2014年5月14日水曜日

日本代表への期待値があがらない

4年前、2010年ワールドカップ 南アフリカ大会にて、日本代表は前評判をくつがえし、決勝トーナメント進出、ベスト16入りという好成績を収めました。本大会までの強化試合の結果は散々なもので、特に直前の韓国戦では逆転負けを喫するという醜態をさらすほど。相手の実力が上だったと言えばそれまでですが、強化試合で問われるべきは“内容”。逆転されたという事実もそうですが、チームとしてどこを目指しているのか、本大会でどんな戦い方を見せてくれるのかまったく分からない状態で、この日韓戦後の記者会見に登場した岡田武史監督(当時)からは覇気の欠片も見えず、「ああ、今回のワールドカップもボコボコにされるんだろうな」と思ったのを覚えています。

 “今回も”と言ったのは、その4年前、2006年ドイツ大会の結果から。ジーコ監督率いる日本代表は、直前の強化試合のひとつドイツ戦ですばらしいパ フォーマンスを披露し、本大会への期待値を上げに上げて挑みました。結果は1分け2敗。グループリーグ第3戦のブラジル戦は悪くない試合でしたが、土壇場での逆転負けを喫した初戦のオーストラリア戦、灼熱の太陽が照らすディゲームで消耗戦を繰り広げたクロアチア戦と、およそワールドカップに挑もうというチャレンジャーな姿勢は欠片も見えない低調なパフォーマンスに終始した日本代表。まぁ最大の要因は、日本との時差を考え、ゴールデンタイムに試合を見れるようにとFIFAに口出しをして第1戦、第2戦とを無理矢理ディゲームにした某広告代理店にあるでしょう。「日本の広告代理店のせいで、こんな目に遭ったんだ」と吐き捨てたクロアチアの主将ニコ・コバチの顔がいまだに忘れられません。


日本代表は、彼らにとってただのビジネスなのでしょう。

もちろん日本サッカー協会だって、これらの件には大いに絡んでいます。もはや今の協会には「日本代表を強くしよう」という志を持った人はおらず、どれだけ儲けられるか、どれだけ稼げるかしか考えていない打算的な組織に成り下がっているのです。こうした裏話はただの酒の肴であって、日本代表の周辺環境を見ていれば、本気で強くする気がないことぐらい容易に察しがつきます。

閑話休題。

「日本代表は強くなった」、そんな声をよく耳にします。確かに、「おぉ、これは……」と思わされるシーンは一度や二度ではなく、それも強豪国相手に魅せてくれることも珍しくありません。アジアカップでも連覇を達成するなど“アジアの強豪国”の座は揺るぎないものになっており、アジア予選と世界大会ではシフ トチェンジせねばならないものの、それでも見据えるのは世界の強豪国であり、ワールドカップなどの世界大会でどれだけ上位に進出できるか、になってきました。足掻けど足掻けどワールドカップに出られなかった時代が懐かしく思えるほどに。

前回のベスト16達成を踏まえ、今回のブラジル大会ではベスト8、またはそれ以上という声が聞こえてきます。カンタンではありません。南アフリカ大会のと きを思い出せば分かりますが、当初は「いかにグループリーグを勝ち抜くか」、つまり確約している対戦国3つをどう倒すべきか、に焦点が絞られていました。

グループリーグを突破するためには、2勝1分け、悪くても2勝1敗、1勝2分けぐらいの戦果を手にせねばなりません。コートジボワール、ギリシャ、コロンビアという国名を聞けば、その理想がどれだけ困難なことか、サッカー通の方ならお分かりになるかと思います。

ベスト8以上となると、さらにその先の戦い方まで想定せねばならないのです。そう、グループリーグで力を出し切ったら(消耗しきったら)、さらなる強敵が 現れる決勝トーナメントで駒を進めることなど不可能。本田や長友が「ワールドカップで優勝する」と言ってくれるのは頼もしい限りなのですが、一方で決勝 トーナメントを勝ち上がることというのは、こうした解析をするだけで極めて困難なことであることが伺えます。

だからこそ、まるで期待値があがらないのです。

2010年当時と比べて、今の日本代表(2014年バージョン)はどれだけ変わったでしょうか? 最終メンバーに入れなかった香川真司は背番号10を背負ってチームの中心選手となり、まだまだ発展途上段階だった本田や長友、岡崎らはヨーロッパを主戦場 とする日常を送るようになりました。スターティングメンバーを見ると、所属クラブ名はほとんど海外リーグのそれ。2010年当時は片手ぐらいの数しかいな かった海外組が、メンバー表を埋め尽くすほどに増えた。これは大きな飛躍だと思います。

