2014年6月23日月曜日

日本代表を批判すべきは、今か、後か

■まだコロンビア戦が残っているが……
ギリシャ戦をスコアレスドローで終え、土壇場に追い込まれた日本代表。敗れていればグループリーグ敗退決定だったので最悪の結果にはならずに済みましたが、かといって良い結果だったわけでもありません。首の皮一枚でつながったという事実が残ったのみです。

言いたいことは山ほどありますが、ウェブのニュースなどでギリシャ戦評が何件も出ているので、分析はそちらにまかせるとして、今ウェブ上で巻き起こっているさまざまな声のなかに見える意見——「W杯を戦っている真っ最中に批判すべきじゃない」「最後まで戦いを見届けてから検証しよう」という内容について考えたいと思います。

結論から言えば、どっちだってイイ、です。

代表チームにはまだコロンビア戦が残っていますし、わずかな可能性ですが、決勝トーナメントに進出することもあり得ます。そうなると、3試合でブラジルを後にすることなく、勝ち続ける限りW杯の舞台に立つことが叶うのです。小さくとも可能性がある限り、選手たちが最大限の力を発揮できるよう、心をかき乱されぬよう、静かに祈り、見守ろうじゃないか……そういう意図と僕は汲み取りました。もちろんそのなかには、「今何を言ったところでチームの状態が急に良くなるわけじゃない、だったら外野は黙って見守ればいい」という意見もあることでしょう。

ナイーブだなぁ、と思うわけです。

日本代表が目指しているところはどこでしょう。日本サッカーが目指しているところはどこでしょう。世界の強豪国と互角に渡り合う力をつけ、W杯でも上位に食い込む強豪国の仲間入りを果たし、究極はW杯を制覇する。少なくとも僕自身はそのつもりで日本サッカーと向き合っています。


■ポルトガルと見比べてみる
同じシチュエーションの他国と見比べてみましょう。初戦を落とし、第2戦めを引き分けて崖っぷちの国と言えば、ポルトガル、ガーナ、韓国がいます。それではポルトガルを例に考えてみます。

大会前のポルトガルと言えば、優勝候補というよりはダークホース的存在として扱われていました。何より最大の武器はエース、クリスティアーノ・ロナウドの存在。一撃必殺のエースは間違いなく他国にない絶対的な切り札ですし、厳しいマークにさらされるのは想定内。あとは、その状況をチームがいかにうまく利用できるかどうか。戦い方次第で決勝トーナメント進出はもちろん、さらなる躍進だって期待できる……そういう寸評でした。

ところがいざ蓋を開けてみれば、初戦のドイツにボテくりまわされ、挙げ句CBペペの愚行でいきなり蹴つまずくという最悪のスタート。C.ロナウド自身も怪我を抱えており万全の状態ではなく、また怪我人も続出してチーム全体が満身創痍といったところ。僕から見れば、日本代表以上に最悪のシチュエーションにある模様。

では、当初期待されていたほどの活躍ができていない代表チームを見て、ポルトガル国民はどんな反応をしているでしょう。歯がゆい思いをしながらも、腕を組んで祈り続けているだけでしょうか。僕は、そうは思いません。少なくとも「まだ一試合ある。静かに見守ろう」と言う声はほぼ皆無に違いありません。かつてエウゼビオという“英雄”を擁し、世界のサッカーシーンを席巻したポルトガルという国が“この程度の結果”を甘んじて受け入れているはずがない。今頃ポルトガル代表チームは、敗退後にどう静かに帰国すべきか考えているでしょう。特にペペは、そうでしょうね。もしかしたらそのままマドリッドに直帰するんじゃないか?とも。

「まだ一試合残っている。突破の可能性はある。だから静かに見守って欲しい」

本田圭祐がそう言っていたと聞きます。とても「批判は受け止める」と言っていた強気の御仁とは思えない言葉です。とてもACミランで10番を背負う男の言葉とは思えません。他の国に比べれば緩いことこのうえない。もしブラジル代表がこんな状況に陥っていたら、こんなものじゃ済まないでしょう。ネイマールが「今は静かに……」と言ったりすれば、蜂の巣を突ついたかのように批判の嵐にさらされるでしょう(言うとは思うけど)。

今言うべきか、大会後に批判すべきか。

この議論自体が、W杯に出場する気がある国として実に稚拙だと思います。批判なんていつ言ったっていい。それが、国を背負ってW杯に挑むということの意味です。少なくともイングランドやスペインなどと肩を並べる存在になりたいと思うのであれば、帰国する際の代表チームの表情、そして彼らが帰国した際の国民の反応を見ておきましょう。真似する必要があるなどとは言いません、日本には日本の出迎え方があります。

