2014年5月27日火曜日

日韓関係をよりよくするには


とある平日、秋葉原から中目黒へと向かう地下鉄日比谷線での出来事でした。座席でくつろいでいると、「あのぅ」と隣りに座っていた若い女性から声をかけられたのです。

「中目黒から、代官山まで、歩いていけますか?」

たどたどしい日本語から、すぐに外国の方だと分かりました。そして手にしているスマートフォンに表示されているハングル語を見て、「ああ、韓国の方なんだな」と。実を言うとワタクシ、なぜか昔から外国の方に話しかけられることが多く、今回もこれまで同様に引きつけてしまったんだな、と苦笑いしてしまいました。しかもその直前には、秋葉原の韓国料理店で石焼ビビンバのランチをいただいたところでもあり、何か匂いでもしたのだろうか?などと訝しんだり。

Google Mapで距離を見せてあげ、「歩いて7分ほどですよ」と教えてあげました。すると、「代官山には焼肉のお店はありますか?」という質問が。今度は食べログのアプリで検索し(便利な世の中になったものです)、「こういう店があるみたい。新大久保に行けば、もっとあるよ」というと、「新大久保には昨日行ってきました。テレビで見た日本の番組で、代官山の焼肉を食べるシーンがあって、そこに行きたいんです」と言うじゃありませんか。さすがに同じ店かどうかまでは分かりませんが、検索で見つけた代官山の焼肉店の情報を教えてあげたのです。

そこから、彼女は堰を切ったようにいろいろと話をしてくれました。名前は聞きませんでしたが、彼女は19歳の大学生で、学校で日本語を専攻しているとのこと。なるほど、たどたどしいとはいえ、十分コミュニケーションを取れるレベルなのは大したものです。「将来は、日本と関わり合える仕事(観光業など)に就いて、日本と交流していきたい」と言いました。

「どうしてそんなに日本に興味があるの?」との質問に、「日本はすばらしい国。私たち韓国が見習うべきところがたくさんある」と答えてくれました。

今回が初の来日だという彼女、弟さんとふたりで来られたとのこと(すぐ近くに彼が立っていました)。以前からずっと日本に来たいと思っていて、ようやく念願がかなった、と。「初めて来た日本の印象はどうですか?」とお聞きすると、「街がきれい、道がきれい。日本人はみんな親切。来てよかったです」と満面の笑みで語ってくれました。そして、「弟と一緒に歩いていると、どうしても弟とばかり話してしまって、なかなか日本人とお話しできなかったんです。あなたとこうしてたくさんお話しができて、すごく感激しています」とも言ってくれました。

「お話しできて嬉しかったです。ぜひ韓国にも遊びに来てください。またお会いできると嬉しいです」と言って、彼女は弟さんと一緒に六本木駅で下車していきました。

わずか5分ほどの出来事でしたが、彼女との交流は僕の人生において10本の指に入ると言っても過言ではない価値をはらんでいました。

多くの方がご存知のとおり、2014年現在、日韓関係は決して良好とは言えません。一時は韓流ブームなどから両者が良い意味で近づいたものの、竹島問題、五輪プラカード問題、慰安婦問題、反日問題などなど、挙げていったら枚挙にいとまがないほどの摩擦を抱える日韓両国。根深い歴史的背景やそれぞれの民族性などから、現在は悪化の一途をたどっていると言えるでしょう。

2003年、僕は初めて韓国・ソウルに渡り(サッカー日韓交流戦の観戦/結果はジーコ日本代表が1-0で勝利)、試合後に記念撮影をする若い両サポーターらの姿を見て、これまで憎悪の歴史と言われた交流戦が変わろうとしている実感から頬が緩んだのを覚えています。

しかしながら、どういった背景かは分かりかねますが、再び憎悪の炎が燃え盛り、先のセウォル号沈没事件などを含め、ネット上でユーザー同士が“言葉の刃”を向け合うさまを何度も目にしてきました。僕にも韓国人や在日朝鮮人の友人がいて、今も彼らとは仲良く付き合っているのですが、そうした場面ばかりを目にしていると、知らず知らずのうちに自分の感情が禍々しいオーラに包まれ、憎まなくてもいいことまで憎んでしまいそうな……そんな気分にさせられるときが多々ありました。

結局、分かり合えないのだろうか……。しかし、地下鉄で出会ったコリアンの彼女は、そんな禍々しい気分を一瞬で吹き飛ばしてくれるほどさわやかで、表面的な情報に染められつつあった自分を恥じつつも、清々しい気分にさせてくれました。

確かに我々日本人から見れば、反日感情が突き動かす数々の行動は目に余るものがあります。しかしそうした国民の気持ちをきちんと理解し、「どうすれば私たちは分かり合えるか」という一点のみを言及する働きを両国の政府が見せねばならないのでは、と思うのです。日本人特有のシャイな側面から“言葉を飲み込んでしまう”ということがありますが、言うべきこと、主張すべきことをきちんと述べ、そのうえで起こった摩擦に対しては真摯に取り組まねばなりません。国民を代表する政府には、そうしたことに対して積極的に取り組む義務があります。

負の感情が先走る日韓両国ですが、彼女のように、過去にとらわれることなく相手に対して誠意をもって接してくれる若者はどちらにも存在します。禍々しい感情は、そうした若者たちを傷つけるだけでしかありません。それは、これまで両国を包んできた暗黒の歴史となんら変わらないのではないでしょうか。

日本と韓国、僕らは必ず分かり合える。この日出会ったコリアンの彼女が、改めてそのことに気づかせてくれました。これほど素晴らしい若者たちの未来を暗いものにしてはならない、彼女のような若者が将来さらに楽しく交流し合えるよう、僕らももっと理解し合うための努力をしなければいけない。歴史問題云々は政治家にまかせて(きちんと仕事をしてもらうことが大前提ですが)、僕ら国民は僕らにしかできないことをやっていくべきです。

そのうえで、考えたいのです。両者が分かり合うために、スポーツにできることは何か、サッカーにできることは何か。

まずは第一歩から……日韓交流戦の定期開催を。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