一方で、チームとしての戦い方や成熟度は何もあがっていないように思います。

アルベルト・ザッケローニと言えば、超攻撃的フォーメーション 3-4-3システムの使い手としてご存知の方も多いでしょう。ウディネーゼでの成功例をかなり強引にACミランにも取り入れ(主力だったビアホフらまで引 き連れてきて)、一時は批判がありつつも、貫き通してタイトルをもたらした人物。それが、僕の知るザッケローニです。

今という時代、今の日本代表の面々にザッケローニ流3-4-3がフィットするのか否か、就任当初の見どころのひとつではありました。ところが、4年の任期 のなかでこのシステムを導入したのは片手で数えられるほど。ちょっと試してみて、フィットしないと見るや否や従来の4-2-3-1に戻してしまう。結局、 これまでの4年間でザッケローニらしい采配や戦い方は一度も見られませんでした。

ザッケローニが就任したときのことを思い返してみると、それもまた致し方なしか、とも思います。南アフリカ大会で決勝トーナメントに進出、ベスト16とい う好成績とともに帰国した日本代表でしたが、当初の予定どおり岡田武史監督は退任。協会から留意を求められるも、固辞したと言います(直前まで協会の誰も が彼をフォローしなかったのですから、当然っちゃあ当然でしょう)。

数カ月ほどのあいだ、代表監督の座が空席のままだったことを覚えていらっしゃいますでしょうか。そう、日本サッカー協会はワールドカップ後の次期監督を決めていなかったのです。一時はアルゼンチンのビエルサという名将の名があがりましたが、あっさりと断られました。以降、さまざまな方に打診するも断られる 協会。そんな折り、フリーだったザッケローニの代理人から「ザッケローニを雇ってみないか?」との声が。当時、監督がいないまま代表戦を実施する協会に対して批判の声があがりだしていました。おそらく協会は、藁をも掴む思いだったのでしょう。ネームバリューで言えばワールドクラスのザッケローニということもあり、「彼が今の代表チームにとってベストな人選なのか」、「彼がどれだけ日本に対して理解を示し、代表チームの強化に対して腐心してくれるのか」といったことをほとんど煮詰めないまま、“就任させてしまった”のです。

それを思えば、今の状況は想定内。

日本代表は、確かに強くなりました。しかし4年前のチームと比べると、あくまで個人でのレベルアップがほとんどで、「チームとしてどう戦うのか」、「日本サッカーのあるべき姿とは」というものは一度も見たことがありません。かつてイビチャ・オシムは、日本サッカーのあるべき姿として、“どこにも走り負けな いサッカー”ができるチームづくりを実施しました。それが完成形を示すまで彼は在籍できませんでしたが(体調不良のため辞任)、国内……Jリーガーを中心 に”走れる選手”“チームに尽くせる選手”を集め、90分間あきらめない不屈のチームの片鱗は確かに存在しました。このチームが成熟していたら、おそらく史上最強にして「日本全国のあらゆるクラブが模範とすべき代表チーム」が誕生していたことでしょう。
 
ザッケローニからは、そうした哲学が一切見えません。それどころか、協会から押し付けられた不毛な強化合宿をすんなり受け入れるなど、Jリーグの選手に対 する愛情も見えない。彼がこの4年間でやってきたことは、2010年大会のチームをベースに、どれだけ上乗せできるか、という打算的な強化のみ。これでベ スト16の壁を破れたら、どの国も苦労しませんよ。僕にとってザッケローニは、極めて日本的なサラリーマンです。
今頃気付いたってわけではありませんが、本大会を目の前にし、改めてその功罪を考え、陰鬱な気分になった次第です。僕にとっては、中心選手がどこのビッグクラブに所属しているかどうかなど、大した話題でもありません。日本代表というチームが我々日本人をワクワクさせてくれる戦いをしてくれるのか否か、が重要なのです。

世界の”ワールドカップに対する見方”は確かに変わりました。世界最強を決めるのはワールドカップではなくUEFAチャンピオンズリーグで、忠誠を尽くす のは国ではなく所属クラブ。そんな今だからこそ、チャレンジャーである日本はつけ込めるのだと思っていたのですが、世界的に見て強豪国でもない日本もそう した国々の流れにならい、無条件で人気を集める代表チームで金勘定をするだけになってしまいました。

こんな状況を目の当たりにして、期待を抱け?
寝言は寝てから言いましょう。 


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