2014年5月11日日曜日

バイク盗難の今 #01

ここ一ヶ月ほど、関東圏を中心にバイク盗難事件が相次いでいるようです。かつてバイク盗難に関するサイトの管理をしていたことがあるのですが、そのときの情報元である方の話によると、「神奈川に拠点を持つバイク窃盗グループが活動範囲を広げているよう。都内でも被害も出ている」とのことでした。

主に狙われているのは、ハーレーダビッドソンなどの海外メーカー系ほか、スーパースポーツ系や旧車系もターゲットになっているとか。これらのほとんどは海外に持ち出されるので、当初は「旧車?」という疑問もありましたが、バラして国内の業者に販売したりするケースもあるそう。

数年ほど前まで、日本国内では大型バイクの盗難事件が相次ぎました。そのほとんどは海外メーカー系モーターサイクルで、犯行におよんでいるのは外国人による窃盗グループ。4~5人で徒党を組み、あたりをつけたターゲットから確実に獲物を持ち出していきます。

彼らの動きは綿密でした。ターゲットを決めると、まずそのオーナーの行動パターンを探ります。自宅を不在にするのは何曜日の何時から何時までか、普段はバイクを保管しているところをチェックするのか、バイクの保管状況はどのレベルか……。

ある程度の行動パターンが見えてきたら、次に行動です。例えばアラームが取り付けられている場合は、どういう動作で鳴り出すのか、さらにその音に対してオーナーがどんな反応を示すのか、そこまでテストします。そのなかで、わざと何度もアラームを鳴らし、オーナーが「誤作動かな?なんで鳴るんだ?」とアラームのスイッチを切るまで繰り返すこともあるそうです。

そうしてオーナーが離れていけば、後はカンタン。どれだけの防犯装備をしているかは事前に確認済みですし、犯行におよぶということは「●時間で作業は完了する」という目星がついているから。この時点で、ほぼ愛車は彼らの手に渡ったも同然。

防犯ロックは分解(または切断)され、丸裸になったバイクは近くに停めてあるワンボックスカーに積み込まれ(とある動画では、重量級のハーレーを男3人ほどで手持ちで積んでいました)、あっというまに持ち去られます。ほとんどが深夜の犯行なので、オーナーが気付くのは早くて翌朝。関係者に話を聞いたところでは、犯人の住処であるヤードに持ち込まれてから一時間以内にはすべてバラバラにされるのだそう。この時点で、見つけ出すのはほぼ不可能と言っていいでしょう。

約3年ほど前まで、関東圏や関西圏、中部地方など都心部でのバイク盗難事件が相次ぎました。これを読まれている方のなかには被害者もいらっしゃるでしょう。私のまわりにも、実際にバイクを盗まれた方が多数いらっしゃいます。

2年ほど前、神奈川・山下埠頭にて大捕り物がありました。バラバラになったバイクが詰め込まれたコンテナが発見され、その場にいた外国人が多数逮捕。知り合いのハーレーディーラーの店長が、「フレーム番号からウチに警察の問い合わせがあってね、これから引き取りに行くんだよ」と言っていたのを覚えています。

この件で、芋づる式に窃盗グループが捕まるか?とも思われましたが、以降音沙汰はなし。バイク盗難事件もぱったりと途絶えたのです。実際の窃盗グループの数はかなりのもので、この事件で捕まった人数ではまるで足りないほど。時期的に見ても、ちょうど大陸系の大国のバブルに陰りが出ていたので、需要がなくなった(大陸からのオーダーが減った)ことにより大半が引き上げていったのでしょう。山下埠頭の一件は、窃盗グループの元締めによる、いわゆる“トカゲの尻尾切り”だったのだと思います。

以降、犯行自体は激減していたにもかかわらず、最近はまた事件を耳にする機会が増えてきました。それで探ってみると、いわゆる旧窃盗グループの残党とおぼしき連中が、メシのタネにと犯行に及んでいるよう。被害者の方には申し訳ないですが、彼らの立場からすれば、まっとうな仕事についてもスズメの涙ほどの給金しか得られない、だったら昔の技術で犯行に及び、わずかに残ったネットワークに売り飛ばしていけば、かなりの金額が手に入る、だったら……そういう思考回路だと思われます。

国もこうした事件に対して動きを見せているようですが、捕まえたとしても、現物自体はすでに売り飛ばされているので取り戻すことはできませんし(いわゆる善意の第三者に渡っている。海外に持ち出されていたら、なおさら戻ってこない)、法的措置として犯人が外国人の場合、強制送還するだけ。本国に送り返しても刑務所に入ることはありません。つまり、被害者の泣き寝入りになるわけです。

自分の愛車は、自分で守る。

結論はこれに尽きます。まず、人目につかないところにバイクを置かない(暗がりは、盗む側にとって格好の作業場)。防犯ロックはメーカー別で3種類以上(構造が異なるほど分解が難しいから)。うち一種類は地球ロック(地面と接合させる)すること。アラーム系防犯グッズは取り入れる(やはり音系は窃盗グループもいやがります)。誰かが近づいたときに明かりを照らすグッズも取り入れればOK(事前に断線されることがあるので要注意!)。


先日、とあるディーラーのハーレーオーナーを取材しました。ものすごいお金がかかったカスタムをほどこした一台なのですが、保管場所を聞いてみると、青空駐車場に無防備に置いているだけだと言う。「最近はバイク盗難事件を耳にしますが、大丈夫ですか?」とお聞きすると、「うーん……ま、大丈夫でしょう」と。

かつて一日に5件以上の盗難被害連絡があった数年前と比べると、そうした状況に対する空気感はやや弛緩しているように思えます。実際、最近の大型バイクオーナーは、かつてそんな事件が相次いで勃発していたことなど知らないでしょう。でも、現実に今、都心部でバイク盗難事件が発生していますし、「自分だけは大丈夫」という根拠のない安心感に対して窃盗グループは遠慮をしてくれません。

考えてみてください、何百万円もかかった自分の愛車が、ある日あるとき、目の前からこつ然と姿を消しているさまを。被害に遭ったほとんどの人が、「……ああ、しまった。別の場所に停めたっけ」と、すぐさま現実を受け入れられないで、周辺を探し出すのだと言います。そして、探せど探せど愛車の姿はなく、次第に凍り付くような恐怖が全身を走り、110番通報をする。「まさか自分のバイクが狙われるなんて」、「どうしてもっと厳重に守っていなかったんだ」、「もっと頻繁に見に行っていれば」、「昨晩の不審な物音を聞いたときに表へ出ていれば」など、自責の念に苛まれながら、愛車が帰ってくることをひたすら祈り続けます。

しかし、待てども待てども愛車は帰ってこないのです。

無意味に怖がらせるために、こんな書き方をしているのだと思う方もいるかもしれませんが、実際に被害に遭われた方の話を聞くと、ほとんどの方が「まさか自分のバイクが」と言われます。酷かもしれませんが、窃盗グループは人を見てバイクを選んでいるのではありません。「このモデルを盗んできてほしい」というオーダーに合うものだったり、「売れば金になりそうだな」という高価なものを狙っています。それを考えれば、“自分のバイクだけが狙われない”という保証がどこにもないことがお分かりいただけるでしょう。

愛車を守れるのは、自分だけ。

改めて、ご自身の愛車の保管状況を再チェックしてみてください。

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