2014年5月12日月曜日

カフェレーサー時代の到来? #02

#01では「そもそもカフェレーサーって?」「スポーツスターとカフェレーサーの相性」などについてお話ししました。

この#02では、「今、カフェレーサーが流行っているよね」というハーレーダビッドソン専門のカスタムショップ ビルダーの声を検証していきます。

そのビルダーからそう言われても、正直ピンとこないのは、#01でお話ししたとおり。取り組む人は少なからずいるかもしれないけど、“流行る”ってところ までたどり着けないスポーツスター×カフェレーサーという組み合わせ。逆にその特別な領域感が良いと思っているフシもあったりするわけですが……。

その後、取材などでお会いするカスタムビルダーにこの話題を向けてみると、「うん、流行っているね」という人と、「え? そんな話、初めて聞いたよ。ホント?」という意見真っ二つな感じに。当たり前っちゃあ当たり前ですが、“流行っている”っていう人が他にもいるということ は、ホントに流行り出しているの? と僕も思うようになってきちゃいます。

が、よくよく聞いてみたら……海外で流行っている、という意味のようでした。なんだよ、ビックリさせるなよー、と胸を撫で下ろした次第ですが、それぞれのカスタムビルダー曰く、「海外でカフェレーサー カスタムが流行っているというのは大きな驚きだよ。実際、海外ウェブサイトやSNSを利用した海外カスタムバイク紹介で、カフェレーサーにカスタムされたバイクがどんどん出てきている」と。確かに、言われてみれば、Facebookなどで見かける海外のカスタムバイクは、ベースがハーレーダビッドソンやトライアンフ、クラシカルなドゥカティなどネイキッドモデルをベースとしたストリートレーサーなものが多かったことに気付かされました。

そう、チョッパーではなく、カフェレーサー。

チョッパーやボバー、バガーなどのカスタムが減っているわけではありませんが、カフェレーサー スタイルのものが増えてきているのはまぎれもない事実。そんなとき、ふと、とあるモデルのことを思い出したのです。それが、今月より日本国内でも発売が始 まるBMW Motorradの話題のニューモデル、R nineT。

BMW Motorrad R nineT

このR nineTは“最後の空冷ボクサーツインエンジン搭載モデル”という、90年にもおよぶBMW Motorradの歴史の節目として生み出された貴重なモデルで、BMW Motorradの歴史を振り返る懐古主義的な意味合いが含められています。そのR nineTを「できましたぁ~」と、ただポンと出すだけじゃ面白くもないしインパクトもないので、「じゃあこのR nineTをどんな姿に昇華させれば面白いだろう?」という発想がドイツ本社内で生まれ、コンセプトバイクを作ってみようというプロジェクトが誕生したの です。

そして生まれたのがこれ、Concept Ninety。

Concept Ninety

カスタムというカテゴリーに対して決してポジティブではなかったBMW Motorradが手がけたカスタムモデル。もちろんコンセプトバイクなので販売されることはありませんが、R nineT発売を追うように販売される純正カスタムパーツは、このConcept Ninetyに近づけられるものがズラリ揃うとのこと。

このプロジェクトで驚くべきは、Concept Ninetyを手がけるにあたって、アメリカの著名なカスタムビルダー、ローランド・サンズをアドバイザーに招き入れたことでしょう。このConcept Ninetyとプロジェクトそのものが発表されたのは今から約2年前。当時ハーレーダビッドソン専門ウェブサイトの担当をしていた僕は、これを聞いたとき に「やられたな、ハーレー」と思ったものです。

なぜならば、本来カスタムと言えば、ハーレーダビッドソンの専売特許とも言える世界。しかしながら、昨今のハーレーダビッドソンはXL1200X フォーティーエイトやXl1200V セブンティーツー、FXSBSE ブレイクアウトなど、ファクトリーカスタムモデルと呼ばれるメーカーが手がけたカスタムモデルの輩出に力を注いでいます。これはいわゆる「自社オリジナ ル、または純正パーツでのカスタムで十分楽しいですよ」という“ユーザーの囲い込み”型プロモーションの一環で、とりわけ近年のモデルは内蔵コンピュー ターのセッティングや細かな仕様変更の繰り返しなど、社外メーカー……いわゆるサードパーティが入り込む余地をなくしていきつつあるのです。

