2014年5月12日月曜日

カフェレーサー時代の到来? #01

「カフェレーサー、今 流行ってるよね」

先日、とあるハーレーダビッドソン専門のカスタムショップでそんな声を聞き、「え? ホント?」と思ってしまいました。というのも、ハーレーダビッドソンとカフェレーサーの相性については、悪いとは思わないものの、たどり着く人はごく少数だと思うからです。

まずは、カフェレーサーとは何ぞや? というところから整理しましょう。wikipediaで調べてみると、「カフェレーサー(Cafe Racer)とはオートバイの改造思想、手法の一つである。イギリスのロッカーズ達が行きつけのカフェで、自分のオートバイを自慢し、公道でレースをする ために「速く、カッコ良く」との趣旨で改造したことに端を発するとされる。」とあります。


時代は1960年代、イギリスの24時間営業カフェ エースカフェロンドンに集まるライダース『ロッカーズ』の若者たちが、「誰が一番速く走れるか」を競うのを目的に、カフェからカフェへ、またはこのエース カフェへ戻ってくるまでレースを楽しんだことがその発祥と言われています。

誰よりも速く走るため、それぞれが自身の愛車をカスタムしたのですが、模されたのはグランプリロードレース(今で言うMotoGPやWSBKなど)のレー サー。ベース車両となったのはトライアンフやノートン、BSAといったイギリスでの国産バイクで、完全にレーサーとするまではいかないものの、一本ものの バーハンドルをフロントフォークにマウントするセパレートハンドルとし、ステップも後ろ下がりなバックステップに。さらに気合いの入った輩は、ビキニカウ ルを付けてレーサーらしさを演出。この2点ないし3点(セパハン、バックステップ、ビキニカウル)を備えたネイキッドバイクのカスタムを「カフェレー サー」と呼ぶようになったのです。


こんな感じですね。垂れ下がったセパレートハンドルに後ろ下がりなバックステップ。いわゆるロードレーサーと同じライディングポジションは前屈姿勢とな り、空気抵抗を少なくする攻撃的フォルムが生まれます。このカフェレーサーという文化、発祥はイギリスですが、日本でも馴染み深いスタイルで、特に 1980~1990年代の若いライダーのあいだでムーブメントとなりました。


そのベース車両として代表的なのが、YAMAHA SR。他メーカーのモデルでカスタムするオーナーもいますが、SRベースのカフェレーサー仕様の台数といったら、相当な数に上るものと思います。街乗りに 適した単気筒エンジンに、シャープかつ無駄のないシルエットはカスタム車両として最適で、実際SR用カスタムパーツはものすごい種類のものがサードパー ティから輩出されています。イギリスのカスタム文化の模倣ではありますし、このブームが起こったときにカフェからカフェへ公道レースしていたかと言われれ ば答えはノーですが、いわゆる若いライダーにとって“オリジナリティがあるカッコいいスタイル”の象徴となりました。


日本でも馴染み深いカフェーレーサーですが、そのスタイルが再びブームとなりつつあると言います。しかも、ハーレーダビッドソンのスポーツスター モデルで。確かに、イベント会場やカスタムショップへ取材に行くと、セパハン&バックステップを取り入れたカフェレーサー仕様を見かけることがあ りますが、それもごく少数。


スポーツスターとカフェレーサー。組み合わせればこれほど面白いスタイルはないし、実際個人的にもやってみようかと考えているフシはあります。が、一般的にブームになるかと言われると、ちょっとミスマッチなところが生まれるのも事実。その理由は、「オーナーの年齢」「価格」です。

まず、日本におけるカフェレーサーのブームの中心となったのは、主に20~30代の若い層。いくつかあるうちの大きな理由は、「カッコいいから」というも の。そう、バイクとしてのスタイルはもちろん、乗車姿勢も攻撃的でカッコいいところが若者の琴線に刺さるわけです。一方で、実際にカフェレーサー仕様のバ イクに乗ってみると、これがまたなかなかキツい。以前トライアンフのカフェレーサー仕様 スラクストン900に乗ったことがあるのですが、ステップ位置こそ緩かったものの、フロントフォークの左右に設けられたセパハンは“掴む”というよりは “乗りかかる”ような感じになり、姿勢が前屈みなので肩や両腕に体重がかかってしまいます。これ、長時間走り続けるのは至難の業です。年齢を重ねた年配者 には酷なスタイルと言えます。

で、現在のハーレーダビッドソン スポーツスターのオーナーの年齢層はというと……ほかのビッグツイン系に比べたら低いものの、おそらく30後半~40代が中心といったところでしょう。そ れも、ハーレーダビッドソンのラインナップ中では軽量でスポーティなモデルですが、それはあくまでアメリカ人規格(身長180センチ台の大柄な人)に照ら し合わせたものであって、日本人(男性の平均身長で約170センチ、女性なら約160センチ)に合わせれば、ラバーマウントなんてほとんどダイナ寄り。そ う、SRなんかと比べると、クルーザー的存在でもあるのです。

そして価格ですが、SRと比べても、車体価格の開きがハンパないです。新車価格を見比べると、YAMAHA SR400で55万800円(税込)に対し、ハーレーダビッドソンのスポーツスター XL883RないしXL883Lで105万円(税込)と、ほぼ倍。中古車で探しても、いずれも倍近い差が出ることでしょう。加えてそれぞれのモデル別パー ツだって、価格差が大きいのです。ついでに言うと、スポーツスターに適合するカフェレーサー用カスタムパーツが少ないことも理由に挙げられます。

最近こ そ、エヴォスポーツやラバーマウントに関係なくバックステップキットが充実してきていますが(それでも高い。5万~10万円ぐらいはするでしょう)、量産 されている専用のセパハンキットって、RSD(ローランドサンズデザイン)ぐらいじゃないでしょうか? スポーツスターのフォーク径に合うブラケットのものを探してきて、スイッチボックスなどを調整して装着させる……ワンオフとまでいかないですが、それなり の作業時間を要します。結果、工賃が高くなるという。ちなみにRSD製パーツって、全般的に安くはないですよね(笑)。削り出しだから当然っちゃあ当然で すが、このように俯瞰的に見ると、多数派のカスタムスタイルでないことをご理解いただけるかと思います。

スポーツスターでカフェレーサー……金銭的なところを言えば、若者にはハードルが高すぎます。そして経済的に落ち着いている年配の方にとっては、そのスタ イルをデフォルトにするのはちょっとキツすぎるのです。やりきればカッコいいのは分かるのですが、“あっちが立てば、こっちが立たず”で、「どれほど窮屈 な姿勢でも乗り切りたい!」と思うハートの強い年配の方か、「ほとんどいないカフェレーサー スポーツスターを手に入れたい! どれだけお金がかかろうと」というアクティブな若いライダーに限定されてしまうわけです。ここにたどり着く人が少ない理由が、これらです。

説明が長くなりましたが……“スポーツスターでカフェレーサーが流行っている”という言葉、にわかに信じ難いわけですが、次の#02では、そうした話の背景に迫っていきたいと思います。 

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