2014年5月13日火曜日

トライクとの付き合い方

今年1月、ハーレーダビッドソンのニューモデルとして初の三輪モデル FLHTCU TG トライグライドウルトラ、通称トライクが発表されました。モーターサイクル系メディアのみならず、テレビなど一般メディアでも大々的に取り上げられたの で、ご存知の方も多いかと思います。

FLHTCU TG

ハーレーダビッドソン初の純正トライクモデル、最大の特徴はそのビジュアル。ヤッコカウルが印象的なウルトラをベースに、リアを3輪仕様に変更。この時点で、いわゆるモーターサイクル(エンジン付き2輪車)とは一線を画した別物であることが伺えます。

このトライク、なんと普通自動MT免許があれば乗れちゃうという、自動二輪または大型二輪免許がないと乗れないモーターサイクルとは違うカテゴリのものなのです。限りなく”クルマ”に近い存在として認可されており、ゆえにヘルメットの着用義務もありません。ハーレーダビッドソンとしては、ここを新たなキッカケとし、「ハーレーに乗りたいと思うけど、大型二輪免許を取りに行かなきゃいけないのが、ちょっと……」と及び腰になっている(であろう)方の“背中の ひと押し”となる存在としてPRしたいよう。

今までサードパーティ(社外メーカー)によるカスタム トライクは多数存在しましたが、純正のトライクは初めて……ではないんですよね、実は。

Model G サービカー
1930年代に登場した商業用モデル サービカー。現代のトライクとはずいぶん趣きが違いますが、いわゆる純正三輪モデルというくくりで言えば、戦前に存在していたのです。そう考えると、ハーレーダビッドソンが持つ110年以上の歴史と幅広さに感心するばかりですね。






さてそのトライクについて、「まったく新しいカテゴリの乗り物」として一般メディアでも報じられ、非常に注目を集める存在となっていますが、これがなかなかのクセもの。根本的にモーターサイクルとは異なる存在なので、同列に語ろうとは思いませんが、改めて”特殊車両”的なモデルであることをお伝えしておきたいと思うのです。


まずはご覧の装備。ウルトラと比較すると、トップケースはそのまま残り、三輪仕様となったため当然リア両サイドのサドルケースはなくなりました。一方で、クルマで言うところのトランクのようなボックスが備わっています。


ご覧のとおり、ヘルメットなら余裕で2個は入ります。トップケース以上のキャパシティを誇り、二人旅なら2~3泊は余裕の荷物を積めちゃうでしょう。モーターサイクルでは不可能だった大きなキャンプ道具だって積み込めるのではないでしょうか。

実際に乗ってみましたが、ハンドリングやスイッチ操作などはモーターサイクルのそれながら、信号待ちの際に足を着いて車体を支える……ことは不要で、足をステップボードに乗せていても車体は安定したまま。当たり前っちゃあ当たり前ですが、ある意味新鮮な感じがしました。

前述したとおり、モーターサイクルと同列に語ることはできませんが、このトライクというモデルと付き合うにあたり、注意しておいた方が良い点がふたつばかりありました。


ひとつは、車幅。
ご覧のとおり、ウルトラとは比較にならないほど横幅があります。調べてみると、軽自動車ぐらいの幅があるよう。モーターサイクルと同様、ポジションはちょ うど真ん中ですが、モーターサイクルの感覚以上にリア幅があるわけです。何が怖いかって、その幅を意識せず障害物に接触してしまうこと。モーターサイクル の感覚で乗っちゃうと、高速道路の料金所に差し掛かった場合に寄り過ぎたり、かわしたと思った側道に乗り上げたり……。もちろん、オーナーとして乗り出せばおのずと身に付いてくることだとは思いますが、試乗の際、結構気を使っていたのを覚えています。


2つめは、その挙動です。
モーターサイクルの場合、コーナリングの際は“ハンドルをまわす”のではなく“車体を傾けて”コーナーをクリアしていきます。ですがトライクの場合、リアがしっかりと地に足を着けているため、コーナー時に車体がまったく傾きません。そう、ハンドリングはモーターサイクルで、リアの動きがクルマなんです。東京のレインボーブリッジを走った際、モーターサイクルなら車体をコーナーの内側に向けて傾け、ゆるやかにクリアしていきますが、リアの2輪がしっかり足を 踏みしめているトライクでは、内側ではなく外側に向かってGがかかります。そう、コーナーの外側に向けて体が引っ張られるような感覚ですね。当然ですが、 スピードをあげればあげるほど、外へのGが強まります。ハンドルを内側に向けることで調整をしてクリアしていくのですが、モーターサイクルのそれとはまったく異なる挙動。本音を言えば、ちょっと怖いな、と思ったほど。

なぜ怖いと思ったのか。スピードとバランスの問題だとは思いますが、ちょっとバランスを崩すと、おそらくライダーの体は外側に放り出されます。その際、車体も外に向かってひっくり返ることでしょう。とすると、ヘタをしたら車体の下敷きになってしまいかねません。危ない乗り方さえしなければいいわけですが、 モーターサイクルとは異なる危険性を感じたときでした。ヘルメットの着用義務がない乗り物ですが、個人的にはトライクほどヘルメットを着用せねばならない乗り物はないんじゃないか、と思う次第。もちろん、これでトライクを否定するわけではありませんが、そうした特殊な乗り物だということをご存知いただいた方が良いと思うのです。


聞くところによると、このハーレートライクの売れ行きは好調で、現在予約待ち状態なのだそうです。特に、重量級のウルトラやサイドカーに乗ってこられた年配ライダーによる乗り換えが中心だそうです。確かに400キロ超えのウルトラを支え続けるのに比べれば、直進時の転倒の心配がまったくないトライクは魅力的。

大事なのは、トライクに限らず、そのモデルの特性を知ったうえでチョイスすることだと思います。ある程度の情報を得て、吟味し、自分の理想と思う楽しみ方にマッチしたモデルと付き合うことが、購入後のライフスタイルに深みをもたらしてくれるものと思うのです。

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