サードパーティが賑やかな世界こそ活性化する、というのが分野に関係ないマーケットにおける論理のひとつ。そういう意味では、今のハーレーダビッドソン (アメリカ本社ですね)の戦略にはやや疑問を抱いている次第。そんな折り、BMW Motorradというカスタムの分野から見れば想定外のところから、想定以上のアクションを起こされたわけです。しかも、ハーレーダビッドソンのカスタ ムを得意とするローランド・サンズを招聘して。もう、完全に「やられた」ですよね。

さて、そのConcept Ninetyですが……いわゆるカフェレーサーですね。セパハン、バックステップ、ビキニカウル。そして完成度の高いスタイリングと、進化がとまらない現 代のモーターサイクル界において、メーカーがビルダーとタッグを組んでやり遂げただけあって、「お見事!!」というほかありません。さらに今、日本人ビル ダー4名によるR nineT カスタムプロジェクト進行中ですが、これはまた別の機会にお話しするとして、本題であるカフェレーサーに戻りましょう。

とあるモーターサイクル ジャーナリストの方にお話を聞いたところ、「今、ヨーロッパではカスタムがブームとなってきている。それも、BMW Motorradを中心に」とのことでした。核となっているのはこれ、Concept Ninetyにほかならないでしょう。カスタムのスタイルはさまざまですが、こうしてアイコンとなっている存在がカフェレーサーであることと、市場の動き は無関係ではないと思います。

一方で、先ほど批判しまくったハーレーダビッドソンですが、2013年11月、イタリア・ミラノで開催されたEICMA ミラノショー(世界最大のモーターサイクルショー)において、水冷レボリューションXエンジンという新型エンジンを積んだニューモデル ストリート500 & ストリート750を発表しました。

HARLEY-DAVIDSON STREET 500 & STREET 750

これ、位置づけは「カフェレーサー」とのことです。「え? どこが?」と思われるやもしれませんが、これは1977年に同社から登場した唯一のカフェレーサーモデル XLCRをモチーフとしたモデルだと発表されました。H-Dカンパニーのデザイン部門最高責任者マーク・ハンズ=リッチャーがそう言っていました。にして も未完成な感が否めないモデル、おそらく専用のカスタムパーツを手がけてくるものと思われます。

1977 XLCR
 スタイル云々に関する議論はさておき、アメリカやヨーロッパという巨大市場において“カフェレーサー”という存在がひとつのキーワードになっていることは否めません。そう、ターゲットとするカテゴリーは“ストリート”なのです。

ハーレーダビッドソンもBMW Motorradも、いわゆる大陸横断を目的としたモーターサイクルを手がけ、それぞれがフラッグシップとなるモデルを輩出し続けてきました。そして、他 メーカー以上の存在感を手に入れることにもつながりました。ツーリング仕様のムルティストラーダを生み出したドゥカティ、ビッグオフロード タイガーシリーズを手がけるトライアンフなど、彼らにならうようなモデルがマーケットに投じられていることからも、その存在の大きさが伺えるというもの。

モーターサイクルの世界におけるモーターサイクルの存在意義というのが変わりつつあります。若者がモーターサイクルに興味を示さなくなってきているという 傾向は、日本だけでなく世界的なもの。しかし、これまでどおりのモーターサイクルを手がけているだけでは、既存のライダー(中高年層)を満足させることは できても、新世代である若年層の心に刺さるかと言われれば、ノーと答えざるを得ないところでしょう。ハーレーダビッドソンやBMW Motorradがストリートというカテゴリーに目を向け出したのはそうした背景があるからで、マーケティングリサーチに基づく明確な戦略のひとつなので す。そしてカフェレーサーというカスタムスタイルは、そんなストリートにおいて一時代を築き上げた象徴的カルチャーであり、今なお多くの若者から支持され るカテゴリーでもあります。以前、取材したSR専門カスタムショップの方がおっしゃっておられました、「カフェレーサーというカスタムは、盛り上がること もなければ廃れることもない、常に一定の位置を保ち続ける不変のスタイルなんだよ」と。

世界的に注目を集めるストリートというカテゴリーと、そのなかで頂点を極めた至極のスタイル カフェレーサー。世界で大きなブームを生み出している背景は、こうしたところにあるようです。


#03では、実際にカフェレーサーというカスタムをスポーツスターに取り入れると、どんなことが考えられるのか、について検証していきたいと思います。あくまで“現代において”という注釈付きではありますが。
 

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