の目から見て、彼らふたりのコンディションが上向いていなかったことが要因かと思われますが、どちらもこのチームの核となる選手です。しかも、彼らを外してのチーム強化は過去に数えるほどしかやってきていません。W杯における初戦がどれほど重要なものか、過去の戦いを知る日本人なら痛いほどよく分かっていること。そんな大事な一戦で、信じ難いメンバー編成に。
しかも、長谷部を下げて遠藤を投入するなど、何を狙っているのか分からない采配まで。結果的にこれが混乱を生じさせ、変則フォーメーションで畳み掛けてきたコートジボワールに逆転を許す結果となりました。
ちなみに遠藤は一度も先発を飾ることはなく、最後のコロンビア戦では出場機会すら与えられなかった。どうして彼を連れて行ったのか、彼をどう使いたかったのか、最後まで不透明なままブラジルを後にしたのです。

3) ギリシャ戦で余った最後のカード
理解不能と言っていいでしょう。交代枠3枚のうち2枚しか使わずに、絶対に勝たなければならないギリシャ戦を引き分けで終えました。ギリシャからすれば、ひとり退場して数的不利になったことを思えば、勝ち点1はプランどおり。あそこまでベタ引きされたチームを崩すのは確かに難しいですが、かといって策がないわけじゃない。しかし、その貴重な手段を手元に持ちながら、最後まで使わず試合を終えるというのは、今もってきちんと説明していただきたいほど。

4) 選手も想定外のパワープレー
3戦通じて登場した迷采配。CB吉田を最前線にあげての放り込み作戦。どこの国だって最後の最後にやる手段ですが、大会前、「パワープレーは捨てた」と、その選択肢たるハーフナー・マイクや豊田をメンバーから外したにもかかわらず、です。どの試合でもそうですが、前線にいたのは香川、岡崎、大久保、柿谷あたり。いずれも上背はなく、どちらかと言えば空中戦は苦手なほう。そこに吉田を入れたからといって、大きく戦況が変わるわけがありません。もしかしたらピンポイントで一点をもぎ取れることがあったかもしれませんが、今となっては後の祭り。

上記の項目は、今大会を通じて目に余った“混乱の根源”たる内容で、ほかにも挙げろと言われればいくらでも出てきます。

ただ共通して言えるのは、ザッケローニがプレッシャーに押し潰されたということです。


■4年間、ご苦労様でした。
今の日本代表チームは、確かに選手主導でまとまっているように見えます。自主的に目指すべき頂を見据えることは非常に喜ばしいことですが、興行試合での結果に満足し、まわりにチヤホヤされたことで主力メンバーが勘違いしてしまった感は否めません。ここまで言い切るのも、今回の結果ゆえ、です。

そのうえで言わせてもらえば、じゃあそうして天狗になったチームを、どうして指揮官は諭さなかったのか? ということ。どんな組織にも、必ず目指すべき目標へと推進するリーダーがいます。この代表チームでは監督であるザッケローニなわけですが、彼にはその経験値と指揮能力をもって、日本サッカーがより高みへと進めるよう導いてもらう責務があったはず。いえ、ありました。若い選手が有頂天になれば、それを咎めるのも彼の役目です。

「選手が勘違いした」「あいつら、天狗になっていたんだ」という批判の声が多く聞こえますが、じゃあ彼らは烏合の衆だったのですか? 少なくとも年俸2億7000万円(推定)を支払って雇っているワールドクラスの指揮官がいたわけです。結果で言えば、選手が天狗になるまでの過程でザッケローニは何もしていなかった、ということです。契約書に書いていなくとも、その程度の仕事はしてもらわねば困ります。

今、主に本田圭祐が矢面に立たされていますが、本来その役目を背負わなければならないのはザッケローニ監督です。見方によっては彼は「育成型」「コーチング型」の監督だと言えますが、いわゆる勝負師タイプでもなければチームマネジメント能力も大変低い。本当、彼に4年間も与えたことが悔やまれてなりません。

現在、日本サッカー協会の原博実専務理事兼技術委員長が退任、後任候補にJ1鹿島の鈴木満常務取締役強化部長の名があがっているという報道がありました。

敗因の検証もまだしていないのに、強化委員会の人事が動き出すってどういうことだ?と。要するに「ハイハイ分かりました、俺らが悪いんですよね。辞めればいいんでしょ、辞めれば」という声が聞こえてくるような動きです。本当に、日本サッカー協会は腐り切っているようですね。

まずは4年後はもちろん、はるか未来に向けて「これが日本のサッカーだ」と言えるものが何なのか、具体的に示す必要があります。そのうえで、「そのために必要な指揮官は誰なのか」という後任の監督候補が出てくるのが自然な流れでしょう。4年前は、それを曖昧に流してしまった。

この国にとって、日本代表とは何なのか。「日本のサッカーとは?」と聞かれて答えられる明確な型は何なのか。今回の結果を胸に、少なくとも僕は今まで以上に厳しい声をあげていかねばならないと感じ入りました。

そして、ザッケローニ監督については、もう何も言うことはありません。終わったことですし、彼のチームに継続性はありません。4年間ご苦労様でした。

アリーヴェデルチ(さようなら)、ザッケローニ。
 

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