2014年6月20日金曜日

電動ハーレーという衝撃のニュース、そして今後のバイク市場は

発表された電動ハーレーダビッドソン『LiveWire』
昨晩(2014年6月19日)、米ハーレーダビッドソン モーターカンパニーは同社初となるエレクトリックモーターサイクル“Project LiveWire (プロジェクト ライブワイヤー)”を発表しました。数日前よりウェブ上で予告ムービーや情報の一部が飛び交い、騒然となっていたのでカウントダウン後はあまり大きな驚きはありませんでしたが、やはり最大のサプライズは「ハーレーダビッドソンが電動バイクを作った」という事実でしょう。

電気自動車は現在すでに実用化され、日常にも溶け込んできていますが、電動バイクはいわゆる原付クラスでは登場しているものの、こうした大型バイクではほとんどがコンセプトバイクどまりで、まだ実用化に至っていません。ただ、世界的には電動バイクに対する関心度は大変高く、イギリスのマン島で開催されている世界最古のモーターサイクルレース『マン島TTレース』では電動バイクのクラス「Zero Emission」なるものがあり、今年は日本のレーシングチームのEVレーサー「MUGEN 神電参」が見事優勝を飾っています。電動バイクの実用性は決して遠い未来の話ではないのです。

LiveWire
そういう背景があるとはいえ、モーターサイクルの世界に身を置いている僕にとっては、ハーレーダビッドソンが極秘裏に電動バイクの開発を進めていたことは驚き以外の何物でもありません。そう、国産4メーカーではなく、BMW Motorradやドゥカティといった他の海外メーカーでもなく、ハーレーであったことが、です。

LiveWire
ハーレーダビッドソンは、今年創業111年めを迎えた老舗のモーターサイクルメーカー。なかでもその特徴はドッドッド!という独特の鼓動感を味わえる空冷Vツインエンジンが心臓であること。環境の変化とモーターサイクルの進化から、ハーレーダビッドソンが創出するモデルにも変化が出てきており、古き良き時代を知る人、またビンテージモデルのオーナーなどは「今のハーレーは、ハーレーじゃない」というネガティブな声を発するほど。そうした議論が起こることもまたハーレーダビッドソンの魅力ではありますが、この電動バイク計画はそうした議論すら一気にすっ飛ばしてしまった勢いがあります。

世界の進化の速さを痛感した次第です。

昔のハーレーダビッドソンなら、「水冷エンジン? 電動バイク? ウチには関係ないね。そんなものは他メーカーにでもまかせておけばいいさ」といった強気の姿勢で、自身のアイデンティティである空冷Vツインエンジンのモデル開発に勤しんでいたことでしょう。しかし、昨年発表された空冷機能搭載の「ツインクールド ツインカムエンジン」の発表や、水冷ストリートモデル「ストリート500 & ストリート750」の登場など、その歴史に変化が生まれていたのは事実。特にこうしたプロジェクトは、7〜8年ぐらい前から動き出しているものですので、この電動バイク計画構想は少なくとも10年ほど前から生まれていたのでしょう。

(左)ツインクールド ツインカムエンジン (右)日本導入予定のストリート750
ハーレーダビッドソンが先陣を切った印象ですが、おそらく他のモーターサイクルメーカーも次々と試験的な電動バイクを発表してくるでしょう。特に、電動バイクというものともっとも縁遠いと思われていたメーカーが先んじたという事実が他メーカーに刺激を与えたことは間違いありません。これを機に、世界のモーターサイクル市場は激化することと思われます。

ビンテージハーレーダビッドソン
一方で、今回の電動バイク計画はハーレーダビッドソンのこれまでの歴史を鑑みるに、ともすれば真逆とも言える急展開であること点も無視できません。111年という歴史から生まれたモーターサイクルを愛するファンは世界中に多く、おそらく彼らは戸惑いをもってこのニュースを聞いたことでしょう。

懐古主義か、さらなる進化か。

カンパニーは後者を選び、迷わず突き進んでいる姿勢を打ち出しました。市場においてどんな反応があるかはまだ分かりませんが、少なくとも世界的企業として未来を構築する責務があり、この計画を進めることで、まだ見ぬ“未来のハーレーダビッドソン”の姿を模索していくことでしょう。

米ハーレーダビッドソン社でのイベントにて
個人的には、賛否どちらでもなく、未来における市場の声に判断をゆだねるといったところです。ただ、111年という歴史はどこのモーターサイクルメーカーも持ち得ぬ深みがあり、そのなかで生み出されたモーターサイクルによって無数の笑顔が生み出されてきたことを思うと、継承していくべき歴史に対するリスペクトを忘れずにハーレーダビッドソンらしい進化を遂げてほしいと願うばかりです。

今回のハーレーダビッドソンの試みは将来的な電動ハーレーの市販をにらんだ計画で、まずは2014年末にかけてアメリカ国内の30ヶ所を超えるディーラーに持ち運び、一般ユーザーに実際に試乗してもらってその声を受け、開発陣にフィードバックしていくという流れだそうです。おそらく今年11月のイタリア・ミラノで開催される世界最大のモーターサイクルショー『EICMA(エイクマ)』にも登場することでしょう。現時点では日本に上陸する予定は未定。この試験車、来ることがあったとしても来年以降じゃないでしょうか。

また、この電動ハーレーは、映画『アベンジャーズ2 エイジ・オブ・ウルトロン』の劇中にてブラックウィドーが実際に乗っているというリーク情報が流れています。アメリカでは2015年5月1日公開予定だそうで、スクリーンで観る電動ハーレーはまた迫力のあるものになるでしょう。これも楽しみのひとつですね。


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