2014年6月25日水曜日

再び走り勝つサッカーを

■これまでの4年間の成果
すべては初戦だった、と思います。試合内容もそうですが、試合後の選手のコメントからも、その混乱っぷりが伺えました。

「言葉にならない。諦めたくないし、こんな形で終わりたくない」(香川)
「この2分で、この4年間を無駄にするわけにはいかない」(内田)
「勝たなくてよかったと、正直、今は思っている」(岡崎)
「相手に回されて、走らされて、体力を消耗させられた」(長友)

超攻撃布陣で仕掛けてきたコートジボワールの変則フォーメーションにも面食らわされたのでしょうが、日本の戦い方に安定感と一貫性がなかったのも事実。4年間、ほぼ固定メンバーでチームをつくってきたにもかかわらず、ここまで足下がおぼつかなくなるというのはちょっと考えられないです。このテンパったコメントの数々が、混乱していた現場を象徴していますとも。

ただ、結果は出ました。いろんな意味で、これが日本サッカーの実力だと言うことでしょう。これが、世界がくだした評価です。

「4年間積み重ねてきたものを」

このフレーズ、本大会中で何度耳にしたことか。元々ナイーブな国民性であることを考えると、初戦に勝って波に乗りたいというところでした。過去の経験から初戦の重要性は誰もが分かっていたはず。そうした糧を活かすために4年間しっかりと準備して挑み、世界を驚かせてやろう。これが、南アフリカ大会の決勝トーナメント一回戦、パラグアイに敗れたあとの想いでした。

指揮官の選定、メンバー構成、強化プラン、これまでの試合内容……僕の目から見ても不本意なものばかりでした。とにかく目についたのは、安定感のない試合運びと追いつめられたときの自分たちの型。選手や監督が言う「自分たちのサッカー」というのがどれのこと? と思うほど、型らしい型はありませんでした。

選手が言うほどの型がない……指揮官は何も思わなかったのか? その疑問がずっとありました。ところが変わらぬ体制のまま強化は進み、ブラジルへとたどり着きました。

遠藤が先発から外れる? 守備のキーマンだった今野も先発落ち? しかも、もっとも重要だと認識していたW杯初戦で、いきなり? これまでやってきた方針に一貫性があるならば、遠藤や今野がよほどコンディションを落としているわけでもない限り、採る必要のない選択肢です。どちらも攻守のキーマンですから、なおさら。

自信をもって挑んでくれたことは悪くありません。ただ、試合を終えてあれほどまでに混乱しているのはちょっと異常。選手と指揮官とのあいだに“意識の溝”があった何よりの証拠です。そうしたことを踏まえて振り返ると、「積み重ねてきた4年間」と言われるものがどれほど大したことがなかったか、よく分かります。その積み重ねてきたものをぶつけた世界最高峰の大会で惨敗したわけですから、言い訳のしようがありません。

それにしても、選手もさることながらザッケローニ監督の混乱っぷりにも驚かされました。これまで重宝してきた選手をあっさりと切り捨てたり、なんでそんなことするの? という選手交代をしたり……。W杯という舞台の重圧を改めて感じた次第でもあり、結果としてザッケローニ監督はW杯を戦うにはまだその領域にない方なのだな、とも思いました。8年前のジーコがそうだったように。


■また始まる“これからの4年間”
とまぁ、終わったことを悔やんでも仕方ありません。結果は出ました。グループリーグ最下位という不名誉きわまりない結果が。

これから、また4年間が始まります。

大事なのは、敗因の検証と、それを克服するために必要な施策をきっちりと練ることです。少なくとも日本のサッカーは世界全体で見たら全然大したことがないわけですから、見栄を張らずに真摯に受け止めねばなりません。

まず、日本サッカーとは何なのか? 何をもって日本サッカーと言うのか? この永遠の課題に対して、答えではなく“目指すべき場所”を明確にすべきです。

今回日本代表が敗れ去った要因が、“走り勝てなかった”ことだと思います。コンディション調整だとか気持ちの問題だとかも内包していますが、この4年間で90分間走り切るサッカーをやってこなかったことが、ブラジルで噴出したのです。イビチャ・オシムが実現しようとしていた、全員が全員のために走り切るサッカーこそ、日本サッカーの目指すべき場所だと思います。それこそ、日本全国のサッカー選手に示すべき姿だと思います。

そうなると、チームの根幹は国内リーグの選手がメインになります。立地の問題から、10時間以上かけて帰国させた海外所属の選手を中心にするの賢明ではありません。チーム力そのものを底上げしようと思うなら、国内中心のチームづくりこそが必須。

とすると、Jリーグを知り、日本サッカーをよりよい方向へと導きたいと腐心してくれる指揮官が必要になります。さて、そこまで日本を想ってくれる外国人監督はいるでしょうか? 今回のザッケローニの件で、そうした外国人指揮官を捜すことは非常に難しいことがはっきりしました。とすると、日本人指揮官とせねばなりません。

力量で言えば、間違いなく外国人監督の方が圧倒的に上でしょう。でも、そうやって目先の結果にとらわれた結果が今回の敗戦だったわけですから、次のロシア大会、さらにその先のW杯にも自信をもって送り込める代表チームをつくるには、難しくともそうした地道な強化に着手すべきです。少なくともこのブラジルの地で、チリ、コスタリカ、アルジェリアといった国がそうした地道な努力の結果を見せてくれました。日本にだってできるはずです。

すぐに「世界との差」なんて言葉が軽々しく出ていますが、今回の結果は自爆以外の何ものでもありません。そこを勘違いしては、また同じ4年間を繰り返してしまうだけ。

本当にいい経験になった今回のW杯。華やかに彩られてきたお飾りの日々は崩壊し、日陰をゆく4年間が始まります。日本サッカーは再び暗黒時代に突入しますが、それでも歩みをとめることはありませんし、そんな日本サッカーを支えるのは、どれほど仄暗い世界になろうとも、いつか輝けるであろう日を信じて支え続ける情熱を持った人たちのサポートです。

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