「感動をありがとう」「勇気をありがとう」といった声があがろうものなら、我が国のサッカーは一生強くなれないでしょうね。


■結局のところ、かまってちゃん?
「感動をありがとう」「勇気をありがとう」——。

ずいぶん昔から聞き慣れた言葉です。先のソチ五輪でメダルを逃したフィギュアスケーター浅田真央さんが帰国した際にも同じような声が聞かれました。どうも日本人は「感動」「美談」が好きなようで、なにかにつけて話を綺麗にしたがるきらいがあります。

今回のブラジル大会では、初戦の主審に日本人の西村雄一さんが選ばれたこと、そしてスタジアムでゴミ拾いをする日本人サポーターのことが評価されたことが違う話題を呼びました。確かにそれ自体は評価されてしかるべきなのですが、ちょっとメディアの持ち上げ方が異常すぎるのです。「私たち日本人が、こんなに世界から評価されたんですよ!」と煽るさまは、どれだけコンプレックス強いんだ?と思わされるほど。

どうも日本という国は、外部からのバッシングに対して異常に強い反応を見せます。独自の文化、独自の言語で発展してしまった島国ゆえでしょうか。反面、海外からの高評価を必要以上に喜ぶ傾向も。そうした傾向の歪んだ表現なのか、曖昧な結果を美談でまとめたがります。

実を言うと、僕が主に携わっているバイク業界も似たような傾向にあります。免許、バイク、その他用品が必要なうえに、社会的にあまり良い目で見られていない世界ゆえ、常に肩身の狭いところで細々と過ごしている。そんななか、たとえば日本映画やドラマといった一般人の目に触れるところにバイクが登場すると、「ほらほら!バイクが出るんですよぅ!」と嬉々として話題を振りまく。

よくよく見てみれば、その映画だって別にバイクを大々的に取り上げたかったわけではなく、酒のつまみ程度の必要性で取り入れたってだけのこと。それを「どうですかぁー」と言っちゃうあたり、残念な業界だなぁと思う次第。「自分たちにしか分からない世界だから」と割り切ればいいものを、すり寄られてくると喜んじゃう“かまってちゃん”。

外界との温度差に気付けないと、端から見て正直イタい。西村主審、そしてゴミ拾いをするサポーターのことは確かに海外でも評価されていますが、あまり過度な反応をしちゃうと、外界との溝はさらに深まるばかり。本当に世界と伍するサッカー大国を目指すのであれば、本質であるサッカーでの結果を出すことに腐心するべきだと思います。批判するのは後がいいかどうか、なんて、正直くだらないです。


■選手とサポーターの溝
「それでも人生は続くんだ」

W杯で早々にGL敗退が決まった国の選手や監督は、口々にそう言います。この台詞を耳にしたのは一度や二度ではなく、特に海外の方は“敗北”を受け入れる際にこの言葉を用いているようです。

深い言葉だなぁ、と思わされます。敗北は終わりではなく、始まり。屈辱の結果から敗因を学び取り、次へとつなげていく。そうして人は、死ぬまで何かを学びながら生きていく。我々にはない宗教的背景から生まれた人生観のように見受けられます。

批判なんて、いつしたっていい。どっちみち、今回の不甲斐ない戦いぶりで勝ち上がれるほどW杯は甘くはないし、帰ってくる代表チームと日本サッカー協会は批判の嵐に包まれるに決まっています。

でも、これも学ぶべきことのひとつでしかありません。

日本サッカー界には、Jリーグ百年構想という概念が存在します。その過程で言えば、Jリーグ誕生からわずか20年ほどの現在は、まだまだひよっこみたいなもの。その20年で5大会連続でW杯に出場できているという事実だけでも贅沢きわまりないこと。世界の強豪国が本気で勝ちに来る戦いをできるなんて、どこの国にも与えられる経験ではありません。日本にとって、W杯以外はすべて親善マッチでしかないのですから。

今回のW杯を見ていて痛感したのは、選手とサポーターとの溝です。サポーターは、平たく言えば「観戦している人すべて」と言い換えてもいいかもしれません。今回取り上げたような議論が起こること自体、日本のサポーターのレベルは低いと言っているようなもので、そこから生まれる声が選手を激励するかと言われれば、甚だ疑問です。

サポーターの叱咤激励は、間違いなく選手のレベルを引き上げると確信しています。だからこそW杯での日本代表の不甲斐ない戦いぶりについては、サポーターの声がシビアじゃないことも要因のひとつと考えます。目が肥えた人が見れば、これまでの日本代表の戦いぶりに安定感がないこと、選手やザッケローニ監督が「自分たちのサッカー」というほど明確な型がないことは明らかでした。一部の識者を除き、他の誰もがそれを指摘しなかったのは事実で、だからこんな腑抜けた代表チームをブラジルに送り込んでしまったのです。

4年後のロシア大会で決勝トーナメントに進出したいと本気で願うのならば、まずサポーターがしっかりとサッカーを知り、選手に響く声を発することから始めねばならないでしょう。道は平坦ではありませんが、この事実が再発見できたことが今回のブラジル大会での収穫だと思っています。
 

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